33話 壊滅的ファッションセンスの人物、その正体は精霊王!?
「……せいっち?」
「そうだよう。僕がせいっち」
「なに、しょのかっこ」
「え? ああ、この格好? 良いところに気づいてくれたね!! これは新作なんだよ。僕の昔の友人がね、洋服についていろいろ教えてくれて、それを順番に試しているんだ。それで、今のお気に入りはこれ。どう? 似合ってるでしょう」
「あ、ありえない」
「あり得ない? こんなに似合っててありえないって? そうでしょう!」
「ちがう、だめしゅぎて、ありえない!」
「え~、まさかぁ。この服装はある場所で、人気があった時期があったって言ってたんだから。派手派手ってやつらしいよ」
「しょれは、はではでじゃなくて、ごちゃごちゃ」
「え? ごちゃごちゃ?」
セイッチの今の服装。たぶん元々の洋服は、とてもシックで良い感じの洋服だったと思うんだ。でもそのシックな洋服に、花やら草やら、木の実や枝? を付けまくっていて。それに、ここの物は全て、いろいろな感じで光っているでしょう?
だからセイッチが言っているような派手な格好じゃなく、ただのごちゃごちゃな洋服にしか見えないんだよ。
しかも、地面についている、とても長い金髪の綺麗な毛にも、洋服と同じように、ごちゃごちゃといろいろ付けていて、みるに耐えない姿だったんだ。誰だよ、こんな酷い格好をセイッチに教えたのは。
宿舎のみんなのために、急いでここへきて、獣衰病を治すことができるかもしれないセイッチに会うことができたのに。セイッチの洋服と髪型と喋りのせいで、そのことが完璧に頭から抜けちゃったよ。
「あ、ありえない。じぇんじぇんだめふぁっしょん」
「え~、そんなぁ。おかしいなぁ。もう1度確認しなくちゃ」
『せいっち。せいっちの洋服は、今はどうでもいいよ。それよりもリアたちと僕たち、せいっちにお話しとお願いがあるんだ』
「ちょっと、どうでも良くないよ。……だけど、うん。そっちも時間がないもんね」
『そうだよ。リアたちがどうしてここへ来たか、もう分かってるんでしょう? その話しをしなくちゃ』
『そうそう。洋服なんて、オレたちどうでも良いぞ』
ハッ! そうだった。その話しを聞きに来たんだよ。まったく、話がずれちゃったじゃないか。
「みんなして……。いいよいいよ。後でもっとバッチリきまってる、完璧な洋服を見せてあげるから。それでびっくりするといいよ」
『ゴロゴロしてない時は、いつもこれだよ』
『もう少し、静かな洋服が良いんじゃない? って言ってるのに』
……一体何をしてるのさ。
「よし、じゃあ、早く話しを終わらせちゃおう。それで僕は用事だ。君のことは、君がここへ来てから、ずっと見てたからね。それで問題ないことは分かっていたから、ここへ迎え入れたんだよ」
ここへ来てからずっと見ていた? みんなの家に着いた時からってこと?
「心配して付いてきてくれた子たちは、ここで待っててね。リアとピィとミッケ、それからあー君たちは、僕の寝床に行こう」
そうセイッチが言うと、いきなり私の体が浮かんで、湖の小島の方へ飛び始め、それに続くみんな。セイッチも飛んで移動してくる。
ちょっと驚きながら、そのまま移動する私。その時、セイッチとあー君たちが、
『せいっち~。せいっちがフラフラ、街に遊びに行った時に、人間や獣人の子供に教えたやつ、みんな言うようになったよ。みんなとっても楽しそう』
「そうだろう! ありは楽しくなる言葉なんだ。だからみんな使ったほうがいいんだよ。あー君たちも楽しくなるだろう?」
『う~ん、確かに?』
『悪くはないわね』
『もっとはやるといいねぇ。そうしたら大人も使うようになって、ギスギスしている心が晴れるかもしれない』
なんて話しを始めたんだ。何の話をしているのか。ちょっと引っかかることがあって、すぐに私は聞いてみたよ。
「なんのはなち?」
『あのね。せいっちは、街に遊びに行った時に、気持ちが楽しくなる言葉を、子供に教えたんだよ』
『オレたちのさっきの言葉な。ウエ~イってやつ』
『街の子供が時々言ってるでしょう? あれはせいっちが教えたの』
お前か!! 声には出さなかったけど、心の中で思い切り突っ込んだよね。
なんて言葉を教えているのよ。子供たちに教えるなら、もっと教える言葉があるでしょう。だいたい何で、ウエ~イなんて言葉を知ってるんだ!
「これも、僕の友人が教えてくれてね。僕の好きな言葉なんだ。だからみんなが使ってくれて嬉しいよ」
なんだろう。その友人も、さっきからちょくちょく引っかかるなぁ。時間があるなら、聞きたいくらいだ。
そんなツッコミや、いろいろと考えているうちに、小島に着いた私たちは、無事に小島に上陸。そしてみんなで輪になって、その場に座ったんだ。
でも私は立ったまま。セイッチが、少しおかしな人だとしても、獣衰病を治せる可能性があるんだから、ここはしっかりお願いしないといけないと思ってね。
私たちがここへ来た理由は、どうしてだかもう知っているみたいだし、それに時間もないし。ここはもう、最初からお願いしたほうが良いと思ったの。でも一応、確認から……。
「あたりたちがここへきたりゆ、も、ちってましゅか」
「うん、知ってるよ」
「しょでしゅか。……しぇいっちしゃん、おねがいちましゅ! あたちをたしゅけてくれた、たいしぇちゅなひとたちが、くるしでましゅ! あたちはたいしぇちゅなひとたちを、たしゅけたいでしゅ!! どか、みんなをなおしゅほうほ、おちえてくだしゃい! おねがいちましゅ!!」
『ぴぴぴぴっ!!』
『お願いなんだじょ!!』
『せいっち、お願い!』
『私たちの友達のリアが困ってるの』
『治らないと、リアの大好きな人たちがいなくなっちゃうんだ』
『せいっちさ、治し方、知ってるだろう? 前に治したって。だからそれをリアに教えてやってくれよ』
「……獣人たちが罹っているのは、獣衰病だね」
「あ、あい!! おねがいちましゅ! なおちかた、おちえてくだしゃい!!」
『ぴぴぴぴ!!』
『お願いなんだじょ!!』
『『『せいっち、お願い!!』』』
「……」
黙るセイッチ。やっぱりダメ? それとも、セイッチが治したのは別の病気だった? 私は思わず、ギュッと目を瞑ったよ。だけど次の瞬間。
「いいよぉ」
うう、やっぱり、いきなり来た人間に教えたりしないよね。でも、諦めないで、何度でもお願いして……、って、ん?
「ん?」
私は顔を上げてセイッチを見る。
「いいよぉ。教えてあげる。というか、君にだったら、なんだって教えてあげるよ。まぁ、今日は獣衰病の治し方だけど、時間がある時には、知りたいことをなんでも教えてあげるからね」
え? そんな簡単に? 本当に教えてもらって良いの? というか、なんでも教えてくれるって、どうして……。
「言ったでしょう。君のことは、君がここへ来てから、ずっと見てたって。それは街に来た君を見ていたってことじゃないよ。君があの森へ着いた時から、僕は君のことを見ていたんだ」
「もり!?」
「そう。だから、時間がある時に、ゆっくり話をしよう。それで少しは、君の力になれると思うよ。それに、ミッケやあー君たちと仲良くしてくれるんだから、そんな人間を無碍になんかしないよ」
そう言って、私にウインクしてきたセイッチ。まさかの展開に、思わず動きが止まってしまう私。
まさか、私が森へ来た時から、私のことを知っていたなんて。この人、本当に何者なんだろう。ミッケやあー君たち、それに他の精霊が信用していて、お父さんと呼んでいる存在なんだから、悪い人じゃないのは確かだけど。
『せいっち、森って何のこと?』
「それはみんなには内緒ぉ」
『えー』
『ちょっと、それよりも今は病気の方でしょう! セイッチ、本当に教えてくれるの?』
「もちろん! でも、成功するかはリア次第だから、そこは頑張ってとしか言えないけどね」
ん? どういうこと?
「とりあえず、もう1度移動しよう。移動した場所で、治し方を教えるからね。それから、外で待ってるエルフだけど、連れてきて良いよ。あー君、呼んできてくれる? 僕たちは畑にいるからね」
『分かった!!』
そう言って、アルバートさんを呼びに、飛んでいったあー君。私はさっきみたいに体を浮かせてもらって、みんなでまた移動を始めた。
『あ、そういえば、せいっち』
「ん? なぁに?」
『アルバートたちがね、せいっちのこと、誰だって聞いてきたの』
『せいっちは、せいっちなのにね』
『変だよねぇ』
「ああ、そういうこと。まぁ、人間や他の種族が、僕のことを何て呼ぼうが、どうでも良いんだけどね。でも、どうせなら、せいっちって呼んでほしいよねぇ」
「なんてよぼうが? みんな、はじめて、しぇいっちって、なまえちった」
「関わった人には名乗るけど、関わらない他人に、名前なんて教えないだろう? ただ、僕としては誰にでも、自分はせいっちだよって言いたいんだ。だけど、それで目立ちすぎてもね。どこから僕の正体がバレるか分からないし。さすがにみんなの前で正体がバレるのはねぇ」
「しょたい? ばれる?」
「君だから良いか。これからもいろいろと、君とは関わるだろうし。と言うか、いろいろ教えてあげるって言ったしね。僕はね、君たちが生きている場所ではね、精霊王って呼ばれてるんだ」
……ん? 聞き間違いかな? 今、なんかすごい言葉を聞いたような?
「ん? しぇ?」
「精霊王。僕は時々、街で遊ぶけど、みんなに僕の正体を話しちゃダメだからね。リアだから教えてあげるんだから」
……この派手派手じゃなくて、ごちゃごちゃの格好をしている。そして、ウエ~イなんて言葉を子供たちに教えた、軽い感じの人物が、精霊王?
……はぁぁぁぁぁぁっ!?




