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地下からの悪鬼

 威力偵察はまずまずの成功を収め、ダイオクの戦力は新型のリングナイツが少数存在するだけでNリングを保有するのは紅水泉こうすいいずみだけだと判明した。新型が多くなく、泉の炎姫だけなら敵を上手く分断し総力戦で行けば確実にユナイトファングが勝利する。

 ダイオクの親玉である冥地功周めいちこうしゅうがユナイトプリズンに投獄されている以上、ユナイトが負ける要素は絶無であった。

 支部長の山崎はそれを副支部長の潮田に任せ、最近続く混乱から逃げるように繁華街に遊びに出かける。いつも通り全ての行動実権を握る潮田はユナイトの全支部部隊に第一種戦闘態勢を発し、全リングナイツにダイオクの迎撃と冥地 の厳重隔離を命じた。

 その潮田はアサヒカワの工事現場に立会いながら自身も内部を巡回する。新たなユナイトの領土が拡大すると同時に新たな問題が起きた事でジパング全体に緊張状態が続いている。アサヒカワ市民は早く工事が完成して全ての脅威が無くなる事を望む日々を過ごしている。副支部長室では潮田と雪牙が話し合っている。

「やはりジパングを占有しようとする行為にダイオクが反発しているようだな。ジパングは元々ユナイトの領域だというのに」

「当然です。大義無きダイオク連中の住処にしてやっているだけでも感謝の気持ちを持ってもらいたいものです。奴等は冥地家より手厚い保護を受け、多少の罪では処罰できず支援金で遊びまわる外異でしかありません」

「流石は不死身の会桑。そのユナイトの志は絶対に貫け。お前が外異とみなす者は全て処分しろ。疑わしきは罰するのがユナイトの大義でもある」

「了解」

「私は襲撃を想定されるアサヒカワに残る。市民の意思が変わっても困るからな。本部支部は他の者に任せ外異は独自の判断で自由に動け。山崎の命令は重要だが、山崎の命令よりも自分の大義を貫け」

「ハッ! ユナイトファング!」

 雪牙は潮田に敬礼し副支部長室を後にする。その顔は必ず自分も潮田のようにセントラル支部の顔だけではなく、ジパングの顔になれる自信に満ち溢れていた。

 そして、トサが鎮座する格納庫に足を伸ばす。




 格納庫では炎姫やアイヅなどに対抗する為にトサをカスタムし、強敵を殲滅する術を模索するように雪牙は猫神に機体の調整を頼んでいた。雪牙のトサのカスタムプランをリングOSに移行する最中、雪牙はカスタムタイプの資料を眺めていた。

 資料に見入る雪牙は近くの自販機の前でカルピスが入るカップを出す。

「敵が単発的に現れていた理由はあのビッグリングキャノンを建造していたからみたいだな。おそらくダイオクは一斉蜂起を起こす危険性がある」

「ナハハッ! そうねぇ。紅水泉を中心に単発的にしか最近は現れてなかったからね。それまでにはこのカスタムタイプを完成させるわよん♪」

「何を完成させるんだ猫神さんよ?」

 そこに黒主も現れ、自身の金色のトサをリングから解放しハンガーラックに搭載した。

 猫神はフラフラと千鳥足で金色のトサをコンッピューターにスキャンし、各部のチェックに入る。自分の機体を調べられる黒主は常に猫を身体に纏わせてる変人科学者に不快感を感じながら仕方なく手を合わせている。

(あー、気持ち悪りー。早く金髪の可愛い女と遊びたいぜ。こんな若いくせに手がカサカサの変人女なんぞ視界に入れたくもねぇ……?)

 ふと、猫神が雪牙のカルピスカップの中にカプセルのような物を入れたのを見た。

「おい、今そのカップに何を入れた?」

「……気になるなら助さんも飲んで見る?」

 振り返りもしない猫神の声は鋭く冷たい声に豹変する。蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れず、今の猫神の顔を見る事が出来ない。覚醒剤、睡眠薬、それとも他の何か――? 最近の感情が安定しない雪牙なら睡眠薬が必要だがこの女なら何を入れたかはわからない。

(この女にゃ必ず裏がある。雪牙の奴、騙されてなければいいがな……)

「振動? 地下?」

 突如、外に置いてあるパソコンが反応し猫神は猫の一匹を落とし瞳を細める。

 黒主トサの機体チェックを切り上げ、猫神はタッチパネルを叩く。

 アクビをした黒主も重武装使用機体の調整する雪牙を見る。

 激しくタッチパネルを叩いていた猫神の手が止まり、黒主はしゃがみ込みパソコンのモニターに見入る。

「……?」

 猫神の髪から香る甘い匂いに意外さを感じていると、

(何だ? こいつ風呂はちゃんと入ってるのか。それにこの白髪はくはつ白髪しらがじゃなくて天然物――)

「助さん緊急事態よ」

 黒主の思考は猫神の言葉とモニターに映る映像によりかき消される。

 モニターには雪牙が先日戦った赤いリングナイツ・炎姫が映っていた。

 左手から炎を幾度と無く射出し、上部へ向けて掘り進んでいる。

 ようやく異常を探知し、けたたましく地下道とジパングの支部全体に警戒警報が鳴る。雪牙も機体の資料閲覧を止め、コックピットの中で現在北海道支部の大多数が見ている赤い侵入者の映像を見た。

「あの場所はユナイトプリズンの地下道だろ。あそこを突破されれば冥地功周を奪還される可能性がある。新しい力に覚醒するいいチャンスだ。迎撃に出る」

「待って助さん!」

「待たん! ……!」

 振りほどいた手が猫神の顔に当たり、猫神の瞳を初めてちゃんと見た。

 綺麗な二重の瞳で、瞳の色は青く清んでいた。何故か雪牙と同じ感じの目に似てると感じた。

(こいつ……!)

 動揺する黒主は変な科学者としか思ってなかった猫神を一人の女として意識した。

 それは幼少期に起きた自分の親が起こした車両事故の後に助けてくれた少女に似ていたからである。

 そこで出会った金髪の少女が黒主の初恋の女性だった。ふと我に還る黒主は、

「……すまんな。だが、何故今出撃出来ない?」

「あの炎姫を囮にして貴方がオビヒロで交戦した金色祭が攻めて来たら本部支部はアウトよ。あの強敵とまともに戦えるのが潮田副支部長だけになるのは不味いわ」

「そうだが……このまま冥地を奪われるつもりか?」

「ここは角さんに行ってもらうわ。角さんは炎姫との戦いで新たなハイパー化に覚醒しそうな気配を感じたみたいだからね」

「……そうか。Nリングを試すいい機会だと思ったんだがな」

「……そのリングはNリング。自身のリングナイツを生み出す気?」

「俺はこの狭い世界を抜けて空を飛びたいのさ」

 不敵な笑みを浮かべ黒主は雪牙を見据える。

 心臓を抑え、多少苦痛に歪める雪牙のその視線はモニターに映る炎姫しか見えていない。

 左手のあいリングが蒼い輝きを発し、雪牙は欲望剥き出しの笑みを浮かべた。

 科学本部長兼作戦本部長である猫神の指示が全部隊に文章で送信され、雪牙のトサを隊長機とした三機編成の一部隊が先行して出撃した。

 雪牙の相棒になるはずの肝心のレーコはチョコの禁断症状で食べすぎでアーマーがキツくて装備できない状態にあった。それで猫神はノンカロリーチョコを開発を始めている。

(前回の威力偵察は暴走気味で俺の評価は上がっていない。上がったのは黒主リーダーだ。潮田教官はリーダーを見ている)

 潮田が黒主に期待をかける嫉妬の炎を炎姫にぶつけ燃やし尽くしてやろうという激情を噛み締め、雪牙のトサは駆ける。




 その時刻、冥地功周は相変わらずポテトチップスを食べながら独房にて寝転んでいる。

 振動が独房内に伝わり、咳をしながら冥地はゆっくりと目を閉じた。

(そろそろ時の流れが傾くか。果たして我々の大義が勝つか、ジパングはそのままユナイトファングに染まってしまうか……見ものだな……)

 現在、冥地功周は冥地家において孤立している。

 軍備商業ではなく自分の家の軍備拡張を邁進し三ヶ月前のセントラル襲撃の大敗の為に冥地は保守派から疎まれて一部の支持者で盛り上がっているのみである。

(あの女はユナイトの軍人のフリをしているが、ジパングの闇そのものだ。ワシも年を取りいつまでもつかもわからん命じゃ。ジパングの人間ではないあの女の浅はかな野望を……消す!)

 そのまま冥地はポテトチップスの袋を電磁檻に投げつけた。

 その袋は檻に当たってポトリ……と落ちた。その袋には、赤い血がべったりとついていた。



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