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ジャスティスタワー攻略戦2

「くうぅ……」

 数多の瓦礫が積み重なる闇の中、全身の激痛を感じながら雪牙せつがは暗闇を感じながら目を覚ました。

 トサ・ヘビィアームズにリングチェンジ事を思いだし、カブトの中の非常灯の赤ランプだけが点灯する明かりで左腕の装甲を開き、内部のタッチパネルを叩いた。パネルをいじると機体の状況が著しく損傷しているのがわかる。

「チッ、このままでは部隊の確認も取れないぞ……」

 全ての計器は一切反応せず機体そのものが立ち上がらない。

 タワーそのものを質量弾に見たたて攻撃してきた潮田の作戦に一本取られたと思わざるを得ない。ジャスティスタワーへ地上から行くにはジャスティスロードを使用するしか無く、篭城する敵からすれば簡単に迎え撃てる場所でもあった。

 すでにセントラル支部を脱し山崎支部長を拉致する潮田は水中用のカプセルに自身のトサ・セブンソードを入れ、水に満たされる地下道からジャスティスタワーに向かっていた。必要最低限の動きで全てを手に入れる潮田らしい手口にセントラル支部の人間の心は折れる。

 ダイオクはビッグリングキャノンだけでは無く、タワー倒壊作戦もあった為に部隊を持ちつつも進攻させずにいたのだろう。そんな状況すらつかめない雪牙は全身の痛みに耐えつつ右肩の傷口が開き出した事で苦悶の表情を浮かべた。そして携帯をいじり本部支部への連絡をしようとするが、機体を損傷した際に過度の電圧を浴びショートしていた。仕方なくまた機体の装備を確認する。

「タワーに押し潰された衝撃で大半の装備も使えないな。しかもこの状況だと部隊の大半は瓦礫に潰されただろう。このまま白兵で制圧するしかないか……」

 タワーに押しつぶされた部隊のリングナイツを思いつつ身体を動かしていると、右手に持っていたライフルが火を吹いた。突如、耳をつんざく衝撃と振動が襲い、積み重なる瓦礫が安定するまで耐えた。正面の瓦礫を吹き飛ばしたのを見て幸いとし、機体を捨てて外に出た。辺りは瓦礫の山になっているがそれなりに明るく、格納庫のような広々とした空間だった。すると、目の前に金髪のショートカットの女がピザのトレイを持ち現れた。

「ヘイ、マッハピザお待ち」

「マッハピザのピーコ! お前、何故ここに?」

「利用回数が千回で命お助けサービスもやっているのだ。お得意の命を助けるのもマッハピザの仕事。ここから先は欲望の闇。腹ごしらえしてから行くがいいわ」

「あぁ……そんなサービスがあったのか。感謝する……」

「欲望に忠実な者、身を焦がすほどの熱い心の炎こそが未来を切り開く潮となる」

 すると、ピザのトレイを渡しピザ屋のピーコは姿を消した。

 ピザを一切れ口に入れ、腰のホルスターから銃を取りだし、奥のがらんどうのような闇の空間に向かって進んだ。切れた額からは青い液体が流れ出ていた。





 ジャスティスタワー地下一千メートル。

 五層のリングエネルギーの結界に護られる最深部の司令室では潮田が腕を組み相変わらずマルカワガムをクチャクチャさせながら数十あるモニターの中央にあるメインモニターで崩壊させたタワーのその後を見据えていた。周囲の部下は無言のままタッチパネルを操作し、振動による地下への影響を調べている。プクーっとマルカワガムを膨らませた潮田は、

「……犬共は沈んだか。各員第一種戦闘態勢を維持。黒主と会桑かいそうに警戒しろ」

『了解』

 とオペレーター達が言うと、地下に点在する兵士達の了解反応がメインモニター上に現れる。すると、背後の薄闇の中から金髪のか細い女の声がした。

「第一段階終了ね。これでユナイトは戦力が崩壊し、会桑と黒主と数名のみになった」

「黒主は猫神の加護があるが会桑は……やはり噂はでっちあげのようだな。奴のエージェント時代についた不死身の会桑とは貴様の仕込みだろう?」

「まぁね。彼を生き延びさせるのは強引な手段も使ったしね。それにアナタに対抗するには色々と策を練らねばならないから。聞いてはいないけど、この先のプランはちゃんとあるんでしょうね?」

「当然だ。奴等に早急な増援は無い。セントラル支部はオタル支部に近いとは言えユナイト内部の阿呆共の利権やしがらみの問題でそう簡単には動けんよ。一枚岩になれねば世界を維持出来ないという事を各支部の連中に見せてやる必要がある」

「へぇ、その意気込み忘れないようにね」

「当然だ。冥地功周めいちこうしゅうに邪魔されないよう索敵頼むぞ。潮田として生きていたいのならな」

「わかっているわよ」

 その短い金髪の影はピザ屋のエプロンの裾を揺らし消えた。

 そして潮田海荷はマルカワガムを噛み言う。

「失敗作に言われるまでも無い。このクーデターは大義の為の一歩。民意は我等にある」





 目映い光に生身の雪牙は照らされていた。

 その光は薄闇を照らす銀色のトサ三機のアイライトであり、尋問に合うような形で立ち尽くしている。

 すると、中央にいるダイオクのトサが話かけて来た。

「よく生きていたな。全員死んだと思っていたんだけどね。噂は本当か……不死身の会桑」

(……トサが三機。これはチャンスかもな)

 両手を上げる雪牙は中央のトサを見据えながら思う。

 周囲に何故か沈黙が流れ、三機のトサの持つライフルが動揺するように微妙に動く。

 明らかに動揺し、味方間にしか伝わらない通信で会話をする隙をつき、切れた額から流れる血を拭い動いた――刹那。

「動くな化け物ぉ!」

 動揺を超え恐怖に変わる敵の言葉を無視し死を覚悟しながら突っ込んだ。

 三機のトサは走る雪牙に目標を定め、ダイナマイトを爆発させる雪牙にライフルを連射する。

 ババババッ! と煙が舞う空間に火線が飛び交い、脳髄を抉るような金属が弾ける音がし、やがてまた静寂が満ちた。雪牙は仰向けになったまま頭から青い血を流し倒れている。三機のトサは中央と左の二機が機体を損傷し停止している。

 二機のトサは損傷を受けた装甲の傷に疑問を抱く。

 スッ……と倒れていたはずの雪牙が動き、また火線が走る。

 混乱のあまり仲間を誤って狙撃したダイオクの少女時口は、突如響くオペレーターの声に驚く。

「時口少尉応答せよ! 湯山、駿河少尉の二機の反応が消えたわよ! 一体――」

「化け物……やはり会桑は噂通りの……」

 時口の両眼がトサのメインカメラを通して雪牙を見る。

 すでに時口はリングナイツと生身である人間との圧倒的な差を感じてはいない。

 現世には存在しない魔物や奇怪な生物を見据えている視線の先には――。

「血が……また青い……」

 と、茫然自失の雪牙は言った。

 だが、敵も茫然自失である。

「……俺は……俺は――」

「化け物があああっ!」

 人間にとって怪異でしかない雪牙にライフルを乱射する。

 同時に、黒い影が横切り、銀色のトサを一刀両断に斬り裂いた。

 爆音と煙が空間を満たし、未だ茫然自失の雪牙は目の前に突き出されたソードによって爆発から守られる。

 少しの沈黙の後、虎柄のトサで現れた黒主が言う。

「何を茫然としてるんだ? 早くそこのトサを奪え。任務は継続中だぜ」

「……」

「ユナイトへの忠誠心がお前の信念だろう。命令、法令違反は断固として処分する」

「あぁ……」

 額の青い血を拭い、アイライトを消す黒主を薄闇の中見据えた。

 二人の視線は機体越しで睨み合っている。

 憎しみ、怒り、殺意、嫉妬――様々な欲望の感情が入り乱れた二人は任務など忘れるように全身から沸き上がる感情を二つの眼球で語った。

 すると、チョコを失い半泣きのレーコと再開して三人は下層へ向かう。


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