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ダイオクとの決戦3

 戦局は冥地家側が仕掛けた数々のトラップが威力を発揮し、ダイオク側の戦力を確実に削って行く。自由に攻めさせたユナイトファング専用地下道のトラップである流し込まれたセメントは全て固まり機体を固定させ、内部のリングナイツは脱出不可能と見て各々に自決した。

 これにより地上からの戦闘のみがこの戦いの勝敗を分けるものとなる。

 出撃する雪牙は蒼いトサ・セブンソードをハコダテのゴリョウカクの前に停止させてい

た。

 すると、三十ほどのダイオクのアイヅの銀色がまぶしい精鋭部隊が現れた。

「やはりここに来たな。あれが潮田の腹心か。たかだか三十程度の腹心でこの俺に勝てるかよ」

 敵を発見した三十機は同時に肩のビームバズーカに照準を合わせ、放った。

 ズゴウウウウンッ! と激烈な爆発が上がり、アイヅはそこを見据え散会した。

 爆炎の中をサーチするアイヅの群れの少女の一人が、そこに雪牙の熱源が無い事に気付く。

「――上空?」

「全員が同じ行動を取るからこうなる――」

 爆発の勢いを利用し飛び上がり、腰のスラスターを吹かして一気に急降下した雪牙は三機の少女を倒す。蒼い阿修羅の蠢きに、アイヅの少女達は後退しつつビームバズーカを放つ。この相手の機体は白兵戦に特化しているというのは自分達の大将である潮田海荷の機体である事からも知っていた。しかし、雪牙には勢いに呑まれている相手の心理までを見透かしていた。

「乳を揺らす暇があるなら身体を動かせよ」

 ビームバズーカを左右に動き回避し、トサ・セブンソードは一気に五機を倒す。

 躍動を続ける蒼いトサは次々に銀色のアイヅを爆発させて行く。

 七本腕の超絶技巧にアイヅは頼みの重装甲も役に立たず刻まれた。

 確実に装甲の隙間を狙う雪牙の技量に、少女達は初恋さえ感じてしまうほどに圧倒されて倒れた。

「……あっけないな女共よ。この会桑雪牙に本気を出させて欲しかったものだ」

 雪牙の無双で三十人の少女は倒れ、Iリングは壊れ戦闘不能になる。

 少女達は蒼い炎を上げている涼しい少年に心を奪われ見とれていた。

 そして、雲間から現れる自分達の大将を発見し少女達は撤退した。

 雪牙は瞳を細め、上空を見上げる。

「来たか……俺に倒されに」

 その鉛色の空の上空からは金色のリングナイツと純白のリングナイツが姿を現す。

 金色の全身にエネルギーの吸収と放出の射出口があるユナイトの元メカドクター猫神が駆る金神閃。

 純白の阿修羅を彷彿させる般若のような姿の潮田海荷専用リングナイツ・六本腕の剣に額の蛇腹のような海蛇剣がマフラーのように首に巻かれる高速機動機体チョウシュウ。

 待っていた……と言わんばかりに雪牙は七本の刃を構えた。ズシン……と地面の雪を踏みにじり着地する金神閃とチョウシュウは目の前の蒼い炎を灯す蒼天の楼のごとき機体を見た。

 そして潮田海荷は言う。

「私がハコダテ支部を潰している間に精鋭部隊がお前一人に倒されたか。だいぶ成長したようだな雪牙」

「……ハコダテ支部を潰した? 潰すほどの理由はあったのか?」

 すでにハコダテ支部は猫神のキャットバズーカの大砲奇襲から始まり、潮田海荷一人によって陥落していた。氷の結界を破壊し、外に出ようとしていた為にハコダテの戦力は壊滅させられた。いや、他の理由を挙げるとするなら冥地功周の冥地家のあるこの場所の危険性を考えてかもしれない。

 潮田は全ての敵を白兵で倒し、新型機であるチョウシュウの多武装を使用していなかった。力を持て余す親子を猫神は心の中で笑う。

『――』

 両者はそれ以上の言葉も無く戦いを始める。

 地面からすくい上げられ舞い散る雪の煌めきと激突を続ける互いの獲物のみが会話となり空間に響く。金神閃は後方から間断無く射撃を続け、トサ・セブンソードの回避ポイントを消し潮田のチョウシュウに優位になるような展開に持って行こうとする。

 それでも蒼き炎と心に大義という信念を宿す雪牙の心は折れる事は無い。

 一瞬の瞬きですら許されない斬撃と射撃の応酬の中、雪牙の耳に潮田の声が響く。

「……いい動きだ。我々二人を相手にしてその動き。悟りでも開いたか?」

「――大義だ。俺の中にも貴様のような揺るぎない信念の大木である大義が生まれただけだ。自由にこの空を舞うという大義がな……くっ!」

 ガギィン! と死角から這い寄る二刀がトサ・セブンソードの胸を刻む。

 一気に足を蹴り上げ雪で目眩ましをし突進をかけ全ての剣で突っ込んだ。

 その七本の大蛇に応じるようにチョウシュウも同じ軌道の突きを繰り出す。

 互いの中央の空間で大蛇達は弾け、動きが静止した。

「その七本の腕を操れるのか? 貴様の力では限界があるだろう」

「お前に出来て俺に出来ぬ事は無いだろう。人の可能性をなめるなよ!」

 蒼い炎を纏う七本の腕を躍動させトサ・セブンソードは舞った。

 潮田は言葉の応酬にも動じない雪牙に喜びを感じる。

「仕組んだ才能が開花した。私の超絶技巧にここまでくれば次は……」

 空中にて金神閃を静止させ狂乱の笑みを浮かべる猫神。

 そしてそれは潮田も同じである。

「敵のニ手三手先を読む。全部貴様に習った事だ。貴様がこちらの状況をある程度読める以上、こちらも貴様の状況は読めて当然」

 ジパングにはユナイトが立ち入り禁止区域にした地域などは数々のトラップが仕掛けられており支部の関係者はもしもの時の為にトラップを発動させる方法なども熟知している。潮田ならば落とし穴やトラップに簡単に引っ掛からないであろうという判断が前線の指揮官に潮田が関与していないという結論に至らせた。

「貴様の教えに負けているのは昨日までのセントラル支部だ。新生セントラル支部の力をなめるなよ」

「雑兵が結束した所で潮は吹かんぞ」

 繰り出された一瞬七斬を上空に飛んで回避する。スラスターを吹かせ上空から勢いよく迫る。すると、チョウシュウも空を飛んだ。トサ・セブンソードの一撃は地面に突き刺さるがすぐさま追撃をかける。

「その新型、空も飛べたか」

「お前のようにスラスターを吹かして一時的にだけだがな。といっても私は空は苦手だが」

「――落とす!」

 ガガガガガガッ! と螺旋を描くように二機は上昇しながら剣劇を繰り広げる。両者の攻防は互角に近い。雪牙は自分の身体が重力で内臓が破裂しても構わない勢いでスラスターを全開で吹かしチョウシュウを背後から攻撃し、地面に叩き落した。潮田は落下する機体を立て直そうとするがスラスターがイカれて反応しない。

 その光景に猫神は見入る。

(この親子二人がこのまま自滅してくれればジパングは安定するんじゃないの? このまま消えてなくなりなさい……ナハハッ!)

 そんな猫神の思いなど知らない雪牙はとどめの一撃を加えようとトサ・セブンソードの七本の剣を煌かせた――。

「介錯――」

「ああああああっ!」

 潮田の耳を劈くような絶叫と共にトサ・セブンソードは全身を刻まれ顔面から地面に落下した。何が起きたかもわからない雪牙は、プクーと口からガムのようにバルーンを膨らませるチョウシュウを見た。

「……くっ、ガムを能力として使うとはな」

「私のガム好きはマルカワオレンジガム一年間の製造の五分の一を私の口で噛むというのは有名な話さ。さて、不時着」

 機体をパラシュートのように浮かばせていたバルーンガムは弾け、ズシン……とチョウシュウは着地した。チョウシュウの剣が大破寸前のトサ・セブンソードに向けられる。

「スラスターが無ければ空は飛べず、片腕では私の絶技には勝てない。終わりだ――」

 スパパパッ! と刻まれ、かつての潮田の機体は爆散した。

「会桑は終わりだ。支部を落としに行くぞ猫神」

「ナハハッ! 何を言ってるの? まだ水戸黄門で言うならイケメン俳優お銀君の入浴シーンが終わったばかり。こっからが黄門ちゃまのフィーバータイムよ」

「何だと? ! ――何だあの蒼い炎は!」

 唖然とする潮田の瞳には赤い炎の中に蒼い炎を上げる蒼い機体が映る。

 この世の全ての憎しみを表したような阿修羅のような顔立ちに、両肩に円盤があり両腰に二本の刀。それは自然の力である故にNリングの力であるリングナイツだった。

 その場に蒼い炎が流れ一瞬、静寂が満ちる。

 その雪牙の指のIリングはNリングに変化していた。

 会桑雪牙の意思で生み出した蒼天楼がその両目がきらりと輝き雪牙は言う。

「始めるぞ。俺の蒼天楼そうてんろうが世界を変える」


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