第42話 最終兵器はアンドリューさんのアレ。フィンレイ覚悟!!
『あっ! あと1回踊ったら、入り口が開くんだじょ!!』
私があることを思いついた、ちょうどその時だった。ミッケがそう叫んで、ミッケとあー君たちが、最後のひと踊りとばかりに、気合を入れ直して動こうとしたんだ。
『待って!!』
『え、なんだじょ?』
『ヒトミ、どうしたの? 早く逃げようよ』
『あと、あれを踊れば終わりなのよ?』
私の突然の「待って」という言葉に、みんなが驚いて動きを止める。手を斜めに上げたままね。
『すぐ逃げないと、危ないんだじょ!』
『早くにげよう!!』
『おい、何をしている。いや、なぜ止めたのだ! お前たち、早く入り口を開け』
『でもリアが』
『リア、こんな時に待てなどと。皆は気にせずに入り口を……』
『にげるだけじゃ、しゅぐにおいちゅかれて、またちゅかまるかも!! しょれじゃだめ!!』
『そんなことは分かっている。だが、少しでも時間を稼がなければ。それには、とりあえず宿舎まで逃げて……』
『いま、ふぃんれい、ちゅかまえないとだめ!! しょれに、あたちたちにげたあと、しょだんちょしゃんたちは?』
『それは大丈夫だ』
『だいじょぶ? みんなうごけないのに? あたちたちがかえったあと、しょだんちょうしゃんたち、こうげきしゃれて、それで……』
その後のことは言わない。だって本当に、それが起きちゃうかもしれないから。みんながやられちゃうなんて、もしかしたら死んじゃうかもしれない、なんてね。
『あたち、いいことかんがえた!! いま、ふぃんれいをたおせなくても、しょだんちょうしゃんたちといっしょに、かえれるかも。しょれで、いっしょにかえって、かいふくちてもらって。おいかけてくるかもしれないフィンレイと、たたかえるようにしゅる!』
『何を言って……』
『しょれに、じぃうじゅにいっちゃら、ふぃんれい、ちゅかまえられるかも!! このままよりも、そっちのほうがいい! あたち、かんがえたこと、じしんある!!』
私は、私を止めようとするアルバートさんに、逆に話を聞いてとお願いして止めて。そして、これから私がやろうとしていることを、ささっと話したよ。
もうね、アルバートさんが念話で話をできるようにしてくれて、本当に良かった。だって、声に出さずに話ができるんだから。フィンレイに作戦を知られちゃったら困るからね。
ただ、この作戦には、ピィ君とミッケ、あー君たち、そしてアルバートさんの協力が必要で。特にアルバートさんが、あれをできないと、ちょっと困るかなって。だから急いでいたけれど、そこはしっかり聞いたよ。そして……。
『良いね、それ!! 僕、やるよ!!』
『私も!!』
『ていうか、全員でやらないとね!!』
『もちろん、アンドリューもやるよね? だって、ヒトミが聞いたこと、できるって言ったんだもん』
『みんなでリアの作戦をやる!! 絶対だよ!』
『おいら、楽しみなんだじょ!!』
『ぴぴぴぴぴっ!!』
ピィ君が私の肩の上で、ちょっとだけステップを踏んだよ。これは嬉しいことや、楽しいことがあるかも、っていうサインね。
よし、ピィ君とミッケとあー君たちは、やってくれるって。あとはアルバートさんだけ。みんなでアルバートさんを見る。
いつもは表情が変わらないアルバートさんの表情が、なんとも言えないものになっていたよ。まぁ、いつもアルバートさんを知らない人には、分からないだろうけどね。
そう、私の計画に使うあるものが、あまりにもな物だから、本当になんとも言えない気分になったんだろうね。
でも、これは本当に良い作戦だと思うの。だからお願い、アルバートさん。一緒にあれをやろう!! 願いを込めて、私はアルバートさんを見る。すると……。
『……はぁ、分かった。やってみよう。確かにリアの方法ならば、今の状況を抜け出せるかもしれないからな。……まさか、あれを使うことになるとは』
ふわわ!! アルバートさん!! ありがとう!! 思わずガッツポーズしそうになるのを、我慢したよ。ここでバレたら大変。
みんなに話した時間は、ほんの数分だったと思う。その数分だったけど、やっぱり総団長さんたちは立ち上がることができず、私たちの近くで倒れたまま。
元気に動けているのはフィンレイだけで。アルバートさんの結界に入ったヒビを、さらに広げて、結界そのものを壊そうと、攻撃し続けているよ。
だけど、それは今だけだ。待ってろよ、すぐに動けなくさせるからね。だって私の考えた計画を、みんなが手伝ってくれるって言ってくれたんだもん。絶対に失敗なんかしない。
さぁ、早く作戦を決行しないと。1番の要は、私とピィ君がどこまでやれるか。
『リア、ピィ、頑張るじょ。おいらも最後の踊り、頑張るじょ。それでみんなで一緒に帰るんだじょ』
『ぴぴぴぴぃー!!』
「うん!!」
フィンレイにバレないように、私は後ろを向き、そしてピィ君とミッケと3人で手を繋いで、強く頷き合う。それから私たちの周りでは、あー君たちが私たちの体のどこかを触り、やっぱり強く頷いたよ。
「おや、どうしたのですか? 怖くなって私を見ないようにしましたか? ですが、今までのあなたのことを考えると、あなたは怖がるような子供でないと思うのですが」
ふん! 怖がるわけないじゃん!! そんなことより、ピィ君と最後も確認。
『ぴぃくん、あたちがさいしょにぬがしゅ。ただしょれで、あたちがころがっちゃったら、ぴぃくんはしゃきに、ひっぱりはじめて。あたちもしゅぐにひっぱるから』
『ぴぴぴっ!!』
よしっ!! 私は前を見る。でも、見たのはフィンレイじゃないよ。私たちが見たのは、アンドリューさん。そして……。
私はできる限りの速さで、アンドリューさんに、いや、アンドリューさんの足に近づいたよ。
「おい、リア! 危ないから下がれ!!」
アンドリューさんには、私の計画を伝えていないから、心配してくれて強めに言ってくれる。でも、止まっている時間はないし、説明している時間はない。
「おい、リア!!」
ここからは時間との勝負!! 私は思い切り叫んだ。
「いき、とめちぇー!!」
私の叫びに、ミッケとあー君たちが、息を止めた合図として手を上げてくれる。アンドリューさんは、総団長さんたちにも、同じように息を止めるように言った。
「息を止めろ! できる限り長くだ!!」
その間に私とピィ君も、思い切り空気を吸い込んでから息を止めたよ。それから倒れているアンドリューさんの足に手を伸ばし、そして一気に靴を脱がしたんだ。
ただ、思っていた通り、足にピッタリの靴を脱がすのは少し大変で。勢いよく無理やり引っ張ったから、私は尻餅をついちゃったよ。でも、それでも息を止めたまま。
「? 何をしているのですか?」
フィンレイがそう聞いてきたけど、私は無視して次の作業に移る。私が立ち上がる間に、アンドリューさんの靴下を引っ張り始めていたピィ君。
アンドリューさん、ハイソックス靴下を履いていたんだけど。ピィ君は、かなり力を入れて引っ張ってくれたのか、私が戻った時には、半分以上脱がせてくれていて。一緒に引っ張れば、するりと最後まで靴下を脱がすことができたよ。
そして急いで靴下を掲げる私。それと同時に、最後の踊りを踊ったミッケたち。精霊の国へ行った時みたいに、地面に虹色の丸が浮かび上がって、そこから虹の光が溢れ出した。
「あれは? ……何をしようとしているのですか!!」
フィンレイの攻撃が強くなった。あと少し、あと少し。息は……まだ大丈夫!!
「はぁ、はぁ。……まったく何をしようとしているのか。そんな靴下など脱がして、私ではないですが、おかしくなったのでは?」
そんなことあるわけないじゃん!! まぁ、宿舎にいる人達が今の私たちの行動を見たら、絶対そう思うだろうけど。それよりも、攻撃が止まった、今だ!!
鼻を押さえたアルバートさんが叫ぶ。
「リア、投げろ!!」
私は思い切り、結界にヒビが入っている場所を狙って、臭靴下を投げたんだ。それと同時に、ヒビの部分だけ、結界が開いた。
「な、何だ!?」
私が投げたから、本当ならすぐ目の前に落ちそうなものだけど。ここでアルバートさんの風魔法ね。アンドリューさんの風魔法で、フィンレイめがけて、臭靴下を飛ばしてもらったんだ。
ただ、風は臭靴下飛ばすだけじゃなく、結界の中にもビュウビュウ吹き始めて、これについては、予定外だったかな。
これはアンドリューさんの考えだった。結界の中の臭靴下の匂いも、ついでフィンレイに飛ばしてしまおうって。じゃないと結局、私とピィ君とミッケ、そしてあー君たちは気を失い、総団長さんたちは余計具合が悪くなるからね。
それで穴からフィンレイの方へと、風で匂いを流したんだ。そして……。
「息をして大丈夫だ!!」
アルバートさんの言葉に、私たちはプハッと息を吸った。結界は、風魔法が止んですぐに、アンドリューさんが閉じてくれたよ。そして、急いでフィンレイを確認する。その瞬間。
「こ、これは!? ぐっ!! げぇぇぇ」
フィンレイは、バッチリ、アンドリューさんの臭靴下をキャッチしたよ。胸のところでガッチリキャッチね。
そして、うん。ガクッと膝をついて、……おえっと吐いたんだ。うえっ、見たくなかったな。
って、それよりもあれは!? 私はハッとして、フィンレイの建物を覆い、結界を攻撃している黒い炎を確認したんだ。




