第62話 相変わらず一筋縄ではいかない掃除とマイペースな2人
『僕たちは、ここから始めようか』
『俺たちは、ここからにしようぜ』
『何、指示してんのよ』
『私が指示を出すわよ』
『誰でもいい。ぼくはここからやる』
『うん、誰でも良いよね。ぼくはこっちからやろうかな』
『僕が指示出すよ。慣れてるんだから』
『俺が指示出した方が、綺麗に掃除できるだろう』
『私の方が慣れてるわよ』
『私の方が綺麗にできるわよ』
『ペタ……うん、綺麗に取れる』
『ペタ……うん、良い感じに取れる』
……何をしているのさ。今さっき、さぁ、みんな、掃除開始だよ!! おー!! ってやってたじゃん。誰が、どこから掃除しても良いでしょうに。ほら、いつもマイペースな、あお君としー君は、もう掃除を始めているよ……て。だから、掴み合いの喧嘩をしない。
私専用の箒を手にし、ピィ君とミッケも、それぞれ必要と思われる掃除道具を持って、いざ掃除を始めようとしたら。あー君とぴーちゃん、きー君とみーちゃんが、どちらが指示を出すかで、取っ組み合いの喧嘩を始めたんだ。
この間、喧嘩するなって注意したばかりなのに。まったく、何をしてるんだか。私はピィ君たちに、ちょっと待っていてと言い、まずはあー君とぴーちゃんを掴み、そのままきー君とみーちゃんの方へ行って、2人の間に割って入り、無事に全員を止めることに成功したよ。
そして、ペタ洋服のおかげで、手にくっ付いたあー君とぴーちゃんを、ぺっぺっと手を払い離して、お説教を始める。ただ。今は掃除の時間、簡潔に終わらせなくちゃ。
「なんで、けんかしゅるの! このまえ、ちゅういちたばかりでちょ!!」
『あ……』
『えっと……』
『だって俺が指示するのにさ……』
『前から言ってるけど、私の方が絶対指示が上手よ』
『ごろ、ぺた、ごろ、ぺた。……うん、良い』
『ぺたぺた……、うん、シーのやり方が良いかも。ごろぺた、ごろぺた』
「ちゅういちたこと、またやるのはだめでちょ。しょれいに、いまは、しょうじのじかん。もち、しょうじちないで、けんかしゅるなら、あたらちいおしょうじどぐも、まえにもらったのも、ぜんぶぼっしゅうしゅるから! あたらちいのも、もう、ちゅくってもらわない!」
『わわわ! ごめんなさい!!』
『もう喧嘩しないわ!!』
『ごめんごめん!!』
『ごめんなさい!!』
「リア、どうしたんだ」
エドウッドさんが私に聞いてきたから、あー君たちのことを伝えたよ。
「なるほど、今の動きはそれだったのか。確かに、注意されたことをまたやるのは、理解しようとしない、それでいて文句ばかりいう、役に立たない者たちがやることだ。私の掃除班にも以前、数人そういった者たちがいた。何度注意しても、私の言うことを無視し、どれだけ私の掃除を邪魔してきたことか。大体、そういうもの達は……」
エドウッドさんの表情が、フィンレイのことを話していた時よりも、嫌悪感丸出しになっている。負のオーラまで出てるんじゃない?
掃除のケルベロスだもんね。きっと、今エドウッドさんが話している過去の人たちは。よほど掃除の仕方とか態度が悪かったんだろう。それで何で掃除班に来たかな?
あ、あー君達が、完璧におとなしくなった。うん、今のエドウッドさんには、何も言わない方がいい気がするよ。
『ごろ、ぺた。ごろ、ぺた』
『ごろぺた、ごろぺた』
「お前達は、普段はしっかりとお手伝いをしている。だが、それと同じくらいに、喧嘩もしているだろう。それでは、他にも迷惑がかかって……」
『ごろ、ぺた。ごろ、ぺた』
『ごろぺた、ごろぺた』
「そもそもだが、いくらお前達が小さくとも、お前たちが喧嘩することにより、チリや埃が……」
『ごろ、ぺた。ごろ、ぺた』
『ごろぺた、ごろぺた』
あー、あお君、しー君、お掃除ご苦労様。だけど今は、ちょっとだけ別の場所を掃除しようか。
何とも言えない空気が漂っている私たちの周りを、マイペースに掃除する、あお君としー君。その掃除の仕方がまた……。せっかくきちんと掃除してくれているのに、飛ばっちりにあったら大変だった。
「あら、綺麗に取れているわね。あお君、しー君、向こうを掃除してみたらどうかしら」
『むっ、確かに向こう、掃除良いかも』
『うん、向こう掃除しよう』
『ごろ、ぺた。ごろ、ぺた』
『ごろぺた、ごろぺた』
アリシアさんが私にウインクして、あお君とシー君を、少し向こうへ連れて行ってくれたよ。言葉が分からなくても、伝えることはできるからね。アリシアさん、ナイスです!
それから10分くらい、エドウッドさんにお説教された、あー君たち。結局今日は、喧嘩したってことで、その罰としてペタ洋服で掃除できる時間は、30分だけってことになったんだ。
今日はずっと、ペタを着て掃除しようと思っていたあー君たちはしょんぼり。フラフラと、あお君としー君たちの方へ飛んでいったよ。でも、自分たちがいけないんだから、しかたないよね。
「エドウッドにしては、優しい判断よ。もしもこれが掃除班の誰かだったら、今頃どうなっていたか。最初の日、アンドリューがやられたんでしょう? 本来だったら、ああなるのよ。でも、エドウッドはああ見えて、子供たちにはとても優しいの。だから普通のお説教と、少しだけだけど、ペタ洋服を着させてくれたの。ずっとしょんぼりは可哀想だってね」
と、後でアリシアさんに教えてもらったんだ。確かに、掃除のケルベロスにしては、罰が優しいなとは思ったけど。そうか、あー君たちのために考えてくれたんだ。
エドウッドさんは、みんなのことを思ってくれたんだから、次回は喧嘩しないで、ちゃんと最後まで掃除できるようにって。あとでもう1度、みんなに話しておこう。
さて、あー君たちのことは一旦終わったから、私たちも掃除を始めなくちゃ。私は急いでピィ君とミッケの方へ。すると、2人はジッと何かを見ていて。何を見ているのかと思ったら、あお君としー君だったよ。
『ぴぴぴぴぴ』
『うん、あれ面白そうなんだじょ。絶対に作ってもらいたいんだじょ』
「どちたの?」
『ぴぴぴ、ぴぴぴぴぴ。ぴぴ、ぴぴぴぴ、ぴぴ』
『コロコロ、とっても楽しそうなんだじょ』
ピィ君は、真っ直ぐ、難しいそう。でも、曲がるのも、面白いって。
『ぴぴぴ、ぴぴっぴ、ぴぴぴぴぴ。ぴぴ。ぴぴぴ、ぴぴぴぴぴ』
『そうなんだじょ。お掃除と遊ぶの、どっちもできるんだじょ』
ピィ君、それに、あれでいろいろ、遊べるかも。競争も。掃除も、遊びもできる、凄いって。
遊びとは? 競争なら、なんとなく分かるけど。
私もあお君としー君の方を見る。叱られているあー君たちの周りで、今その動きはちょっとと、アリシアさんが向こうへ連れて行ってくれた、その2人の動き。それを2人はまだやっていて、あー君達に教えているところだった。
一体どんな動きなのか。まぁ、もしかしたらこれが、1番簡単な方法で。ばっちりゴミが取れるかも、という動きなんだけど。




