表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/89

二幕~絆~

 先日の紅水泉こうすいいずみの急襲事件でダイオクの威力偵察の脅威を非常事態と考え、ユナイト本部はリングナイツの選抜部隊で出来る限りワッカナイに近い場所までの威力偵察を行う事に決定した。アサヒカワに建造されている対ダイオク用の前線基地もある為に決戦を控えた現状として、敵の兵力の把握と共にどれだけのリングナイツがいるかを確認する必要があるのである。

 夜の闇から逃れるものが月の明かり以外無い雪の残る土地を徒歩で黒主部隊は行く。

 周囲に流れるミストジャマーで通信機はまるで機能はしていないが、エアブレードの音で敵が近くにいた場合バレてしまう危険性と電池切れを考えて夜の闇に溶け込むように黒いフードマントを着てワッカナイ方面に向けて北上している。

「……」

 謎の金色のリングナイツとの戦いで気を失った黒主は気が付くとユナイトの病院ベッドの上にいた。黒主は溶けて荒れた雪道歩く途中でアイヅと呼ばれる重装甲リングナイツを一人で倒した自信と更なる強敵に挑む覚悟を持って心の炎を燃え上がらせていた。

「ライトが使えねーのはキツイな。足元が雪でおぼつくぜ」

 淡く輝く三日月を見上げながら歩く黒主はズルッと足を滑らせる。

 すでに三時間近く歩いている為に黒主部隊も疲れが目立ち出していた。

 ゾンビのような顔で歩いているレーコはこの夜間強行軍ではなく糖分の足りない自分の身体の飢えで心もゾンビになりつつある。

「チョコが食べたい……いつか私は世界を壊すかもしれない」

「じゃあ、レーコ。色は同じだ。コレを食え」

 微笑む雪牙は雪の無い地面を指指した。

「そうそう、この茶色がチョコレートの色よねーーー……って、これ土じゃないの!」

 ポコポコとレーコに背中を叩かれる。

 そうこうしている間に、シュマリナイコ付近で明かりが灯るダイオクの前線基地らしき場所が見えた。

 そして黒主は左右を見渡し、二人を止める。

「俺達の遠く離れた左右にも他部隊が進行してる。午前二時ジャストに狼煙をあげたら潜入開始だ」

「了解」

 とレーコだけが反応した。雪牙は手を上げて進言をしようとしている。

「作戦時間までは後、三十分もある。実際にたどりつけてるかもわからない他部隊を待つよりは我々だけで偵察をするべきだ。我々は最強の部隊なんだから」

「……力に溺れるなよ雪牙。俺達は軍人だ。人殺しじゃねーんだよ」

 寒さで多少固まる金髪をかき黒主は言う。

 軍の命令と自分の意思による手柄を立てようという話は平行線を辿り、レーコは口を挟まずじっ……と二人の男の言葉に聞き入る。

「ダイオクはジパングの悪。消えても何も問題無いでしょ?」

「奴等も人間だぜ? ユナイトに反旗をひるがえす女集団に冥地めいちがハコダテの私兵と資材を投入して軍事的な組織に進化してる。今はハコダテはユナイトの管轄下にはあるが、冥地家の全てを支配できてるわけじゃねぇ。ヘタしたらハコダテからチトセのセントラルを叩かれるぞ」

「冥地家のハコダテ戦力なんて隠れた戦力があっても対した事は無いでしょう? 今の俺達は補給が出来るわけじゃない。他部隊がやられたなら偵察にこだわらず叩くべきだ」

「生きてる他の仲間の事はどうでもいいのか?」

 その黒主の言葉を無視し雪牙はあいリングにオーラを注ぎ込み、一人歩き出す。

 完全に雪牙は体内で湧き上がる自分の血の沸騰に心を喰われた戦闘狂になりつつあった。

 紅水泉の天真爛漫な誰にも縛られない戦い方に雪牙は憧れを抱いていたのである。

 もう一度泉と戦い、勝って自分の正義を証明しなければならない使命感がまるで宿命の遺伝子のように雪牙自身に激しく訴えていた。

「奴等の前線基地に奇襲をかける。ここでやらなきゃ、こっちがやられるだけだ」

「待って、雪牙君! リーダーの判断が先よ!」

「今攻撃しなきゃ勝てない。正攻法で狼煙を上げて大義なんてものを示す連中には奇襲で始末し後悔させるのが一番」

「調子に乗るなよエージェント上がりが!」

 キレる黒主は雪牙の胸倉をつかむ。

 殺意を込める青と黒の瞳が見つめあい――爆発が起きた。

『――!?』

 嫌な空気が流れていた三人は爆発した左方面の遠くの空を見つめる。すると、右方向の遠くでも爆発の火花が上がる。その夜空に緑のラインが引かれていた。それは明らかに爆発を起こしたエネルギーの本流の残り香であった。どさくさに紛れてチロルチョコを食べるレーコに気付かない雪牙は呟く。

「敵は長距離ビーム砲を持ってるのか?」

「あっ! 青い信号弾だよ!」

 飛び上がり巨乳を揺らすレーコは緑の流史の粒子の消えた夜空に上がる一本の青いのろしを見上げた。 それに黒主は目を細め、

「信号弾……しかも救援要請の青だ。向かうぞ!」

 一気にエアブレードを加速させ救援要請ポイントに向かう。

 雪を巻き上げそのポイントに向かっていると、一人のショートカットの大柄だが細い女が見えた。

 その女はユナイトファングの紺色の制服を着ており、胸がまな板だと思いながら雪牙はパイサーチをしつつ藤原中尉を救助した。

(Aカップか……明日の未来を夢見るAカップだな)

 そして、唯一生き残った藤原中尉から先ほどの爆発の全てを聞く。

 緑のエネルギービーム砲であるビッグリングキャノンという長距離ビーム砲はリングナイツ十人分のオーラで撃ち出す超兵器だった。ダイオクの首領である冥地が計画し、建造された兵器ではあるがまだエネルギー出力が安定しない未完成品であり、あまりもの不安定な代物の為に冥地も建造を凍結していた。それを無視してダイオクの女達は設計し続け、ある程度のエネルギー収束と照準が出来るようになっていた。

「……それを察知した私の藤原部隊は一週間前から密かに地下道を掘っていた。この作戦が決定してから地下道を使おうと進んでいたが、すでに敵に地下道は発見されていてその頭上をあのビッグリングキャノンで撃たれた……完全に私のミスだ」

 体格のいい藤原は筋肉質な身体を痛めつけるように筋トレを始める。

 この女は何かあるとすぐに筋トレをする癖があるらしい。

 ニイッ……と微笑む雪牙は言う。

「任務確定ですねリーダー?」

「……そうだな。そんなキャノンがあんなら潰す必要はある」

 そして、藤原部隊が掘り進めていた地下トンネルの埋もれた瓦礫の奥から進む事にした。

 全て雪牙の思う流れになっている為、自分の部下を戒めるように黒主は言った。

「ダイオクには正攻法で勝って大義を示せないようじゃ、民衆はついて来ない。お間のやり方はコソ泥と一緒だ。暗殺や工作で世界がひっくり代えると思うなよ」

「暗殺と工作でこのリングナイツまでのし上がった。ユナイトではこれが正しい。これが潮田教官の教えだ」

「そうか。それが潮田の教えか。なら俺が教わった潮田からのエージェントがリングナイツになれない理由を教えてやるよ」

 その互いの尊敬するユナイト副支部長潮田海荷の言葉に全員は聞き入る。

「このIリングは仲間という絆の力に反応して更なる力を得る。Iリングはレーダーに反応する。だからエージェントは使わないし、使えない。この力は仲間の為にあるもんだ。だから俺達は仲間を大事にしなきゃいけねぇ」

「……何故だ?」

「人間、だからだ」

 完全に亀裂が入る雪牙と黒主の関係を修復できぬまま作戦行動が開始される。

 他の二部隊がやられ、藤原中尉が合流したのと現状を考えた結果このツーマンセルで行動する事になった。

 A班・黒主、藤原。

 B班・四之宮、会桑。

 作戦行動に移る黒主は黒マントを脱ぎ捨て言う。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず。敵の内部にさえ入っちまえば少数精鋭の方が勝つ!」

 レーコと藤原はリングナイツになり、エアブレードで進み出す。

 そして、蒼いトサのアーマーを身に纏う雪牙に黒主は言った。

「会桑、一つ覚えておけ」

「……何です?」

「本当に強い奴は何かを護れる奴の事だ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ