第53話 森の異変と動き出す獣騎士団(前半***視点、後半リア視点)
『おじちゃん、やりすぎだよ』
『アイツらイライラするけどさ。今ので人間や獣人たちが来ちゃうかも』
『むっ……、すまん、あまりにもイライラしてしまってな。吹き飛ばすのに、ついつい力を入れすぎてしまった』
『奴らは、俺たちを襲ってくる奴らよりも、面倒な時があるからな。お前の気持ちも分かるぜ』
『だけど、ここの近くには、ただの獣人じゃなくて、人間みたいに戦う獣人たちがいるんですよ。今の力を見て、もしかするとその獣人たちがくる可能性が』
『人間と同じように戦う獣人、獣騎士という奴らか?』
『知ってるのか?』
『ああ、我はさまざまな場所を巡ってきたからな。それに街にも行ったことがある』
『おじちゃん、人間の住んでいる所へ行ったことあるの!?』
『わわわ!? 攻撃されなかった!?』
『人間、何してた!?』
『あなたたち、その話は後よ。今は、これからの話をしないと』
『まさか、あんたが人間の住んでいる場所に行っていたなんてな。俺にも後で話を聞かせてくれ。で、獣騎士だが、お前はどう思う? この森に、時々くる獣騎士たちは、俺たち魔獣を狩ってくる。が、そうだな、馬鹿みたいに狩ることはないか? おそらく自分たちで食べる分を狩に来てるんだろう』
『それと、あなたじゃないけど、子魔獣たちを助けてくれることもあるんだ。ただ、それは育ってから食べるために守っているのか、本当に助けてくれているのかは分からないけど』
『奴らも生きるため、我々魔獣を狩にくるのは仕方ないことだ。が、そうだな、別に奴らは理不尽に狩をしているわけではない。我が昔住んでいた森では、面倒な人間どもがいてな。その人間たちから魔獣たちを守るために、獣騎士たちがその人間を始末していた。我もそれを手伝ったのだが』
『ほう、そんなことが』
『皆、生きるために、誰かの命を奪うこともある。今だって我々は敵だと言いながら、それを食しているのだからな』
『そうね』
『そのおかげで、子共たちもお腹いっぱいになれるからな』
『しかしだ、あんたのあの力を見られたらな。というか見られているだろうからな。何かあったと思いここにくるだろう。で、誰がやったと、他の魔獣たちが疑われ、捕まる可能性もあるぞ』
『はぁ、あの面倒な者たちのせいで、そしてあれのせいで、皆に迷惑をかけることになってしまった。本当にすまん』
『いえ、俺たちはあなたのおかげで、最近はゆっくり暮らせているから、とてもありがたいんですが』
『ただ、これからどうなるかだよな。それの対策を考えないといけないだろう』
『そうだなぁ。奴らがきたら様子を見て、奴らに接触してみるか。我の知っている獣騎士たちのような獣騎士ならば、話せば分かってくるだろう』
『ダメなら?』
『なに、力尽くで分からせるまで。我にはそれができる力があるからな。だが、その間、何が起こるか分からんからな。子供たちは安全な場所へ、避難させておいた方が良いだろう。それと我が結界を張ってやる。他の面倒な奴らから守るためにな』
『それはありがたいわ。すぐにみんなに知らせないと』
『ママ、僕たち避難するの?』
『危ない?』
『怖い?』
『怖いことは何にもないぞ。そうだな、お前たちが結界の中で遊んでいるうちに、終わってしまうくらい、怖いことなど何もない。ああ、そうだ。特別に雪を出してやろう。それで遊んで待っていればいい』
『ゆき!?』
『本当!? 雪で遊べるの!?』
『やったー!!』
『よし、じゃあ、俺もみんなに伝えてくるぜ。場所はそうだな。あの洞窟周りが良いんじゃないか? あの洞窟には危険な魔獣はいないし、いつも子どもたちが遊んでいる場所だ。しかもあそこまで行くには、時間がかかるからな』
『こっちは今から避難させれば、問題ないだろうからね』
『そうだな、そうしよう。それではすまんが、皆、動いてくれ』
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
「な、なに!?」
『ぴぴぴ!?』
『な、なんだじょ!?』
『わわわ!? なになに!?』
『また誰か攻撃してきたの!?』
『もしかしてあいつ!?』
「いや、あれと気配がまったく違う!! が、私が良いと言うまで動くな!!」
アルバートさんに言われて、静かにする私たち。でも、やっぱり気になって、みんなの隙間からヒルドレッドさんとローゼンベルトさんの方を見る。
すると、さっきまでいた場所に2人の姿はなくて、別の場所から声が聞こえてきたから、また別の隙間から、なんとか声が聞こえた方を見てみたよ。
「あの方角と場所だと、森の中だな」
「間違いないでしょう」
「あの森に、あれほどの力を持っている魔獣はいないはずだが。……新しい魔獣が住み着いたか? それともまたバカな連中が現れたか」
「そのどちらかでしょうね」
「はぁ、まったく、子供たちを連れて行こうと思っていたらこれだ」
ヒルドレッドさんとローゼンベルトさんは、窓のところに立っていて、剣はもうしまっていたよ。今すぐの危険はないって感じなのかな?
「さて、どちらが調べに行くか」
「あちらはまだ、以前のような調査はまだできないでしょう。いろいろありましたからね。おそらく、私たちが行くことになるかと」
と、ヒルドレッドさんが言った時だった。宿舎に総団長さんの大きな声が響いたんだ。
「各隊長は私の部屋へ集まれ!! 他の者たちは装備を整え、各隊ごとの持ち場で待機!!」
「……相変わらずか」
「あんなに大声で呼ばずとも、魔道具で呼べば良いと、何度も言っているのでるけどね」
魔力を流すと、大きな音が鳴る魔道具があるみたいで。緊急の時、総団長さんがすぐにみんなを呼べるように、総団長さんはそれを持ち歩いているんだ。それなのに、毎回大声でみんなのことを呼ぶんだよ。
総団長さんは、宿舎の敷地内なら十分聞こえるくらい、大きな声を出すことができるんだ。だから魔道具を鳴らすよりも早いって言っているのを、聞いたことがあるけど。もしかしたら聞こえない時もあるかもしれないし、喉を痛めたら大変だから、魔道具を使えば良いのにね。
「アルバート、私たちは行きますので、リアたちをお願いできますか」
「分かった」
「それでは行きましょう」
「ああ」
ヒルドレッドさんとローゼンベルトさんが部屋から出て行く。そしてアルバートさんは、私たちに動かないように言うと、自分は窓の方へ。
『ぴぴぴ?』
「うん、だいじょぶ! ぴぃくん、みっけ、みんなはだいじょぶ?」
『大丈夫なんだじょ!!』
『私たちも大丈夫よ』
『な、みんな』
『うん、大丈夫』
ふぅ、みんな何もなくて良かった。でも……。
『アルバート、何か見えるの?』
『何か危ないものある?』
『本当にあいつじゃない?』
『あいつなら、すぐに逃げないと』
本当、一体何があったんだろう。




