ジャスティスタワー攻略戦1
降り止まぬ雨は更に勢いを増し、エアブレードで進んで行くトサの群れの足元にも泥が跳ねる。
ジャスティスタワーに続く一本道であるジャスティスロードを進み、目標目掛けて進軍する――瞬間。
「先行するトサよ止まれ! そこまでが絶対境界線である!」
火山が爆発したかのようなダイオク総帥・潮田海荷の叫び声が耳に響いた。
オープンチャンネルで送られて来る映像をカブト内部にある左目に映る小型モニター上で見る。そこには国王室を占拠する造反者・潮田の姿があった。雪牙はトサ・ヘビィアームズの左手を上げ後続に止まれの合図を出す。が、すでに後続も停止している。ズウン……とその部隊は元上官の命令を遵守するが如く制止する。
(出鼻を挫かれたか……まだこっちはだいぶ距離があるというのに。奴からの命令の癖が抜けて無い以上、こちらが不利……)
その雪牙の思い通り特務部隊の動きは停止している。ただ雨の音が機体の内部に響き各リングナイツ達は潮田の命令を待とうとしてしまう。頭では解っていても身体が動かない。当の雪牙も命令を出そうとする口が動かない。そして潮田の声が響く。
「どうした? 動かないなら降伏してセントラル支部を明け渡せ。大義無き貴様等に勝機などは絶無」
「大義は我等にある……ユナイトファングが世界の大義だ」
「それは私が叩き込んだものだな。貴様等自身の心にある自分が生み出す大義がない限りダイオクには勝てんぞ」
眼前にある地上のリングランチャーの発射口に緑の粒子が収束して行きそれに気がつく雪牙は全軍に左右に退避するよう叫ぶ。遅いわと言ったように笑う潮田はマルカワガムを膨らませた――が、一つの黒い影に驚き弾けさせる。
「――黒主!?」
トサに施したステルス機能を使用しつつ雪解け水で通行不可能な地下道を泳ぎ、そこから土を掘り続けた虎柄のトサを駆る黒主はリングランチャーの眼前に姿を現し、周囲を警護するナイツをソードで切り裂き入口の中距離エネルギー砲を一気に破壊する。破壊されたリングランチャーは爆散し砕け散った。
「第一段階終了。目標をタワー内部に移行する」
口元を微笑ませる雪牙は後続の味方に命令した。爆炎の中、虎柄のトサはその黒い瞳でタワー頂上を見据えた。
「リングランチャーが破壊されたか……セオリー通りに動いてくれるものだ」
ククッと笑う潮田は映像に映るトサ・ヘビィアームズと虎柄のトサを見る。教え子が自分の意志で動くさまに多少の愉悦を感じつつも、怒りの感情は抑えられない。
雪牙は左手を上げ、Rランチャーを正面に構えて叫んだ。
「よし、全軍突撃だ!」
ズバアアアッ! とRランチャーを撃ち正門を破壊して突入の陣形を取る。
すると地面に仕掛けられるビームバズーカが地上に姿を現し火を噴く。
それを破壊し、ユナイトファングは一気に進軍し正門に迫る。
怒涛の津波のような火線がタワー正門に殺到し、内部の敵の応戦を許さない。
タワー全体は振動し、各々の階層から煙が吹き出る。
勢いに乗り火力で無双する雪牙の耳に潮田の通信が入る。
「あまり急ぐなよ会桑。私がそちらまで行くにはまだ時間がかかる。我々がキャノンを撃ってからの行動の遅さが命取りだったな」
「? 何を言って――」
ふと、その通信の発信元について疑問に思う。
その発信先はジャスティスタワーからでは無く、ユナイトファングセントラル支部からの通信なのである。つまり、潮田は目の前のジャスティスタワーでは無く、セントラル支部の司令室にいる。
(……)
全身の毛穴から冷や汗が止まらない先陣を切る雪牙は機体に降り注ぐ細かな落石を無視しつつ、背後にいる黒主を意識する。
(黒主の奴……俺を囮にして内部侵入を無傷で果たすつもりか。潮田が支部にいるなら人質の一般人を助けるのが先決だ……)
自分の背後で体力を温存する黒主に苛立ちを募らせながら各員に通信で一般人の人質回収班と退路確保班。レーコと藤原には支部へ緊急帰還するように命じる。
藤原のどういう事だと怒声が聞こえる中、ふと目の前に違和感を覚えた。同時に、背後の虎柄のトサが左からジャスティスロードから押し出すように突っ込んで来る。
「――何をする!? そこまでして手柄が欲しいか!」
「自惚れるな! ……」
その黒主の言葉は、強制的に割り込んできたユナイトセントラルにいる潮田の声によって欠き消される。
『言ったはずだ。戦場では相手の二手三手先を読め。国王室の壁紙と机があるというだけで私が国王室にいると思ったら大間違いだ。国王は返すが、山崎は拉致する。潰れろユナイトの飼い犬共――』
瞬間、異常な轟音と共にジャスティスタワーが特務部隊に向けて倒れて来た。
あり得ない状況に特務部隊はまるで夢を見ているかのように立ち止まる。
唖然とする雪牙は瞬時に機体を最大出力で退避させるが、元々が鈍重な機体の為に黒主のトサの押し出しに頼らざるを得ない。そこにレーコの桃色のトサも加わり押し出す。
『おおおおおっ!』
しかし、三機の出力を持ってしても回避出来る状況では無い。
「――諦めるなガキ共ォ!」
ズゴォ! と藤原のトサが二機に体当たりをかます。
四人の必死さを嘲笑うように、ジャスティスタワーは特務部隊全てを押し潰した。
激しい砂煙が上がり、周囲は轟音に殺された。




