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ジャスティスタワー建国際

 ジャスティスタワー建国祭。

 あれから一週間が経ち傷が癒えた外異特務隊の三人は潮田の命令でフラノにあるジャスティスタワー建国祭にてジパング国家長の警護任務にあたっていた。三十階建てのタワーはこのジパングの正義と希望の塔であった。

 ジパング全体の絆を深める友好の祭りであり、裏ではユナイトが様々な手段を使いまだユナイトに完全に属さないジパングを支配する為の行事でもある。

 このジパングの国王も長い血筋だとういうだけの国王としての飾り達磨としての仕事を全うし、ユナイトにこびを売っているのが見て伺える。

 ジパングを象徴するタワーでの式典は問題無く進み、ユナイトセントラル支部長山崎の登場も全て盛り上がり安定して事が運んでいた。挨拶の全ては終わり、潮田は民衆との話に花を咲かせていた。現在、新たに建造予定のアサヒカワでの基礎工事は終わりつつあった。ふと警護任務中にある雪牙せつがは動く。

「……レーコ、ここは任せる」

「え? どこいくの?」

「リーダーが勝手に動いた。ちょっと出る」

「じゃあ、パフェおごってね。新型のトサは大きめに作ってもらったし、カロリーオフのチョコもあるから、甘いもののちょっとやそっとじゃ太らないわよ」

「わかった。ここを頼む」

 盛り上がる会場を抜ける黒主を雪牙は追った。潮田も行け、と視線で合図し雪牙も会場を出て人が少ないエントランスに向かう。エレベーターから出てくる人の群れをかき分け非常階段に出る黒主を追い外に出ると、三発の銃声がし来賓の親子三人が死体になっていた。

「……雪牙か。通信規制をするこの会場内で携帯を使おうとしていたんで処分した。持ち物をあさってみなきゃわからんがスパイかもな」

「通信規制されているから非常階段に出たかもしれないだろ? あくまで通信規制は会場内であって外までは適用されない」

「あれだけ入口で注意してたんだぞ? 知りません存じませんじゃ済まされねーよ。建国際は必ず平和に終わらせる為の処置だ」

「……人の死に慣れすぎているからすぐに銃を発砲するんだ。リーダーも人の事を言えたたまじゃないな。最近は機嫌が悪い日が多いぞ? まるで野獣のような目をしてる」

「疑わしきは罰する。それがユナイトの大義。それが潮田の考えだ。お前だってそうだろ雪牙?」

 父親の死体の傍に落ちている携帯を拾い履歴などを探る。しかしそこには特別に何かの情報を外に発信した形跡は無かった。待ち受けには微笑む家族三人の写真が写っている。怒る雪牙は目を見開く男の子の瞳を手で閉じ、

「ろくに調べもせずに何故殺した? お前がジパング全体の偵察にかこつけて人殺しをしてる事は猫神から聞いて知ってるぞ! 殺すなら多少の詮索をしてから殺せ!」

「お前だって殺しているだろう? 友軍をな」

「――!」

 その刺すような言葉に雪牙は黙るしか無い。しかし身体は瞬時に動き黒主の胸元に向かって銃を引き抜いていた。同じタイミングで黒主も雪牙に銃を向けている。感情を爆発させようとする二人の頭上に、黒い影が走る。

「――!?」

 灰色の空には、地恒庵じこうあん炎姫えんきが飛んでいた。

 ダイオクの主力の二人である冥地功周めいちこうしゅうと何度もユナイトが煮え湯を飲まされている紅水泉こうすいいずみであった。

「飛行能力? Nリングにはそんな力があるのか……」

 雪牙は一瞥くれた後に携帯で会場の潮田に連絡しながらリングにオーラを注ぎトサを纏う。

 トサは空を飛べない為、黒主は階段を駆け上り少しでも二機に近い距離に行こうとする。

 ガラス張りのパーティ会場の外には地恒庵と炎姫がそびえ立ち、動揺する会場内を潮田が落ち着かせた。すると、地表から容赦無くトサ数機がライフルを浴びせかける。その全ては二機に直撃すると同時に冥地の冷たい声が響いた。

「この会場にはユナイトの重役だけで無く、各支部のスポンサーともなる来賓もいるであろう。その場所に平然と攻撃を仕掛けるユナイトの無差別攻撃の是非を問う。ここまで一般人であるジパング民を仕上げた潮田の手腕には恐れ入るな」

「全ての弾薬からガラス一枚割らずに守ってもらい感謝する冥地殿。一体何の目的でアサヒカワ区域がユナイトに組み込まれ盛り上がる建国記念祭を邪魔するのか聞きたいですね?」

 いつの間にか潮田はマイクを持ち、ガラス一枚隔てる地恒庵に乗る冥地を見て言う。

 地上からのトサの発砲は止み、目と鼻の先に駆けつけた雪牙も黒主も機体を動かせずにいる。今の現状の民意は冥地にあるという事を直感したからである。

 先に攻撃を仕掛け、尚且つ冥地は被害を受けるはずの会場内部を守った。

 これは無論冥地達が現れなければ起こらなかった事であるが、恐怖につつまれる民衆には事後にならなければそんな意思は生まれない。

「潮田。貴様等の企みは大体読めている。やめておけ、リングで起こる全てに人間の幸せは無い」

「一体何を言っているんだ冥地殿。私はセントラル支部の副支部長とリングナイツの教官という立場の一軍人でしか無い。何かあるなら山崎支部長から言うのが物の筋であろう?」

「山崎など貴様が自由に動く為の傀儡だろう。まぁいい。ジパングは貴様等には渡さぬという事とリングに幸せは無いという事だけ伝えておく。さらばだ」

 言うと、二機のリングナイツはジャスティスタワーから姿を消した。

 憮然とした顔の潮田は、パンパンッと手を叩き会場の空気を元に戻す。

 階段で飛んで行く二機を見つめる雪牙は、意味深な言葉を残し消える冥地に正義の信念を感じ、尊敬する潮田海荷に初めての疑念を抱く。しかしそんな気持ちは一切口には出さず、仕切りなおしとなる会場の警護にあたった。

 黒主が殺した家族は冥地襲来時に発砲した時に地上にいた数人の犠牲者の一人として数えられ処理された。血塗られた建国記念祭も無事に終わり、雪牙の胸に残るのは言い様の無い不安と焦燥だった。その夜は静かに眠りについた。



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