コブシトコブシ
【パーティー】セリ、シアン、マコ、アスカ
【現在地】イルミスの町
「ついー!……た?」
僕は最初こそ町にたどり着いた喜びに万歳をするほど喜んでいたのだが、すぐに首をかしげた。他のメンバーも顔をしかめていたり、キョロキョロしたりしている。当然の反応だと僕は思った。
「ねえ、シアン。ここって本当に武道の道場が軒を連ねる場所なの?」
「そう聞いていた。城下町からアルノに行くときにここを通ったが、確かにそのときは血気盛んな者が多く、私でも戦闘を申し込まれたほどだ」
真剣じゃなくても木刀を扱う武術なら山ほどあるからな、とシアンは補足のように呟いた。だが、今僕たちの目の前にはそんな光景は広がっていない。道は気味が悪いくらいに人気がなかった。
「セリ。動揺するのもわかるがとりあえず宿を探そう。情報ならそこの主人にでも聞けばいい」
「そう、だね」
でも、視界に移るのは道場と思われる木造建築ばかりで、宿と思われる場所は1つも見当たらなかった。
「どうしよう……」
「シアンはここに来た時、どこで一泊したの?」
マコが問いかければ、シアンはばつの悪そうに頬をかき、
「いや、ある道場で勝ったら一泊させてくれると言われてな……」
「そこでお世話になったのね」
「まあ、そういうことだ」
「でも、それならどうするの?看板掛かってるところが道場のハズなのに、ここら一帯、看板のかかっている建物なんて1つもないわよ」
「看板の掛かっている建物が、ない……?」
アスカの言葉に僕はますます違和感を覚えた。そう、おかしいのだ。なんで建物自体はすべて残っているのに看板だけがなくなり、こんなにひっそりとしているのか?これが建物も跡形もなく消えていれば魔物に襲われたなどの納得のいく理由が見つかる。しかし、建物自体が傷ついているところなどまったくなかった。
「もしかしたら……道場破り?」
「アスカ、道場破りって?」
「なんていうか……ある人がその道場の一番強い人に勝負を挑んで勝ったらその道場を乗っ取れる、といったところかしら。負けた道場は当然看板を下ろさなければならない」
「なるほど。ここに片っぱしから道場破りをしている者がいるってことだな」
「今もここにいるとは限らないけど。この様子だと全部片してるかも……」
「!みんな見て!」
マコの喜色を含んだ声につられて、僕たちはそっちの方を見れば、看板が掛かり、明かりの灯っている建物があった。かろうじてかそうじゃないかはわからないが、おそらくこの町で生き残っている唯一の道場かもしれない。
「今日はここに泊めてもらおうよ!」
「別にいいけど……どうせ戦わなくちゃいけないんでしょ?誰がするの?」
「まあ、普通は僕かシアンだね。シアン、看板にはなんって?」
「……これはアスカの方が向いてるかもしれないぞ?」
「はあ!?なんで私が?!」
「看板をよく見ろ」
シアンの指差した看板には確かに、
『闇魔道派ダーカー』
と書いてある。
「魔道なんか武術じゃないし、そうやって練習するもんじゃないわよ……」
アスカは悪態を込めた皮肉を言っていた。
「それならセリでもいいじゃない?さっき闇魔法使ってたじゃない!」
「いやあ、僕はまだ半人前だから……ね?」
「それにここで泊まれなかったら今日は野宿だぞ。それでもいいのか?」
「アスカー、頼むよー」
「……ああ、もう!わかったわよ!やればいいんでしょ!」
半ば自暴自棄になって入って行くアスカを僕たちが慌てて追いかけた。
「……で、師範に勝ちましたら道場破りの代わりにここにいる間は泊めてほしい、と?」
「そんなところです。あと、何でイルミスがこんな感じになってるか情報提供を」
「はははっ、『暴君』の名はさすがにまだイルミスにしか知られていないんですか。いいでしょう。……ただし唯一『暴君』の手から逃れたこの道場に勝つことができれば、ですが」
どうやら予想通り残っているのはこの道場だけらしい。アスカはなめられたと感じたからか、さっきのやる気0な様子を一変させて、
「ふ~ん、で試合形式は?」
「うちは闇魔道専門ですから使う魔法は闇属性のみ。先に降参と言った方が負け、ということでどうでしょう?」
「面白そうじゃない」
アスカの顔が不敵に笑ったのに気づいたのは僕たちだけだった。
体格差的には圧倒的に不利だ。しかし、ここは珍しく魔道……ぶっちゃけてしまうと魔法を鍛える道場。そんなところでアスカは負けるハズがない。問題は元より希少な闇属性の魔法が使えるかどうかだが、アスカのあの様子を見れば問題なさそうだった。
「では……始めっ!」
黒い服を身に纏った門下生がこれまた黒い旗をあげ、試合開始が告げられる。すぐさま師範は呪文をぶつぶつ唱え始める。だが、アスカは、
「ねー、セリ。これって無詠唱でもいいの?聞くの忘れたんだけど」
「さぁ……いいんじゃない?実力だし。でも闇魔法で無詠唱だなんて……」
おそらくセリはこの後『僕聞いたこともないよ』とでも続けたかったんだろう。しかし、目の前の光景によってそれは阻まれた。
「じゃあ……」
一瞬だった。アスカはさっきセリが召喚したような闇の穴を師範の足元に出した。しかも、あの時の雷と同じく無詠唱で。
「あっ、あれ僕の魔法!」
「くっ……」
師範はやむを得ず、と言いたげに顔をしかめて詠唱を止め、代わりに小さく呟くとアスカの召還した穴は何事もなかったかのように霧散した。
「へえ、一言で打ち消すなんてさすが師範ね」
「あなたこそ……まさか中級魔法を無詠唱で出すとは」
お互いの力量がそれなりにあると知って、2人とも嬉しそうに、不敵に、顔を緩ませる。
「アスカ、頑張れー!」
「じゃあ、次は上級ねー」
まだ余裕たっぷりなアスカはそう言うと今度は周りに黒い玉のようなものを浮かび上がらせる。大砲の弾のような大きさから小銃の弾のようなものまで、様々なものがある。
「これもまた無詠唱!?」
「まあ、これくらいならねー。これ以上だと『闇ー』くらいなら言わなくちゃいけないかもしれないけど」
「素晴らしく端折った魔法だね?!」
こんなに普通に会話を続けながら上級の魔法を出すなんて、やはりアスカはただの占いがよく当たる魔法使い、というワケではなさそうだ。
「上級まで無詠唱で出すとは……」
師範は苦しそうに顔を歪める。無理もない。私もこんなにスムーズに次々と召喚される魔法は初めて見た。悔しいが、魔法の腕はパーティーの中ではアスカが堂々の第一位だろう。
「よし、いけ」
アスカが命令すれば、闇の玉は師範に向かって一斉に飛んでいく。どう考えても避けられるものではない、が。
「ですが、私も何も用意してなかったワケではないですよ?……闇よ、出で来る敵を飲み込め!」
「ちっ、打ち消し……」
師範が出した沼のようなものが黒い玉を飲み込んでいく。アスカもこれは想定外だったのか、思いっきり顔を歪ませた。
「さあ、次は私から――」
「しょうがないなぁ……『闇ー』」
瞬間、黒い稲妻が師範の上から落ち、威力のせいか、師範は気絶してしまった。ピクピク痙攣して動かない。あまりの無慈悲さに顔をひきつらせる。マコは何度かこういう光景を見たことがあるのか、苦笑いを浮かべていた。
「い、今のは……」
「別に、ただの闇属性と雷属性の融合魔法じゃない」
「それはただで済ませられるレベルじゃないぞ……」
私だって知っている。融合魔法とは同じ属性の魔法をほぼ1対1で出す必要があり、かなり繊細なコントロールとセンスを要する。そんな魔法をほぼ無詠唱の状態で出してしまうなんて……ホントにコイツはただの魔法使いではない。
「で、どうするの?気絶したら降参?」
アスカに問われた審判をやっていた門下生は萎縮しながらもおずおずとうなずき、師範の方に白旗を上げる。
「先頭不能により、門下生ザハが降参を宣言。よって勝者はアスカ!」
「やったね、アスカ!」
「はあ……疲れた」
アスカは気だるげに呟くのだった。
「あははは、まさかこんなお嬢さんに負けてしまうとは……うちもまだまだですな!」
「それよりお怪我は大丈夫ですか?」
「弟子に処置はしてもらいましたし、戦いに怪我は付き物ですから。まあ、融合魔法が出てくるとは思ってませんでしたが」
「そんなに難しい魔法なの?アスカ結構ああいうの使ってるよ?」
キョトンとした顔でマコがそう言うとみんなの表情が固まった。当の本人であるアスカはまったく気にせず夕食を食べていた。固まったみんなを見て、マコはアスカの服の袖を引っ張る。
「ちょっと、アスカ!『あんなの普通』とか言ってた癖に実は全然そんなことないんじゃないの!?」
「いや、私は普通って思ってたけどさ……。どうも違うって今日初めて気づいた」
「無自覚で使えるってことは……血統によるものか?」
「さあ、知らない」
はぐらかすようにアスカは淡々と答える。
「それよりも聞かなくちゃいけないことがあるんじゃないの?」
「ああ、そうだった!師範さん!さっきの『暴君』って誰のことですか?」
「師範、じゃなくてシャトで結構です。……そうですね、お話ししましょう」
師範――シャトさんは話し始めた。
それはつい3日ほど前のことです。肌の色が濃く、代わりのように髪の色が真っ白なあなた方と同い年くらいの少年がイルミスにやって来たのです。最初は皆どこかの門下生になるために来たものだと思っていましたが――彼は真っ先にこの町1番と言われる同情に行き、今からここを乗っ取ると堂々と宣言したのです。
「乗っ取る……つまり道場破りってことだな?」
「そうです」
誰もが彼のことを笑いました。いくら風貌が立派でも実力がともなわなければ意味がない。あんな少年に師範なんか倒せるワケがない、と思っていたのですが……。
「その勝負は外で行われていて、私も物見遊山で見に行っていたのです。――一瞬でした」
消えたと思ったら師範が倒れ、彼が再び現れた時にはもう気絶しておりました。
それからはもうみなさんがご覧になった通りです。彼は片っぱしから道場破りを行い、とうとう残ったのはここだけとなりました。不思議なことに、彼はここには来ようとしないのです。イルミスの町人はいつしか彼のことを『暴君』と呼ぶようになっていました。
シャトさんの話を聞いた後、シアンは息を吐いた。
「ソイツ……魔法を使えない可能性が極めて高いな」
「やはりシアンさんもそう思いますか。私もそう思っていたのです。いつまでたってもここだけには来ないというのは明らかに不自然ですから」
「武道にだけ才能がいっちゃって、魔法の方にはいかなかったんだろうね~」
「アスカと逆パターンってこと?」
「……そういうことじゃない。で、どうするの?」
マコに遠回しに運動ができないと言われて少しむすっとしたアスカが僕の方を向いて問いかけてきた。
「どうするって?」
「だって、正直な話イルミスなんて私たちの旅の中間地点。別に『暴君』なんてほったらかしにしといてもいいってワケ。……だからセリはどうするの?『暴君』を更正させるつもり?」
まあ、その時は絶対私はやらないけど。ため息を吐きながら言うが、きっと僕がどうしても、と言うならやってくれるんだろうな、と思う。まだ会ってからさほど経ってないが何となくアスカのことがわかってきた。僕は笑い、
「そんなの、退治しにいくに決まってるじゃん!元の元気なイルミスを取り戻さなくっちゃ!」
「いや、正式に勝っているのだから『暴君』は悪者ではないがな……」
「うん、そうだね!」
「やっぱこうなるかぁ……」
こうして僕たちは翌日『暴君』に会うことを決めた。
翌日。朝ご飯を食べ終わった後。僕たちは道場を後にしてまた人気のない通りを歩いていた。
「それにしても『暴君』ってどこにいるんだろうね?」
「……アスカ!」
「わかってるわよ、はぁ……」
アスカは水晶から飛び下り、その水晶を手に持った。――占いを始めるらしい。アスカいわく占いをするにはその結果を写す媒体が必要となるらしい。写せるものなら本でも紙でも何でもいいらしいが、本人は水晶が気に入ってるらしい。どれだけ高度な魔法を繰り出せるアスカでもこればっかりは水晶が必要なんだとか。ちなみにもし水晶を使って魔法を出した場合威力が1.5倍になるらしい。……もう想像もつかないが。
「でも顔も知らなくて、知ってるのは通り名と大体の風貌だけだから精度は下がるかなぁ……」
「ちなみに何パーくらい?」
「95パーくらいかな」
「そんだけあれば十分だよ!」
「わかった。……すべての命を司るものよ、我の命を受けてその命を持つものを示せ」
水晶が光り、水晶の中がグニャリと歪んだかと思うと、大きな道場の前にシャトさんが言ってた少年の姿と一致している人物が何やら稽古をしているようだった。
「よかった、成功」
「道場があるのに外で練習するんだね?」
「この道場は……町の中央にあった1番大きいヤツだな。この通りを真っ直ぐに行けば着く」
「よし、それなら行こう!」
しばらく歩くと大きな道場があり、確かに『暴君』がいた。
「『暴君』いたっ!」
僕が大きな声で言うと向こうは気づいたのかこっちを向いたが、その顔は思いっきりしかめっ面だ。
「はあ?俺の名前は『暴君』じゃなくてライトだよ!」
と、瞬間こっちに向かっていきなり殴りかかってきた。
「はえっ?!」
いきなりのことでガードできず、目を瞑っていたら、ガン!と良い音がしたものの僕に衝撃は訪れなかった。おそるおそる目を開けると、
「こ、これは……?」
「光の障壁魔法だ。アスカみたいにすんなり出せないから準備しといてよかった」
「ちっ、魔法かよ……」
『暴君』……ライトは悔しそうに後ろに下がる。どうやら本当に魔法は使えないらしい。
「いきなり襲ってくるなよ!……僕と勝負しろ!勝ったら今まで道場破りをしてきた道場の看板を元に戻せ!」
「……ふぅん、面白そうじゃん。やろうぜ。ルールは1本先取制。武器は好きに使っていいぜ。ただし魔法はなしな」
「君は?」
「俺?武器なんか持ってないし、そもそも使わねーよ」
「はあ?!」
武器を使わず戦ってきたなんて……一体コイツは何者なんだ。
「審判は私がしよう」
「とっとと始めるぞ!」
「望むところだ!」
僕は鉄球の取っ手を強く握った。
「では……始めっ!」
シアンが手を下ろした瞬間ライトはいきなり突っ込んでくる。僕はそれを横に流すと鉄球をライトの少し後ろに向けて飛ばす。それを見てライトは嘲笑する。
「はっ、どこを狙ってる」
「ちゃーんと狙ってるよ。……君をねっ!」
僕は素早く持ち手の方もまた返って来るように計算して投げる。そうすれば思い通り、ライトは持ち手と鉄球に繋がってるチェーンでぐるぐる巻きに拘束される格好となった。鉄球も上手い具合に重りの役目を果たしている。
「くっ……」
「とっとと行くよ!」
僕は鉄球から手を離し、一気にライトと距離を詰める、がそれは大きな間違いだった。
「うおおぉぉぉぉ!」
「うえっ?!」
ライトが大きな声を出したかと思ったら、自身の体を振り回し重りである鉄球をこちらへ飛ばしてきたのだ!僕は間一髪でそれを避ける。
「中々やるじゃねーか」
「それはこっちの台詞だね……!」
そもそもあんなに拘束されて鉄球という重りもあるというのに、勢いよく体を捻る力があるなんて……普通では考えられないことだ。せめてチェーンは壊さないでほしいなぁ、それ特注だから、なんて思っていると、ぶちぶちぶちっ、と不吉な音。
「へっ、こんな柔な拘束効かないっつーの!」
柔?これのどこが?それより……。
「ちょ、それ結構高いんだけどおぉぉぉぉ!?」
「そんなの武器を使ったお前の責任だろ」
「ふ、ざ、け、ん、なあぁぁぁ!」
僕は勢いよく足を降り下ろす。もはや力のセーブなんて考慮されていない足は地面を揺らした。
「きゃっ!?」
「せ、セリ!それ以上は……!」
「うぉっ?!」
「食らえ!金の恨みだあぁぁぁ!」
僕の右ストレートはきれいにライトの左頬に決まった。ふっ、金の恨みを思い知ったか……ああ、コイツのせいで依頼半月分の武器が……。
「何をぶつぶつ言ってるんだ!」
「あいてっ?!」
シアンから拳骨を食らった。痛いなあ、もう。
「痛いなあ、じゃないだろ!まったくお前は……」
「あ、あのー。大丈夫ですか~?」
「大丈夫、こういう時は雷を落とし」
「て良いワケないだろ!?お前らはコイツを殺したいのか?!」
シアンがぜえぜえと息を切らして声をあらげる。そしてライトの倒れてる方にしゃがみこむと、その手に白い光を宿した。――光魔法では初歩であり、1番メジャーである治癒魔法だ。これくらいならシアンも無詠唱でいけるらしい。
「……ん」
「気づいたか?うちの者が迷惑かけたな」
「えー、正々堂々と戦ったじゃん!」
「ソイツの……言う通りだ。俺の敗けだ、敗け!……お前らの名前は?」
「僕はセリ」
「私はシアンだ」
「マコです」
「アスカ」
「俺はライト。さっきは敗けた、けど」
「けど?」
「もう敗けねぇ!お前ら、噂になってる世界の果て目指してるやつらだろ?俺もつれてけ!」
「え」
『ええぇぇぇぇぇ?!』
「大丈夫、武道の腕ならお前らに負けねーよ」
「さっきセリに敗けてたよね?最後には武器なかったのに」
「こっ、細かいことは気にすんなオレンジ!」
「オレンジじゃなくてマコ!さっき自己紹介したばっかなのに……」
「で、どうするんだ?」
シアンが言うとみんな一斉に僕の方を見た。このパーティーのリーダーは僕。だから仲間に加えるかの判断も僕に委ねられているワケで。……ああ、なんでこんなことになっちゃったのかなぁ。王からの命令を受けたせいなのか、いらない事件に首を突っ込んじゃったからなのか、それとも……運命だったりして?なんかロマンチストっぽくて僕らしくないけど、なぜだかこのパーティーを見るとそう思えるんだ。
「もう、しょうがないなぁ。仲間ね」
「おっしゃあ!これでいつも再戦できるな!」
喜ぶポイントそこかよ!どうやらライトにとって世界の果ての人物に会うことはお菓子のおまけみたいなもののようだ。
「次はどこなの?」
「次は城下町……〈サイハテ〉だな。そこの門をくぐれば次の国……隣国のトゥルー連邦だ」
「ようやく旅らしくなってきたね!」
「ついでに王に謁見しにいこう。人数も増えたことだしな」
呆れの眼差しを向けてくるシアンに苦笑いするしかない。シアンが広げている地図をライトも覗き込んで、
「へぇ、結構道程長ぇんだなぁ」
「そうだよ。男1人だからって文句言わないでよ!」
「はあ?お前男だろ?」
「え、僕女ナンデスケド……」
「何言ってるんだよ、一人称僕だし、力強ぇし、何より……胸がない。声は高いけど」
「……!歯ぁ食い縛れやぁ!」
「おっ、おい、セリ落ち着け!」
ひっ、人が気にしてることをさらっとコイツは……!
イルミスの問題は解決されたものの、新しいメンバーによって僕たちの旅はまだまだ前途多難そうだった。
【パーティー】セリ、シアン、マコ、アスカ、ライト
【道程】【エーデ国】イルミスの町(ライト加入)→城下町〈サイハテ〉