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終幕~旅立ち~

 潮田海荷のジパング統一作戦はユナイトファングの勝利で幕を閉じた。

 半壊したセントラル支部は他支部の助けもあって半月ほどで立ち直っている。

 ワッカナイのダイオクの生き残りもユナイトファングに投降し、ワッカイはユナイトファングの一支部として新たなスタートを迎える事になった。

 現在、空いている支部長と副支部長の座にはこのソルトブレイクと呼ばれた戦争の総指揮官である冥地琴乃めいちことのが勤める事になった。副支部長には琴乃の妹であるソルトブレイクの混乱を影で支えていた冥地樹音めいちきおんが勤める事に決まる。

 この二人は前支部長である山崎の冥地家に対する人質として使われたが、その人質達はこの戦争を経験する事によって自らの才能を覚醒させユナイトファングを管轄する人間として活躍した。

 冥地家の首領・冥地功周めいちこうしゅうは孫娘をサポートしながら新しい大陸へ向かう算段を整えていた。そう、このジパングの周囲に渦巻いていた磁場嵐や暴風雨のような荒れた海は潮田海荷の死亡と共に治まったのである。これにより、ユナイトはジパングを管理しながら外の大陸に目を向け始めた。

 その話をセントラルの大聖堂にて軍人の少女達に向かって琴乃は話していた。

 琴乃は差別でしか成り立たない世界を人々の協力で成り立たせ、女でも強制的に軍に登用するのではなくその人の目標や価値を見極め、個人の努力を認める世界の構築を約束した。それを肩に猫を乗せる猫神は支える事にした。肩の猫は床に飛び降り、「京星……」と呼ばれ猫神に追いかけられた。

 各支部の人間達も新しい支部長の言葉を胸に秘め、縦に突き刺さる一本の剣に左右から牙がクロスするユナイトファングのロゴマークに拳を当てて敬礼した。

 すると、琴乃の元に一件の事件報告があった。すかさず新支部長として命令を下す。

「この事件は先の大戦と違い、民間人の強盗にすぎません。だけど、リングを使っている以上敵はユナイトが処罰する対象。目的を見失なわず大義を貫きましょう。我らは、我が心に殉じる覇道の騎士なのです! ユナイトファング!」

『ユナイトファング!』





 澄み渡る青空はどこまでもその青を空の彼方まで染み渡らせている。

 自由への翼が欲しかった紅水泉こうすいいずみはもう外の世界へ旅立っていた。

 そして、この青い髪の少年もワッカイの先端から外の大陸に向けて出発しようとしていた――。

「俺は新しい可能性を見つけに行く。外の世界でもリングが主力なら奪って俺使用にするだけよ」

 雪牙は秀吉のリングであるHリングをレーコに渡した。受け取るレーコは桃色のサイドポニーを風に揺らし、心配そうに雪牙を見つめる。

「その秀吉のリングはリーダーにこそ似合う。渡しておいてくれ」

 あの潮田との戦いの後、死亡した黒主の死体は消えていた。

 猫神が回収したわけではないらしく、猫神が黒主の死体を数日間捜していたのはまだ記憶に新しい。そしてレーコは、一隻のボートに乗り込む雪牙に言う。

「本当に行くのね? リーダーが見たかった自由な世界へ。リングも持たずに」

「まぁ、リングは外でも使えるかはわからないからな。鎖国されたジパングだけの兵器って可能性があるっていうののが猫神の意見だからな。世界を駆け巡り色々なものを見るなかで仲間が出来てリングがなくてもなんとかなるだろ。世界は広い。ユナイトファングはこのジパングのみの支配だが、海の向こうは何があるかわからないさ」

「……でも、そんなボート一隻で大丈夫?」

「海じゃ、レーダーは使えないし海水はリングをすぐに駄目にする。だから俺はこのボート一つで旅に出る」

 まぶしい太陽が照りつけるボートの表面は輝いていた。

 一匹のかもめが空を飛んで行き、その場所が見渡せる崖の上に止まる。

 すると、その崖の上に誰かが見える。

 逆光でよく見えないが、雪牙の見送りではないようでただそこに立ち尽くしている髪の長い女だった。

(……誰だあれは? 潮田?)

「どうしたの?」

「……いや、そろそろ行こうかな」

 金髪の髪の女がいたと思ったが、崖の上にはそんな人物はおらずそれは気のせいだった。

 そして、二人の男女は見つめ合う。

 もうこのまま会えないかもしれない。

 これが今生の別れになってもおかしくない旅である。

 それでも男の志の旗は世界に掲げて旅立たなくてはならない。

 意を決した雪牙は愛おしい女の顔を見つめ、ボートからジパングの大地に戻る。

『……』

 そして――二人の男女はその気持ちを確認するように唇を重ねあった。

 瞳を閉じる二人はそのまま強く互いを抱き合い、相手の全てを感じるように強く感情をぶつけあう。ゆっくりと瞳を開け、おでことおでこを重ね合わせ同じタイミングで微笑んだ。

「この続きは、帰ってきてからするからな」

「まー期待せずに待ってるわよ。あんまり遅いと、身体が樽になってるかもしんないから」

「わかった。行ってくるぜ!」

 チロルチョコを口に一つ入れられ、ボートに飛び乗る雪牙は操縦桿を握り大海原へ舵を切った。

 磁場嵐が消えたが、まだ安定しない荒れた海原へ稀代の激情を秘めた不死身の少年は広大な新大陸へと旅立った。





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