第35話 想いが紡ぐ奇跡、はい、磨いて磨いて磨いて〜!!
「いいかい。今から話すことは、とても大切なことだからね。やること自体は、今言ったようにとても簡単なんだ。でも、それをやっている時の気持ちが、とても大切なんだ」
「きもちが、たいしぇちゅ?」
「そう。このニーンは、僕やあー君たちみんなが育てたから、その辺に育つ野菜とは違って、神聖なものになった、という説明はさっきしたよね?」
「あい」
「あれをもう少し詳しく話すとね。ニーンを育てる時に、自然と僕やあー君たち、精霊の力が込められることで、神聖なニーンになるんだよ。簡単に言うと、普通のニーンから、神聖なニーンに進化した、って感じかな。そして、そんな僕たち精霊の力が宿っている野菜に、あることをすることで、さらに特別な物へと進化させることができるんだ」
「あること? しゃらにちんか?」
「リアたちの、相手を想う気持ちをニーンに込めることで、重い病を治せるニーンが、どんな不治の病でも治せるニーンへと、さらに進化するんだ。それで僕も、友人の獣人を助けることができたんだ」
「あいてをおもうきもち?」
「そう、相手を想う気持ちだ。……悲しいことに、この世界で生きる者たち全員が、大切な人を想って生きているわけじゃない。現に、今もどこかで争いは起きている。今回の獣人たちのこともね……」
ん? 今回の、から先が聞こえなかった。私は、もう1度聞いてみることにしたよ。
「しゃいご、きこえましぇん。なんていっちゃの?」
「あ、ああ。今回は、リアたちで良かったけど、って言ったんだよ」
「……しょう」
本当に、そう言ってた?
「いやね。相手を想う気持ちがない者には、このニーンを進化させることは不可能なんだ。それどころか、ニーンは人の気持ちにとても敏感だから、そういった者たちが触れるだけで腐ってしまう」
人の想いに反応する。ダメだと腐るって……。今は腐っていないから、私たちは大丈夫ってことだよね?
「だけど逆に、相手を想う気持ちが強ければ強いほど、その想いに応えるように進化するんだ。……リアたちは、獣人たちが大切で、助けたいと思っている。そうだろう?」
「あい!!」
『ぴぃ!!』
『うんなんだじょ!!』
「その返事、良いね!! そう。その想いをニーンに込めながら、ニーンを磨いて、磨いて、磨きまくることで、ニーンを進化させ、獣人たちのためのニーンを作る。これが今からリアたちがする、リアたちにしかできない、とても大切なことだ」
「なるほど。だから私たちでは、全ての重病人を治すことができなかったのか」
「そう。そっちのニーンは、ただのニーンだからね」
「この湖で磨くことにも、意味があるのか?」
「手助けって感じかな。この湖には僕の力が行き渡っているからね。ニーンに想いを伝えるのを、より円滑にできるんだよ」
「そういうことか」
「みがいて、ちんかしゅると、わかる? かたちがかわっがりしゅる?」
「ああ、それね。じゃあ、僕が最初にやってみるよ。この世界で暮らしている精霊たちのことを想って」
今日のおやつにちょうど良いやと、貴重なニーンを収穫してきていたせいっちが、湖でニーンを洗い始める。ああ、そんな洗い方じゃだめだよ。ニーンが傷んじゃう。ああ、そこは、もっと丁寧にやらないと。
なんて、言いそうになってしまう私。でも、その時間はすぐに終わったから、言う暇はなかったよ。
にんじん色をしていたニーンが、突然光初めて。光が収まると、にんじん色から黄金色のニーンに変化していたんだ。
「これが、想いを注いで進化したニーンだよ。これで、どんな病気を罹っても、精霊たちを助けることができる。ね、分かりやすいでしょう?」
「しょごい!」
『ぴぴぴ!!』
『キンキン、ギラギラなんだじょ!!』
「凄いな。私が今まで見てきたニーンとは、まるで別物だ。ニーンから力が溢れているのが分かる」
「ね、分かりやすいでしょう? ちなみに、このニーンは獣人たちには使えないよ。使えないっていうか、このニーンだと、獣衰病には効かないんだ。僕が精霊たちを想って進化させたものだからね。精霊の病気にしか効かない。だから、獣人たちを治すには、リアたちが作ったニーンじゃないとダメ」
「あたちたちだけ……」
『ぴぴぴぴ……』
『おいらたちだけじょ……』
「さぁ、リア、ピィ、ミッケ。どうかな? 獣人たちを想って、できそうかな?」
私たちにだけできる、ニーンの進化。そして、そのニーンでしか、総団長さんたちを助けることができない……。
この世界へ来て、自分のことを話せず、記憶を失っていることになっているけれど。そんなどこの子とも知れない私を保護して、宿舎で暮らすことを許してくれて。
しかも、誰かに狙われているかもしれないと、必ず私の側に誰かがいてくれて、いつも守ってくれている総団長さんたち。
私は恩返しと言いながら、まだ何もできていない、お手伝いをすることを許してくれ。できなくとも怒らずに、私を見守ってくれている総団長さんたち。
私はこの世界で生きていられるのは、もちろん最初に私を守ろうとしてくれた、ピィ君のおかげでもあるけれど、総団長さんたちのおかげなんだ。
そんな総団長さんたちを、失うなんてダメだよ。私が絶対に救ってみせる! 絶対に諦めたりしない。できないなんて、絶対に言わない!!
「あたち。やる!! じぇったいに、ちんかしゃしぇる!!」
『ぴぴ、ぴぴぴぴぴっ!!』
『おいらもやるんだじょ!! 少ししか一緒にいないけど、みんな大好きだから、絶対にやるんだじょ!!』
「よし! そもいきだよ!! さぁ、ニーン磨きを初めて。どんなやり方でも良いからね!」
「あい!!」
『ぴぃ!!』
『うんなんだじょ!!』
私はマジックバックから、この世界で使われている、野菜を洗うための柔らかめのブラシを出した。私用と、ちゃんとピィ君とミッケ用のものもあるよ。これなら、せいっちのあのダメな洗い方よりも、ずっと丁寧に、優しく洗い磨けるはず。
『せいっち、僕たちもやれる?』
『ボクたちも、リアたちといる獣人たち好きなの』
『私たちもお手伝いできない? ほら、土を落とすだけでも』
「別に大丈夫だよぉ。獣人たちを少しでも想う気持ちがあればね」
強い想いって言ってなかった? 少しでいいの? どっちよ! あー君たちがみんなを好きって言ってくれて嬉しいけどさ。
『よし!! リア、ピィ、ミッケ。俺たちも手伝うぞ!!』
「ありがちょ!! じゃ、これちゅかう!!」
私は急いで、あー君たちの分のブラシも出したよ。そして……。
「みんな、あらうのはじめ!!」
『ぴぃー!!』
『おーなんだじょ!!』
『『『おー!!』』』
一斉にニーンを洗い始める私たち。まずは予定通り、最初の1本目だから、私とピィ君とミッケは、3人で1本のニーンを洗うことに。あー君たちも、数人ずつ別れて洗い始めたよ。
そうして、1分もしないうちに、綺麗に土を洗い流した私たちは、いよいよ磨く作業に入ったんだ。
私が洗い物や磨き物で失敗する? はっ、そんなこと、絶対にありえない!! 私を誰だと思っているの。私は地球で、何年もずっと、洗濯と洗い物と、洗ったものを磨き続けてきたんだよ!!
これに関しては、プロにも負けないって思ってる。だから、お手伝いをしたいってお願いしたんだから。……まぁ、まだほとんど成功してないけど。
でも、このニーンは逃げないでくれるから、洗うのも磨くのも大丈夫!! 問題は、私たちがどれだけ、総団長さんたちのことを想えるかだ。
だけど、総団長さんたちを想っている気持ちだって、誰にも負けるつもりはない。ピィ君も、ミッケも、きっと同じ。
だから、洗うことも磨くことも、そして想うこともできる私たちは、絶対に失敗なんかしない!!
「ぴぃくん! しょこ、もうしゅこし、みがいて!!」
『ぴぴっ!!』
「みっけ! まだ、みがきたりない!! しょこ、もっと、ちゅよく!!』
『分かったんだじょ!!』
「でも、みがくことばかり、かんがえちゃっだめ! ちっかり、しょだんちょうしゃんたちのこと、かんがえる!!」
『ぴぃ!!』
『考えるじょ!!』
『リア、これでどうかな? しっかり泥を洗ったよ!?』
「……うん、きれい!! ありがちょ!!」
『リア、こうかしら!?』
「もしゅこし、ていねいに! しぇいっちはちょと、らんぼうだった!」
『分かったわ!!』
『確かに、いつもちょっと乱暴よね』
『あれだと、リアの合格はもらえない』
『リアは厳しいもんね』
『せいっちは、リアに合格もらえない。もっと練習した方がいい』
『みんな! せいっちよりも、僕たちの方が綺麗に洗えるよ! しっかり洗って、リアたちに渡そう!! それで、全部洗い終わったら、僕たちも磨こう!!』
『『『おー!!』』』
「……なんか、僕、バカにされてる? いつからそんなに厳しくなったのさ。僕は一応、みんなの……まぁ、いいか」
「あらって、みがいちぇ!!」
『ぴぴぴぴー!!』
『うおーなんだじょ!!』
『『『ウエ~イ!!』』』
そこは、『ウエ~イ』じゃなくて、『おー』だよ。なんて、ツッコミを入れたくなったけど、今はそれどころじゃない。それに、みんながそれで気合が入るなら、とりあえず今は、それで良いや。
「ちょおぉぉぉ!!」
『ぴぃぃぃ!!』
『じょおぉぉぉ!!』
『『『ウエ~イ!!』』』
洗い、そして磨き始めて、どれくらい時間が経ったのか。集中して磨いていたから、分からない。でもそれは、せいっちの時と同じように、突然だった。
磨いていたニーンが光り始めて、私たちは手を止めたの。そうして、ニーンの周りに集まってくる、あー君たち。
ただ、ここでさっきと違うことも起こったんだ。せいっちの時は、すぐに光が収まって、黄金のニーンが現れたのに。私たちのニーンの光はなかなか収まらず、逆に光が強くなっていったの。そして最後は……。
ぴかーっ!! 凄い勢いで光って、私は思わず目を閉じたよ。
それから、どれくらい経ったのか。光が弱まってきた? と思っていたら、
「はははっ!! 凄いや! できるとは想っていたけど、さすがの僕も、ここまでになるなんて思わなかったよ!!」
そう、せいっちの声が聞こえて、急いで目を開けた私。そうしてすぐに、持っていたニーンを見ると。私は黄金じゃなくて、虹色に光るニーンを持っていたんだ。
あれ? 黄金は? 虹色は綺麗だけど、これって成功したの? ん?




