第51話 どうして私だけ……。忘れていたバカ神のこと
『ぴぴぃ……』
『リアなんだじょ……』
「あーなんだ。あまりそう、がっかりするな。もしかしたら、少し遅れて耐性がつくかもしれないだろ」
「アンドリュー、何を勝手なことを。もしも耐性がつかなかったらどうするんですか。人それぞれ、魔獣それぞれ、備わる魔法も耐性も違うのですよ。リアがあなたの言葉を信じ、もしそれが叶わなかったら? 悲しむのはリアなのですから」
レーノルド先生に診察してもらって、問題ないと言われたけれど、私の心はがっかり。そんな私の横では、ピィ君とミッケが心配そうに私を見ていて、周りではアンドリューさんが勝手なことを言っているよ。
そうだよ、ヒルドレッドさんのいう通りだよ。少し遅れて耐性が付くかもって、つかない可能性だって、ぜんぜんあるのに。
そして、バカ神様よ。何でピィ君ともしかしたらミッケにも、異臭耐性をくれたのに、私にはそれをくれないのさ。バカ神がくれてるんじゃないの? それとも本当に人それぞれ? 魔獣それぞれなの?
私だって何回も、アンドリューさんの臭靴下の被害にあってるんだよ? いや、フィンレイの時は、臭靴下でフィンレイと戦ったんだよ? アレを直に触ったんだよ? それなのに、どうして私のは耐性がつかないの!
「リア。こればかりは仕方がないことなのです。私も子供の頃、友人が私が持っていない力を備わると、良いなと羨ましがっていました。ですが逆に、私に備わって、友人には備わらないものもあり、逆に羨ましがられたこともあります。ですから、こればかりは本当に、人それぞれ、魔獣それぞれなのです。どうかそのことは分かってください」
それはそうなんだけど、何で私だけ……って、そうか。あー君たちもなのか!!
ミッケは妖精で、妖精は、人や獣人、魔獣、他の種族と存在意義が違うから、勝手に力を調べることはできず。それで、ミッケの力を、調べることはできなかったけど。ただ、倒れなかったってことは、おそらく耐性がついいるはずだって。
そしてそれは、もしかしたら、あー君たちも同じかもしれない。そう言ってたよね? もしかして、耐性を貰えなかったのは私だけ!?
ちょっと、本当にバカ神、どういう事なの!? バカ神が、みんなのことを、どれだけ知っていたか分からないけど。いや、神なんだから知っていたはずでしょう? なら、初めからこの耐性も、くれれば良いじゃん。
まったく。これでまた、バカ神に言わなくちゃいけない文句が増えちゃったよ。
いつでもどこでも、会うことができれば、すぐにでも文句を言いに……。ん? 文句を言いに? ……バカ神に会いに行く? 確かバカ神が、私がここへ来る前に……。
私は、この世界へ来る時のことを思い出す。確かバカ神は私に、
『転生先は、いきなり姿を現して他の人が驚かないように。街じゃなくて、街の近くの森の出入り口付近にするね。それと、すぐに行動できるように、あの世界の成人、15歳で送るから。あとは時々教会へ来てくれればいいから』
そう言っていたよね? ……ん?
「あっ!!」
『ぴぴぃ!?』
『あれ~なんだじょ!?』
私は今まで、ベッドの上で四つん這いの姿で、ガックリしていたんだけど、あの時のことを思い出して、ガバッと勢いよく起き上がった。と、その勢いに、ピィ君とミッケが転がる。
ごめん、2人とも。でも、そうだよ! すっかり忘れてた!!
「リア? どうかしたのか?」
「ううん、ちょっと……」
「何かあるなら、言ってくださいね」
いや、うん。急に教会へ行きたいなんて言ったら、何か記憶が戻ったのか!? ってまた騒ぎになりそうだし。私としては、このまま記憶喪失設定のまま、過ごした方が良いかなって、思っているからさ。
だって、記憶が戻った? それじゃあ、戻った記憶に関していろいろ話そう、なんて言われて、何かボロが出るといけないし。なら、心配かけて申し訳ないけれど、このまま記憶喪失の方が良いと思うんだよ。
と、なるとだよ。どうやって教会へ行くかだよね。はぁ、私としたことが、完璧忘れていたよ。バカ神に教会来てって言われていたことを。
何で教会へ来てと言われたのか、それは分からないけれど。でもわざわざそう言ってきたってことは、何かあるってことだよね。もしかして、バカ神に会えたりして……。
「リア?」
「ちょっと。きょのおやちゅのこと、おもいだちた。きょは、あたちがおやちゅ、よいしゅる」
私はとりあえず、別の話をすることに。
「たいちぇい、まだ、あきらめない。じぇったいにたいちぇい、しょなわるはじゅ!!」
「はぁ、アンドリュー、あなたのせいですよ」
「仕方ないだろう、アレだけガックリしてたんだぞ。元気付けようと……」
「それがダメだと言うんです。リア、あまりそのことは……」
「だいじょぶ、あきらめない!! くよくよちない!! だからいまは、てぃるしょんさんに、おてちゅだいのこと、あやまりにいって。しょれで、おやちゅのほいく!! ぴぃくん、みっけいこ!」
『ぴぴっ!!』
『うんなんだじょ!!』
私はレーノルド先生に、ベッドから降ろしてもらう。
「私は知りませんからね」
「ああ、もう、どうすっかなぁ。ああ、ほら待て、どっちが行く?」
「あなたは余計なことを言いそうですからね、私が行きます。さぁ、行きましょう」
「れーのるどしぇんしぇ、ありがちょごじゃまちた!
「ああ、気をつけて、もう今日はここへ来ないようにするんだぞ。まぁ、そっちの2匹が、やらかす場合もあるだろがね」
『ぴ……』
『じょ……』
治療室を出る時、私はアンドリューさんの足を見る。何で私だけ……。
「……まったく。リア、今日はどんなおやつを作るんですか?」
「えっちょ、しゃいらしゅしゃんが、ぱんけーきをやいてくれるから、あたちはそーしゅをちゅくるの」
「ソースですか」
「うん。こう、きのみとくだものちゅぶちて、しょてから……」
サイラスさんはこのごろ、私たちのおやつを作る時に、一緒に何かを作らせてくれるんだ。今日はパンケーキにかけるソース。今日は確か、果物と木の実を潰すのは、それぞれやらせてくれるって言ってたような? 難しい作業は私。
こうして私たちは、先にティルソンさんに謝りに行き。私たちがお手伝いできたことに泣いてくれた獣騎士さんが、まだ洗濯場に残ってこれていて、また泣かれてしまってね。
そこでヒルドレッドさんが、別れたばかりだけど、原因の臭靴下の持ち主、アンドリューさんを呼び。泣いてくれた獣騎士さんと、他にも残っていた洗濯係の獣騎士さんたちが、アンドリューさんを取り囲み。そんなアンドリューさんを残し私たちは厨房へ。
そうしてすぐに、ソース作りをはじめたんだ。
さて、それにしても、どうやって教会へ行ったものか……。




