第64話 ぴーちゃんとみーちゃんの脅威の回し蹴りと私の敗北
『うん、ここは完璧!! リア、ここ終わったよ!!』
『リア、こっちも終わったぜ!!』
「わかった!! いま、かくにんちてもらう!! えどうっどしゃん、むこ、おわったって」
「分かった。確認しよう」
あー君ときー君が掃除した場所の、確認をしに行くエドウッドさん。あお君としー君の地上絵からは、掃除は順調に進んで、食糧庫はかなり綺麗になってきたよ。
ピィ君とミッケのチラ見も止まって、私たちが担当している場所は、あと3分の1で終わりって感じかな。
「よち! つぎのばちょ、いどうしゅる!!」
『ぴぴっ!!』
『はいなんだじょ!!』
そうして、場所を移動しようとした私たち。そんな時、ぴーちゃんとみーちゃんの話し声が聞こえてきたんだ。
実は、組みで分かれたのは良いけど、なんだかんだと、組はごちゃごちゃになり、今はあー君たちは、3組に分かれて掃除をしているんだ。最初の組み分けの意味よ。
まぁ、本人たちが掃除しやすいなら、それで良いんだけどね。あー君とキー君、ぴーちゃんとみーちゃん、あお君としー君で組んでいるよ。
『ここの埃が気になるわね。ペッタンで綺麗にしましょう』
『そうね、それが良いわ』
『ペッタン、ペッタン。どうかしらね?』
『うん、良いんじゃないかしら。ただ……、なんかまたすぐに、ゴミが落ちそう』
『中途半端な隙間よね。こっちの荷物をきっちり寄せて置けば、隙間が埋まって。埃もチリもたまらないのに』
『私たちで動かしちゃいましょうか。もちろんエドウッドに確認してからね』
『そうしましょう。リン!! この荷物を動かしても良いか、エドウッドに聞いてくれる?』
『そうすれば隙間が埋まって、もうゴミが溜まらないと思うの』
「わかった!? えどうっどしゃん!!」
話を聞いていた私は、すぐにエドウッドさんを呼んだよ。
「何だ?」
「このにもちゅを、こっちにうごかちてもいいでしゅか? しゅきまをうめたいって。しょしゅれば、ごみたまらない」
「なるほど……。バーナビー、この荷物を動かしても良いか? 隙間を埋めて、ゴミが溜まらないようにしたいと言っているらしい。私もその方が良いと思うが、どうだろうか」
「なるほど……。ピッタリ置けと言っといたんじゃが。出来ていなかったようじゃな。これも後で伝えなければ。よし、ワシが動かそう。ワシが責任者じゃからの」
『あ、大丈夫って伝えて!』
『私たちなら余裕だから!』
「ん? よゆ? ばーなびーしゃん、ぴーちゃんとみーちゃん、だいじょぶって。よゆっていってる」
「よゆ? ああ、余裕か。……本当の余裕と言ったのか? もし、その場所を掃除しておるからと、その流れで無理に動かそうとしているのなら、そんな大変なことまでせんでも良いんじゃぞ。重いものはワシらに任せるんじゃ」
『別に無理なんかしてないわよ? ねぇ』
『ええ、これくらいなら別にね。軽々よ』
軽々? え? 私はそのままをバーナビーさんに伝える。そうしたら、バーナビーさんも、何とも言えない表情をしたよ。
だって、私の体半分くらいの、しかもどっさりとお野菜が入っている袋を、ぴーちゃんとみーちゃんは動かそうとしているんだよ?
もしかして見た目よりも軽いとか? いや、バーナビーさんは無理して運ばなくて良いって、重たい物は任せろって言ったんだから、軽いってことはないよね?
「ちょっとまちゅ。あたち、ちょっともってみてもい?」
『リアがやるの?』
『大丈夫かしら? 私たちは問題ないけど』
『リアだと、少しも動かないかも』
『怪我しないかしら?』
みんなよりも、私の方が体は大きいんだからね。……それくらいしかみんなに勝てるところがないんだから。魔法も物理攻撃もぜんぜんだし。重くても少しくらい動かせるよ。私を舐めるない!
袋の前へ歩いて行く私。そして袋の口部分を持ち、フンッ!! と気合を入れて、袋を持ち上げた。いや、うん、持ち上げようとしたんだよ。でも……。
「んぎぎぎぎぎぎー!!」
『ぴぴぴぴぴー!!』
『ぬぎぃぃぃぃぃぃーなんだじょ!!』
「んぎぎぎぎぎぎー!! ……ハァハァ」
『……リア、大丈夫?』
『……ね? 少しも動かないかもって言ったでしょう』
袋は1ミリも持ち上がらず、袋の口部分だけが、私が動かせた場所だった。まさか、1ミリも持てないなんて。いや、まだだ!! まだ、負けていない!!
私は、持ち上げるのを諦めて、今度は押してみることに。持ち上げるのは、私には難易度が高かっただけ。そう、押すのは誰だってできるはず。そう、押しだよ押し。
私はしっかりと袋の横に立つと、袋に手をつく。そして……。
『ぴぴぴぴぴー!!』
『ぬぎぃぃぃぃぃぃーなんだじょ!!』
「んぎぎぎぎぎぎー!! ……ハァハァ」
『……』
『……』
「ハァハァ」
『……リア、大丈夫?』
『……ね? 少しも動かないかもって言ったでしょう』
……ごめんなさい。自分の力を自分の力を見誤ってました。押す方も、1ミリも動きませんでした。
その場にガクッと膝をつく私。そんな私の横にピィ君とミッケが来てくれて、私の肩に足と手を置き慰めてくれる。
『ぴぴぴ……』
『やっぱり無理だったんだじょ。でも、気にしないんだじょ。きっとリアにもできることがあるんだじょ』
くっ、こんな慰められ方をするとは……!!
『リア、無理しちゃダメよ』
『体や手は大丈夫? もし痛めたとか、体が重い感じがするとかするなら、すぐ治すわよ』
「だ、だいじょぶ」
『そう?』
『じゃあ、私たちはサッサとやっちゃいましょうか。じゃないと、せっかく綺麗にしたのに、また埃やチリが落ちてくるわ』
『そうね。リア、見ていて、こうやるのよ』
ぴーちゃんとみーちゃんが、袋の横に飛んで行って並んだよ。そして……。
『フンッ!!』
『ハッ!!』
バシーンッ!! バコーンッ!!
凄い音がして、バシューッと重い袋が動き、隣の袋にピッタリとくっ付いた。そしてすぐに、隙間を確認するぴーちゃんとみーちゃん。そんな2人をじっと見るピィ君、ミッケ、あー君たち。音に反応してエドウッドさんとアリシアさんもこっちを見る。
『うん、良い感じね』
『これでゴミ問題は解決ね』
『ぴ……』
『なんだじょ……』
『うん、まぁ、いつも通りか……』
『そうだな……』
『……僕は見なかった』
『袋、破れたんじゃない? ……ぼく知らない』
『僕、掃除してるところ、もう少しで終わる」
『ぼくももう少し』
『だけど、向こうが残ってる』
『うん。残ってるね』
『ここは危険。早く終わらせて離れる』
『だね、急ごう』
それぞれ感想を言って、私とぴーちゃんとみーちゃんの周りから離れて行くみんな。まぁ、今のを見ちゃったらね。というか、そんなに小さな体のどこに、あんな力が?
『ハハハッ、確かにこれはワシの出番はなさそうだな。ぴー、みー、ありがとう』
『良いのよ!』
『また何かあれば、私たちが動かすわね!』
「いまの、まわちげり?」
『ええ、そうよ』
『私たちの得意技。音がそれぞれ1回ずつしか聞こえなかったでしょう?』
『でも、1回転じゃなく2回転の回し蹴りをしているのよ。こう素早くね』
クルリと回るぴーちゃんとみーちゃん。
『今ので2回転しているのよ』
え? 普通に1回転にしか見えなかったけど。
『練習してたら、できるようになったのよ』
『だから2回の回し蹴りだけど、早く回転するから音は1回に聞こえるの』
「あ、しょなんだ……。しゅごいね……」
『そうそう、袋を一応確認して……と、破れてないわね』
『それじゃあ、ここの掃除は終わりね。次へ行きましょう』
ぴーちゃんとみーちゃんがそう言いながら、あー君たちたちの方へ飛んでいく。するとなんとなく、2人を避けるあー君たち。
うん、まぁ、なんだろう。いろいろと、練習で出来るようになるものなの? とか。それにしたって魔法を使わないで、あれだけの力を出せるの? とか。小さいのに? とかさ。突っ込みたいところがあるけど。
気にするなってことだな。あー君たちも、さっきの言葉以外、何も言ってないし。うん、そのままにしておこう。
そのあと私たちは、このことに一切触れず、最後までしっかりと掃除をすることになったよ。あー君たち、取っ組み合いの喧嘩をしていたけど、よく無事だったな……。




