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ダイオクとの決戦8

『レーコ! 戦えるのか!?』

 雪牙と黒主はこの桃色サイドポニーのチョコ魔人の少女の登場に興奮した。

 右手にガトリングガンを持った再起不能と診断させたレーコがリングナイツとして堂々と現れたのである。

「やっぱこの黒主部隊のスーパーヒロインがいなきゃ最終決戦には相応しくないし、ここでレーコ様が登場しなきゃ話はまとまんないでしょーが!」

『おいおい、そんなちょいプニのヒロインが本当にヒロインなのか?』

 シンクロして言う二人にレーコはポカポカと背中を叩き怒る。

 叩かれながら雪牙は、

「でも戦えるのか? レーコは戦闘に関しては再起不能と聞いたが……」

「この戦いが終わるまで持てばいいのよ。私だって、リングナイツなんだから死ぬ覚悟は出来ている」

 指を左右に振る二人の少年は言う。

『黒主部隊は生きる覚悟、生き抜く覚悟しかいらなんだよ』

 雪牙と黒主は微笑んで言う。言うタイミングと内容が同じだった為、喧嘩を始める二人の少年をレーコはなだめた。そのたわいもない少年少女のやりとりをマザーソルトは嗤い、

「ここに援軍を寄越して良かったのかしら? そっちがそう出るならこっちも分割して戦おうかしら」

 マザーソルトは急速にそのサイズを小さくしていき、潮田海荷である人型サイズになった。コピーである十人はセントラル本部へ攻撃に向かった。そう来たか……と思う三人はそれでも心は燃えている。

「この軍勢は全て私の力をコピーしている。残る人間達の実力で勝てるかな?」

 その言葉に雪牙は答えた。

「泉と冥地が何とかしてくれるだろ。それを信じるだけさ」

 セントラルの司令室にいる紅水泉と冥地功周はやれやれと思いながら窓ガラスが割れる場所からリングチェンジし外に出てコピーソルトと戦う。






『うおおおおおおおおおおおおっ!』

 三人揃った黒主部隊は息を吹き返し躍動する――。

 人間サイズになるマザーソルトにありったけの弾薬、オーラ弾が放たれた。

 その全ての弾はオーラソードによって簡単に弾かれる。

 前に出るレーコのガトリングガンが牽制をかけ、蒼と紅のオーラを纏う二機がマザーソルトに斬りかかる。左右からの剣と正面からの弾丸に対処する二刀流のマザーソルトは空中に後退した二機を見て舌打ちをし、

「空を自由に飛ぶのは案外うっとおしいものだな」

 雪牙は空中を駆けながら左手から蒼炎を放ち続け、

「ならば貴様も空を飛んでみせろ!」

「私は空は飛べんよ」

 地面にオーラソードを激しく叩き付け、自分を土煙で姿を消す。

 姿の消えたマザーソルトに三人は焦り、空中にいる黒主は地上に向かって叫んだ。

「レーコ! 後ろだ!」

「――がっ……はっ!」

 背中を斬られたレーコは地面に倒れる。確実に胴を斬ったと思うマザーソルトだったが、レーコは手に持つガトリングガンの先で防いでいて致命傷にはならなかった。だが、マザーソルトの優位に変わりは無い。

「元々瀕死にあり、武器の無い貴様は詰みだレーコ」

 ヘヘッ……と笑うレーコはもう限界かと思いながら言う。

「武器? そこにあんでしょ?」

 投げ捨てたガトリングガンが爆発し、マザーソルトは一瞬視界を失う。

「くっ!」

「もらったっ!」

 空中から仕掛けていた黒主の黒刀がマザーソルトの首を捉えた。瞬間、マザーソルトの金色の髪が左周りに旋回し黒主の攻撃は弾かれた。金髪の女の怜悧な瞳と黒髪の男の視線が激突し――。

「――ぐああああああああああっ!」

 絶叫を上げる黒主は一瞬七斬を浴びた。

「もらったのは貴様だったな黒主」

「いーや、俺の仲間はまだいるぜ?」

「? 雪牙?」

 その背後には雪牙がいた。刹那の間に背後に出したマザーソルトの剣は残像が揺らめく流水の動きによって回避された。

「覚悟! 潮田海荷!」

 心臓を狙っていた右手の剣を飛ばされた雪牙は左手の剣で相手の腕を飛ばした。

「お前は飛べないんじゃない。飛ばないんだ!」

「寝言は寝て言え」

 ズバッ! と目に見えぬ速度で一閃したオーラソードの直撃を受けた雪牙は一人遠くに飛ばされた。

 地面を転がる雪牙は止まるが、生きているかはわからない。

 すでに勝てる見込みの無い戦いに黒主もレーコも立ち上がる事が出来ない。

 二人はすでにコピーソルトに倒される冥地と泉にも気付かないまま臍を抑えているマザーソルトの言葉に聞き入る。

「今のままでなければこの世界は、人間は変化に耐えられない。今を守る事なら誰にでも出来るが、変化についていけない人間は変化などは望まない。全てが成り立つ現状を維持し、今を受け継いで未来を作るのが家康のリングから得た望み、願い、希望だ……。所詮はこの世は血統が全てを決めてしまうんだよ。だからこそ私はこのジパングで神になるのだ」

 立ち上がる黒主は内臓が破裂している事を不快に思いながら呟く。

「……この世を変えるのは血統じゃねぇ。テメェ自身の魂の根性の問題だ」

「そうねリーダー……雪牙は家康の子であり潮田の子だけど、二人の異常な遺伝子の力を乗り越えた。血統の呪いを超えた存在もいるいい証拠ね」

 右目が開いていないレーコは立ち上がり、髪のゴムがほどけているのに気付く。

 倒れたままの雪牙を見据えるマザーソルトは断罪を下す審判として言った。

「力は子供には受け継がれない。優れた人間を掛け合わせて子供を産ませても進化はする事は無い。だからこそ私がジパングにならねければならんのだ」

 その瞳は倒れたままの雪牙に向けられた。

 そして、抑えていた臍を開放する両手が開かれるとまばゆい光が発した。

「絶望の声を我に聞かせよ。憤怒の怒り我にぶつけよ。その全てを我が子宮は受け入れ、解き放つ!」

『――』

 全員はマザーソルトがソルトフラッシュのオーラを溜めていたのを失念していた。

 邪悪な白い閃光が雪牙を白く消滅させる――。




 絶望の光が雪牙を呑みこんだが、雪牙は生きていた。

 セントラルの人間達は、その光景に絶句している。

 地面に座り込むレーコは天を仰ぎ、虚ろな瞳をしていた。

 周囲には黒い鎧の残骸が散乱していて誰かのアーマーが破壊されているのがわかる。

 そして、雪牙は自分をかばってかろうじて立っている金髪の男に言われた。

「怪我はねーか、雪牙?」

 カランッ……と地面に落ちる黒主のNリングは雪牙の目の前に転がる。

 同時に、黒主は地面に倒れた。

「リーーーダーーーーーー!」

 絶叫する雪牙は瀕死の黒主を介抱する。

 すでに虫の息の黒主は虚ろな瞳で雪牙を見つめていた。

「リーダー! リーダーっ! 何故俺をかばった!? 何故だ!?」

「そりゃ、部下を助けるのがリーダーの役目だからだ……」

 ヘヘッ……と笑う黒主は地面に転がる自分のNリングを拾い、

「このリングはお前にやるよ……餞別だ」

「いらねぇよ! それはまだお前が使うリングだ! あんたはこのジパングを出るんだろ? その時に使うリングじゃないか……」

 すでに返事をする力も無い黒主は優しく微笑むだけで自分の感情を伝えた。

 もう同姓として目標としていた虎のような野獣さを秘めながら、頭脳は以外にも冷静な自分に似た男にはもう人生の時間が無い。抱きしめるリーダーの身体は自分の冷気を纏うように冷たくなっていた。そして、自分の心に一つの決意を固める雪牙は言う。

「借りるだけならいいぞ……このNリングは借りておく」

 かすかに動いた黒主の手からNリングが雪牙に引き継がれた。

 かすかに開く瞳で黒主は呟いた。

「じゃあ貸しだ。んじゃま、ちょっくら眠るぜ……」

 そして、その自由な世界に飛び立つはずであったうつけ者の寿命の灯火は消えた。

 左手のリングを握り締める雪牙は瞳を閉じて全身を震わせ、茫然とその光景を見つめるレーコの左の目からツツーと涙が流れた。

 両目を限界まで開ける雪牙の充血した目に涙が溜まる。

「このリングはこの男の信念の……」

 一つの涙が落ち、左手の二つのリングが濡れた。

 黒主の死に喘ぐ少年と少女を見てマザーソルトは言う。

「死んで何も出来ない奴が一体何の支えになる? 悲しんでも奴は戻らんぞ?」

「何も出来なくても、出来る事はある……仲間だからこそ、出来ることはある!」

 叫ぶ雪牙に、レーコは微笑む。

 そして、レーコは言う。

「カロリー切れたから後は頼んだわよ。行けるわね雪牙君?」

「当然だ……少し待ってろ。カップ麺が出来るぐらいの時間で終わらせる」

 キッ! と涙を散らしマザーソルトを見た雪牙は答えた。

 その迷いの消えた顔に自分の息子の変化を敏感に感じ取った。

「黒主みたいな事を言うなよ雪牙」

「言うさ。何せ俺はあの男の魂を受け継いでしまったからな」

「奴の魂を受け継いだ? まさかそんなものでこのジパングを維持できるとでも? 人の進化は今のままでいいんだよ」

「発展なくして維持はねぇよ。もし、それで人間が消えたなら人間ってのはそこで終わりって事だ。恐竜、人間に続く何かが出てくんだろ。別にこの世界に人間がいなくても何か問題あんのか? 考えすぎなんだよクソババァ!」

 本当に黒主の意思が伝染してるなと思うレーコは安心して戦況を見守る。

 嫌な予感が頭をよぎるマザーソルトは自分の思いを語る。

「……成長がいらない。他人との出会いが人間の心を揺るがせ、おかしくさせる。必要な成長など人間には必要無い。成長は他人をいずれ見下し、戦争を起こすキッカケになる」

 だが、雪牙は保守ではなく攻撃的な自分の思いを語る。

 そして、黒主のNリングを左手の中指にはめた。

「慣れ合いや妥協が無くて人間が営みを持てるわけがない。だが、競争無くして進化は無い。そして競争、競争の神経が休まらない日々が人間を進化させるのは正邪を受け入れたうつけ者だけだ。……進化を恐れない俺の覚悟を見せてやる」

 ボゥ……と雪牙の左手の二つのリングに蒼い炎が灯る。

 そして自分の息子を諭すように、このジパングの大地を説得するようにマザーソルトは言った。

「このジパングから出ない事が世界の幸せ、願い、欲望の全てを力に変える箱庭! この私の子宮の中で日本に住む人類は私の愛に溺れて生き続けるのよ!」

「そんなもの、お前のエゴだよ!」

「世界はこのジパングが全てじゃない。磁場海域の外には果てしない世界が広がっているはずだ。だからたまに海岸に何処かの国の物体が流れつく。そこにはここではない何かがあり、どこまでも広がる地平が、自由があるはず。それを見てみたい……いや、見るんだ! その新しい世界を見て、自分自身を果てしなく進化させる。それが俺の夢だ!」

「黒主の意思を引き継ぐとでも言うのか? 小ざかしい息子よ」

「夢も大義も人それぞれ。人に言われてありのままを受け入れる者。反発しながらも従う者。他人に自分の存在意義を見出す者。それがユナイトファングの全て。だが俺はそのどれにも収まらない……俺はジパングのうつけ者。この世の正邪を突き破りし、不死身の阿修羅! 会桑雪牙だ!」

 二つのNリングがはめられる左拳を突き出した雪牙は威風堂々と宣言した。

 そして、二つのリングが共鳴するように互いを感じあって新たな力を生み出していた――。


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