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The world's end  作者: イズチ
4/4

センプウ

現在地:【トゥルー連邦】??

パーティー:セリ、シアン、マコ、アスカ、ライト

 ようやくトゥルーに足を踏み入れてみると、着いたのはドラッド国というアルノに似た町という方が正しいような小さな国だった。しかし、ここがエーデを結ぶ入り口となっているからか、市場はサイハテ並みに賑やかである。


「セリ、ここで何かすることはあるか?」

「うん、地図を買おうと思ってるんだ。別に途中まででもいいから」


 ドラッドは昔から貿易が盛んなことがあって品質の良い地図を作ることで有名だと耳にしたことがあったのだ。


「確かに買っておくべきかもね。シアンとかはともかく私たちなんかエーデの外になんて今初めて出たばっかりなんだから」

「アスカの言う通りだ。私も遠征はトゥルーまでしか行ったことがない。それに仁国以東の国は遠すぎて私もよく知らない」

「ならまずは地図屋さん?」

「地図の店ってあれじゃないのか?」


 ライトが指差した先には、地図のイラストが入った看板がある小さな店があった。ドアにかけられたプレートには『OPEN』の文字。


「行ってみるか?」

「うん」


 残念ながら僕には地図の良し悪しは理解できないので、買えるところで買ってしまおう。そう思って僕たちは店の中に入った。


「ああ、お客さん?悪いけどうちには地図は品切れだよ」

「えー?!」

「無駄足かよ……」


 申し訳なく頭を下げる店員さんを見て、僕は何か他の理由がある気がした。


「あの~」

「なんだい?」

「何かあったんじゃないんですか?」


 そう言うと、店員さんは目を見開いて頭をかき、『嬢ちゃんは勘が良いなぁ』とこぼした。


「うちは、というよりドラッドの店のほとんどはイデア公国を経由して地図を輸入してるんだけどね。最近そのルートに魔物が現れて事実上その道は閉鎖状態。当然隣国を行き来する業者が魔物を倒すような傭兵を雇っているワケでもないし、業者が来なくなったことで地図も入荷できなくなっちまったんだ。地図を売りたくても入ってこないんじゃ仕方ないしなぁ……」

「イデア公国って……」

「財閥が買い取ったおっきな国よね?」

「そうさ。今となっては実質トゥルーの頂点に君臨してるに違いねぇや」

「それなら行くべきだよね!」

「なら……」

「魔物退治?」


 首をかしげていうアスカに僕はうなずく。アスカは顔をしかめていたが、こうなることは占いがなくとも予測できていただろう。


「ちょ、嬢ちゃんたち本気か?!」

「大丈夫です。だって……」


『僕の本業は魔物退治ですから!』


「……はあ」


 あ、絶対信用してない目だ。


「じゃあ、とりあえずドラッドとイデアを結ぶ道を行こう」

「それならアスカの飛行魔法が早いんじゃない?」

「馬鹿言わないで。てか、低空飛行なら多分ライトが走った方が早いわよ」

「お前ら、店で騒ぐな。早く出発するぞ」


 最後に見た店員さんの顔は目が点になっていて中々笑えた。


 ドラッドとイデアを結ぶ道に向かおうとした時だった。急にライトが襟首をつかんできて、僕は一瞬息がつまりむせてしまった。


「げほっ!いきなりそんなことしないでよ!」

「待てよ」

「ライトのせいですでに立ち止まってるじゃん」

「……魔物は俺1人に任せろ」

「え?!」


 いきなり何を言い出すかと思えば。コイツは魔物がどんな物なのかわかってないんじゃないか?……いや、確かエーデでは子どもの頃からそういう教育をしているハズだ。突然の発言に1番良い顔をしなかったのは、もちろん普段から国民を守ってきたシアンだった。


「ライト、バカなことを言うんじゃない。魔物が何体いるか、どんなヤツかもわからないんだ」

「黙りな……いつまでコイツに負けた弱っちぃヤツって思われるのは癪なんだよ。俺1人でやって強いってこと、証明してやる」

「おっまっえっは……!何でそんなチームプレーを乱すような発言ばっかりするんだ!」

「おっ、やる気か?」


 シアンは青筋をたて剣に手を当て、ライトはそれを見て楽しそうに構え始める。……ああ、この2人は水と油だな。誰だコイツら一緒にしたの。……僕か。喧嘩の臭いを嗅ぎ付け、物見遊山に人が集まってくる。あの、そんなに近付くと飛ばされかねないんですけど……。


「ふ、2人共喧嘩はダメだよ!」

「大丈夫だ、マコ。これは喧嘩ではない。……ちょっと懲らしめるだけだ」

「言ってくれるじゃねーか。返り討ちにしてやんよ!」

「もうっ、2人共……!」

「……」


『闇よ、我に応えて使者を導き、この者たちの動きを止めたまえ』


 アスカがそう唱えると、地面から真っ黒な何かが出てきてライトとシアンを拘束した。よく見ればそれは目が銀色の黒い蛇だった。アスカはため息を吐くと、


「あのさ、アンタらが喧嘩したら建物壊れんの確実。周りの人が迷惑。そんなこともわかんないの?」

「あ、アスカは喧嘩は止めてほしいんだよ!」

「私はコイツが単独プレーをしないと誓えば何もしない」

「なら、ライトが……」

「ざっけんな。誰が自分の国の騎士団長だからってお前の言うこと聞くか」

「なっ……!」

「――ああ、もう!ほらほら沸点低いのはシアンの唯一の欠点だよ。抑えて抑えて。ライトももう十分強いってわかってるから落ち着いて。アスカは止めてくれたのはお礼言うけど煽らないで。マコもほら、泣かないで?」


 なんてややこしいメンバーなんだ。特にアスカとライトは反省する気0かよ。いや、確かにアスカは最初から悪いことはしてないんだけれども。と、アスカは水晶から珍しく飛び降りた。そして水晶に手を当て、何か唱え始める。……もう何回もお世話になってる光景。『占い』を始めたのだ。水晶は次第に光を帯びていく。


「……そう……なるほど……」


 しばらくすると光は消え、アスカはまた水晶の上に飛び乗った。


「アスカ、何を占ったの?」

「ドラッドとイデア間にいる魔物の種族と個体数。……調べた限りこれはライト向けかもしれない」

「どういうこと?」

「呪文が効きにくい。私なら大丈夫だけど……シアンとセリの魔法は厳しそう。……まあ、2人はそれぞれ武器があるからいいんだけどさ。個体数は5」

「大きさと階級は?」


 階級とは魔物のレベルを人間に及ぼす被害を想定して分類したものだ。シアンの言葉にアスカは笑って、


「それは知らないっていうのも一興じゃない?それにあんまり私に頼ってばっかっていうのもよくないわ」


 確かに、いつもアスカに頼ってばっかにしていたら、不測の事態が起きた時に対処できない。そこはシアンも納得したらしく、軽くうなずき、


「どうしよう、か……。5人で行ったら手っ取り早いと思うんだが……」

「……いや、ここはライトに任せよう」

「よっしゃあ!」

「セ、セリ!?」


 ガッツポーズをするライトと、正気かと言うように目を見開くシアン。


「どうせライトはたとえ手強い敵だろうが大人数だろうが曲げないよ。それなら僕たちで先に宿でもとっとこうよ。もし、マコの出番があるなら食材も買わなきゃだし」

「セリ……いいの?」

「大丈夫だよ。アスカの占いもあるし、ライトは強いから。ただし!1時間帰ってこなかったら何かあったとみなして僕たちも行くよ。そこは聞き入れてよね?」

「わかったよ。まあ、数十秒で終わらせてやるからお前らの出番なんてないけどな!」

「……じゃあ」


 アスカはライトの腕に手を置くと、何やら唱え始めた。ライトの腕に紋章のようなものが浮かび始める。


「これは……」

「ここに私の転移魔法の2回分を閉じ込めた。ここに手を置いて1回目に『ワープ』って言ったら魔物のいるところへ、2回目は私たちのところへ帰ってくるようにしたから」


 魔法ってこんなこともできるのか……思わず感心してしまう。確かにこれなら待ち合わせ場所で中々会えない、なんてことにならなくて済む。それにいざとなったらライトが逃げてくることもできるし。……まあ、どんなにピンチになっても逃げなさそうだけど。


「おっしゃあ、じゃあ行ってくるな!」

「だから『ワープ』で行けるんだけど……」

「わ、わかってるから!……ワープ!」


 そう言うと、ライトは光に包まれて消えた。


「着いた、のか?」


 アスカの魔法で転送された先は森の小道みたいなところだった。でもちゃんときれいに舗装されていて、ここら辺りの貿易がこの道に支えられていることが伺える。


「ちゃっちゃと片付けねーとな!」


 どこに魔物がいるのかわからないが、間違いなくいるハズだ。俺はとりあえず真っ直ぐ道沿いに歩いていく。と。


「助けてくれえぇぇぇぇ!」


 ――若い男の声がした。声の大きさからしておそらくいるのはこの曲がり道を曲がった突き当たりくらいだ。


「……くそっ!」


 間に合ってくれよ、と心の中で呟いて全速力で走り出す。道を曲がれば――ビンゴ。5体の黒に近い藍色の体毛で目は金色の熊のような魔物が、リアカーを引いたおそらく商人らしき若い男を取り囲んでいた。幸いまだ手は出されておらず無傷だが、着々と魔物と男の距離は詰められていく。……とりあえずアイツをどうにかしないと。ほっぽってさっさと暴れて退治してもいいけど、そのせいでアイツが怪我でもしたら、きっとセリやらシアンやらが文句言うに違いないんだ。それならさっさと助けて、思いっきり暴れるのが得策だ。


「うおぉぉぉぉ!」


 跳び上がって、魔物の頭に踵落としを決め込む。ラッキーなことに魔物の足は地面にめり込み、予想通り、魔物たちは動揺した。こういうグループタイプは助け合いの意識が強いから、どれか1匹決めて先手をかければ相手を動揺させられる……って教えてくれたのは皮肉にも猫耳女なんだけど。教えてもらうのはスゴい癪だが、こっちは対人間戦しかやったことがなかったから仕方がなかった。まあ、俺も頭を使おうと思えば使えるってワケだ。流石俺。そして中央に飛び込む。


「ば、バカな……5メートルも跳び上がって……人間業じゃ……」

「失礼だな……俺は人間だっつーの」

「おわっ?!」


 俺は男をリアカーにドンと突き落とすと、そのリアカーを担ぎ上げ、茂みにまで移動させた。


「こっから出てくんなよ!ぜってぇな。いいな?」

「あ、ああ……」

「よしっ」


 俺は茂みから外れ、再び道に戻る。魔物も無事地面から脱出できたらしく、俺を見つけると、一斉にこちらを向いてきた。


「ヴオォォォォォ!」

「はっ。お前らなんか新兵器どころか本気出すまでもねーなっ!」


 1匹1匹なんてそんなちっちぇ倒し方してやんねー。……1発で決めてやる!


 そんな俺の意図を露知らず、魔物が一斉に俺に向かって腕を下ろしてきた――今!


「――『旋風』」


 回し蹴りでくるりと一周すれば。

 一気に魔物が倒れ、文字通り一蹴されたのであった。


「よっしゃあ!」


 とりあえずガッツポーズをしたが、なんか手応えが足りない気がする。……もしかしてコイツらまだ死んでないんじゃ……?


「大丈夫、みんな死んでる」

「っ?!」


 ビックリした。……気配に気づけなかったことに。コイツ……ただもんじゃない。白髪に白い肌、白い服。目だけが黒く映えていてまるで幽霊みたいだ。それに、


「何でお前、俺の考えてることがわかったんだ?」

「……気付いてないかもしれないが、お前は自分が思っているよりも思っていることが顔に出てるぞ。気を付けた方がいい」


 男は俺のとなりまで来るとしゃがみこみ、地面に手をついた。そして、一言。


「――還れ」


 瞬間。魔物たちは白い光に包まれて、まるで成仏したかのように消えてしまった。残ったのは道路に魔物の足がめり込んだ跡と、俺と、……この男。てか、今コイツ『かえれ』って言ったよな?もしかして――!俺は男の腕をつかむ。


「どうした?」

「どうした?じゃねえよ。今、お前が『かえれ』って言ったら魔物が消えた。お前……魔物で何か悪いことやってんじゃねーの?」


 そう言うと、男はフッと笑う。何が可笑しいんだよ!顔を殴りたくなるのを何とか抑え、代わりに思いっきり睨み付けてやる。


「中々いい推理だ。――だが、俺は残念ながらアイツらを操るなどという大層な力は持っていない。強いていうなら……同類と言ったところか」

「お前も魔物なのか?」

「それもまた違う」

「じゃあお前は何者なんだよっ!」


 胸ぐらをつかんでも、男はまったく動揺しない。こんだけ動揺されないと腹が立ってくる。いや、元から腹立ってんだけど……。


「……ここは俺の居場所から遠い。ゆえに力が届きにくい」

「はあ?」

「『暴君』――ライト。魔法なしであれを一蹴するのは称賛に値する。いいものを見せてもらった代わりに俺の名前を教えてやる――」


 ――何かさっきからコイツの体が軽くなってきた気がする。何だよ、コイツマジで……。


「俺の名前は東雲。また会おう――『暴君』。今度は他の者も連れてこい」


 幽霊みたいじゃねぇか。


 そう思った瞬間、男……東雲の体は透けて消えてしまった。――まるで俺の見たものが全部幻かと言うように。


 と、茂みがガサガサ揺れたと思って振り向けば、さっき助けた商人だった。コイツの気配には気付くのに……ますますさっきの東雲ってヤツが謎な人物になっていく。


「先ほどは助けていただいてありがとうございます。私はイデア公国の商人でして、ドラッドの品不足を聞くのが耐えられず、危険を承知で来たものの……あなたがいなければ危ないところでした」

「いや、怪我がなくてよかった。……ところで、このめり込んだヤツどうしたらいいと思う?」


 正直、賠償とかはゴメンだ、てか、絶対怒られる。男は、人の良さそうな笑みを浮かべて、


「それは心配ないと思います。私が招いたとはいえ、さすがにこの騒ぎ。双方の軍が重い腰を上げるハズです。道路は修復してくれるでしょう」

「軍なのに腰が重いって変わってるな」


 エーデも隣接してる国がトゥルーだけなあって平和ボケな節があったが、それでも魔物が来たら軍(あっちでは騎士団)がすぐに駆けつけてきてくれるのに。


「恥ずかしながら、良くも悪くも平和な国でして。それに、大抵腕のいい旅人が魔物が出た場合追い払ってくれるので、政府の者もそれに任せっきりなんです」

「で、今回のその旅人が俺だったワケだな」

「そういうことですね。何はともあれありがとうございました。お礼と言ってはなんですが、この中から目ぼしいものがありましたらどうぞ」

「いいのか?!」

「お礼ですから」


 俺はリアカーを覗き込む。中身はいわゆる日曜雑貨と言うヤツで、残念ながら腹の足しになるようなものはなかった。と、リアカーの中でも大半を占めている巻物が気になった。


「なあ、この巻物何なんだ?」

「巻物?……ああ、地図ですね」

「地図?!本物!?」

「もちろんです。なんなら中を見てみてください。そこのボタンに引っ掛かっている紐をとれば開きますから」


 開いてみるとなるほど、確かに地図だった。左端にあるエーデとトゥルーはわかるが、他のものはわからない。後でシアンにでも聞こう。俺は地図をまた丸めると、


「これ、もらっていいか?」

「ええ」

「ありがとな!……っと、帰りにはアスカの魔法使えるんだっけか?」


 俺は紋章に手を当て、


「『ワープ』!」


 と、叫べば俺は光に包まれた。


 結局。地図は見つかったものの品薄状態が深刻でとても手のつけられる値段ではなかったので諦めて、さっさと必要なものを買って宿に戻った。僕たちの泊まる宿は食事は出されないものの、キッチンの使用は自由だし、周りの治安もいいし、トイレとお風呂もある。ここにマコの料理も入るんだから得しかないだろうということでこの宿に決定した。マコはやっと自分が役に立つのが嬉しいのか、張り切ってキッチンに立って夕食を作っている。その隣にはアスカ。火を起こすには魔法で起こすか薪を割るしかない。そして、マコのお願いもありアスカが火起こし係となった。最初こそ少し文句を言ってたものの、2人にとってはアスカが火起こし係になるのは暗黙のルールらしく、今ではアスカも水晶玉の上で火を起こしながら鍋を見張っている。それをボーッと眺めてライトの帰りを待っているのが僕とシアンだった。


「いつも思ってるんだが……あの2人は仲良いな」

「ホントに。僕、マコにあんな仲の良い子いるって知らなかったよ」

「セリはマコの店のお得意さんじゃなかったのか?」

「まあ、そうだけど。友達以上親友未満って感じだったからさ」


 だから最初、何でマコがこんな危険な旅についてきてくれたのか内心疑問に思ったほどだ。もしかしたら……マコはこの旅を利用してアスカを外に連れ出したかったのかもしれないな。


「アスカ、野菜どう?」

「もうちょっとでいける、気がする」

「もう、そんなんじゃいけるのかいけないのかわかんないよ!」

「じゃあいけるってことで」

「もう……」


 そう言いつつも、マコはさっき切った肉を入れていく。2人の信頼の深さの現れというものの、言動が反対で僕とシアンは思わず笑みをこぼす。と、いきなり僕の前に人が現れ光が溢れ出す。そこから出てきたのは――。


「よっ、ただいま!」

「ライト!?」

「あら、随分早いお帰りね」

「何だよ?地図まで持って帰ってきてやったのに文句あっか?」

「ち、地図?!」

「とりあえず何があったんだ?」

「あの……みんな。シチューできたから食べながら報告にしない?シチュー冷めちゃうし、お腹すいてるでしょ?」


 マコの発言に異論を唱える者はいなかった。


「「いただきまーす!」」

「おぉっ、うめぇっ!」

「がっつくなよ、もう」


 確かにがっつきたくなるほど美味しいけどさ。好評にニコニコ満足そうにマコは笑って、


「お代わりあるけどみんな食べたいだろうから1杯までね」


 と言う。


「ところで、ライト。何があったんだ?」

「そうそう。それなんだけどさ……」


 ライトは5匹の魔物を蹴り1発で倒したこと(ここだけ描写がやたら丁寧だった)、若い男の商人を助けて地図はその人からお礼としてもらったこと、そして――東雲と名乗る不気味な人物に会ったことを話した。


「東雲、か……」

「なぜか俺の名前知ってるし、俺に仲間がいることも知ってそうだったし。しまいには幽霊みたいに消えちまうし……」

「私は魔物が彼の言葉によって消えたのが気になるな」

「……古来より言葉には力がある。呪文みたいに、ね。東雲って人は言霊使いなのかも」

「力が届きにくい?って言ったんだよね?遠くにいる人なのかな?」

「……どちらにせよ、ライトに危害を加えなかったんだ。私たちにも害はないだろう。とりあえずこの件は保留だ。私たちの目的は世界の果てに行くことなんだから」


 そこでみんなの顔が深刻なものから、明るいものになった。さすが元騎士団長。集団のコントロールはお手の物ってワケか。


「そうだね。……さて、それよりも大事な問題なんだけど……ライト、地図貸して」

「ほいっ」

「わっ?!ちょ、地図投げないでよ!シチューの上に落ちたらどうするつもり?」


 そう言いつつも地図を広げる。


「ここが今いるトゥルー連邦。そこはわかるよね?」

「うん」

「で、問題はこことここなんだよ」

「トゥルー連邦と……仁国の間?」


 仁国とは、ポツンと浮かぶ島国で特有の文化が発展している。彼らは『ワフク』という民族衣装を着て、仏教というものを信仰してるという。


「ここね、貿易船しか出てないの」

「頼み込んで、貿易船に乗せてもらえば?」

「それが……唯一の港があるコウ国がそれを禁止してるんだって。行くなら密航しかない、って」

「……何でそんなめんどくさいことになってるの?貿易船であれ、国の交流はあるんでしょ?」

「さすがアスカ、勘良いね。それは……この地が原因なんだ」


 僕は仁国から海を挟んでさらに東にある大陸を指差した。そこには3つの国があり、上の2つの国の国境に剣を交差したマークが描かれている。


「ここは……〈ノットエンド・バトルフィールド〉、通称NBF。ここでは昔メカズムとメルヘニアという2つの国が思想の相違から戦争を起こして、以後1度も戦いが止まったことがない悪魔の地だ」

「私たちは……ここに行くの?」

「そう言うことになるね」

「なら……船がいるってことになるわね」


 暗い空気を振り払うように凛として言い放ったのはアスカだった。


「そういうこと。……まあ、未知の土地のことをうじうじ考えても仕方ないよ。こっちは仁国に着いてからでも考えよう」

「で、船なんかどこで作るんだ?」

「作るんじゃない……貰うんだ」

「貰う?」

「イデア公国……で難題でまだ誰も成功したことがない王様からのお布施があるんだってさ。で、それを成功した報酬は……『その者の望むもの』」

「その時船をお願いすれば……」

「ま、そういうこと!」


 船のこととかNBFとか問題は山積みだけど、とりあえず今はできることに全力でぶつかって行くだけだ。


「じゃあ明日はライトが魔物を退治してくれたことだし、イデアに行こう。隣国だから1時間程度で着く」

「……よしっ!明日のこと決まったし早くご飯食べよ!」

「マコ、お代わり!」

「あー!僕が先予約したのに!」

「相変わらず騒がしい……」

「ふふっ、お代わりは逃げやしないよ~」


 僕たちは僕たちのペースで歩いていけばいい。そうすればきっと……希望に続くハズだから。


〈続〉

道程:【トゥルー連邦】ドラッド国→

〈ライト〉森の小道→宿

〈その他4人〉商店街→宿

パーティー:セリ、シアン、マコ、アスカ、ライト

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