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ダイオクとの決戦

 サッポロのミストジャマーで満ちた視界ゼロの森の中――。

 その白い霧にまぎれて金色のリングナイツの少女が地面を見つめながら何かをしている。

 金神閃きんしんせんの金色の装甲は土にまみれ、白い顔も土で汚れていた。

「ナハハッ! ここまで設置しておけば十分ね。これでジパングの電波障害の全ては無くなるわ。これで黒主のあの技を最大限に生かせるはず」

「ほう、面白いものを作ったな猫女」

「――!」

 バッ! と土を掘り起こし一人箱型の機械を設置している猫神は渋い声の老人に振り向いた。そこにいる冥地功周めいちこうしゅうの緑色のリングナイツ・地恒庵じこうあんと距離を置く猫神は言う。

「ダイオクは三年がかりでこのジパング全土のミストジャマーをリングナイツに還元するミストエリクサーを設置したの。ここを壊しても他の場所にいくつもミストエリクサーがある以上、今から起こる技は止まらないよ」

 冥地はそのミストエリクサーの詳細を聞く。

 ジパング全土に設置された電波障害を引き起こす霧であるミストジャマーを兵器として使う機械であり、それは猫神が黒主を守る為に作ったものだった。まさかこんな風に使うとは猫神自身も思っていなかったが――。

「もう、元の世界へは戻れないのを知ってるだろう? いい加減この世界を受け売れたらどうなんだ異人の娘よ」

「ナハハッ! 元の世界はもういいのよ。私は黒主の為に生きてるからね。どちらの勝利に転んでも、このジパングは変革の時を迎えているのよ」

「そうあってもらわねば、この世界は終わる。主がいた異世界のようにニホンという国があり、海の先には世界大陸が広がっているのはワシも調べた限りの中で知っているんじゃよ。鬱屈しそうなジパングの閉塞を終わらせなければ、内部の圧力に負けてこの大地は滅びるであろう」

「だからここで私を始末したいんでしょうけど、ここで死ぬわけにはいかないのよ」

 瞬間、深い霧の中から白いトサが現れた。

 それは潮田のフクアカ能力の失敗作であるピザ屋のピーコだった。

 ガキインッ! とピーコのソードが地恒庵の腰に巻かれる緑符で防がれると、猫神は森の奥へと姿を消した。邪魔者が……と眉間にシワを寄せる冥地はピーコに蹴りを入れるがシールドで防がれた。周囲に緑符を展開させながら目の前の金髪のショートカットの少女に呟く。

「貴様は潮田の分身体の一つ。本体から言わせれば失敗作なんだろうが、生かしてはおけないな」

「生かしておけなければ、どうなのよ?」

 ズババババッ! とピーコの高速の剣さばきと、地恒庵の緑符の応酬が繰り広げられる。全方位からビームが繰り出され、ピーコはシールドとソードで弾いていく。その勢いのままシールドを投げ捨て、一気に前進して仕掛けた。

(もらった――!)

 ピーコの視線の先には地恒庵はいなかった。

 足をひっかけられ、地面に倒れる。

「……緑符に意識が行き過ぎてたか。ワッチもまだまだね」

 圧倒的なオーラを放つ右拳をかざされ、地面に座るピーコは動けない。

「潮田の失敗作でしかない事を認めたらどうなんだ? ピザ屋がお似合いのピーコちゃんよ」

「必ずあんたはワッチが殺すわ。必ずね」

 その嗤う言葉と共に、地恒庵の腰に巻かれる注連縄が巻かれた拳がピーコを消し去った。

 そして、ミストエリクサーのボックスを破壊し冥地は偵察を止めてユナイトセントラルに帰還する。





「――地震?」

 会議室にて部隊編成を整える雪牙せつがは机の上のペンが床に落ちたのを拾う。

 同時に、本部支部全体に警戒警報が発令された。

 嫌な予感を感じつつ司令室に駆けた。

 すると、オペレーター各員が慌しく支部の被害状況と他支部との交信が途絶えた事を口にしていた。司令席にて眉をひそめる緑色の髪の冥地琴乃めいちことのはメインモニターのみを見据えている。雪牙の瞳もメインモニターに釘付けになる。

「……紅い氷の結界? ……これは夜天光やてんこう氷麗真紅祭ひょうれいしんくさい

 セントラルの建物の一部は紅い氷付けになり、その各支部も紅い氷で包まれていた。

 ミストエリクサーを媒介にした氷麗真紅祭の最大広範囲の技。

 それはジパング全土の土地を凍てつかせている。

 ワッカナイからセントラルまでの道が一本のラインのように氷の無い空間が生まれ、両者の決戦への道筋が何の邪魔も無く開かれている。両軍が侵攻する道は凍っていないが、この状況では追加の援軍は見込めない。更にせわしなく喋り続けているオペレーターの声に耳を傾けていると、トサがある格納庫が次々と爆破され三十機近くが大破しメカニックも数人が死亡したと言っていた。すると、支部長である冥地琴乃の口が動いた。

「各員第一種戦闘配備。ジパング外周の警護にあたっている外異の紅水に連絡を」

「――丁度いいわね。アタシ達は鳥篭の中に閉じ込められたみたいよ。この氷の結界は簡単には突破出来そうにもないわ」

 突如支部に通信が入り、セントラル外周の警護に当たっていた泉は地面を氷らせている氷麗真紅祭に一撃を加えつつ言う。全員の顔色が焦りの色に変わる中、ユナイトの管轄化に置かれるアサヒカワの上にあるシュマリナイ湖に二機のリングナイツがいた。夜天光の圧倒的に失われたエネルギーを寄り添いながら補給する金神閃を操る猫神は、

「これで誰にも邪魔されずに鳥の巣をつつけるわ。雪牙が冥地功周の協力の下、セントラル支部を立て直したらしいけど、アタシが知りうる格納庫には全て爆弾を取り付けておいて向こうの戦力は削った。それにジパング全体に及ぶ氷の結界のおかげで他支部からの増援は見込めない。どう、この甘美な状況は?」

「……体力の使いすぎで喋りたくない。少し回復したら後退して様子を見る」

 少し機嫌の悪い顔をした黒主は全ての力を出しつくした為、瞳を閉じる。

 夜天光はジパング内のミストを猫神の設置したミストエリクサーと両肩のパワーアンプを介して全て氷麗深紅祭に変えた故に完全に力を使い果たし地面に膝をつく。しばらくの間ジパング内には今までにないクリアな通信状態が続くが、リングが活動する限りミストはまた広がる。ククッと口元を歪める猫神は地面に跪く夜天光を背後から抱きしめ回復作業に努めた。そして黒主は瞳を閉じる。

(……怨むなよ雪牙。俺達の尊敬していた女は途方も無い化け物だったようだ)

 猫神の回復を受けつつ、こんな途方も無い計画をしていた潮田海荷を思った。

 そして、セントラル支部は先行部隊として藤原率いるトサ七機を出撃させる。

 その追加として冥地功周と紅水泉を希少な空戦部隊として後続に加えワッカナイのコサックテキーラから進攻を始めるダイオクの重装甲リングナイツ・アイヅの群れに立ち向かった。


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