第31話 出発前の長い話と、入り口を開くのは盆踊り?(前半アルバート視点、後半リア視点)
「それでは、後のことは頼んだぞ」
「ああ、任せてくれ」
「アルバートたちが戻ってくるまで、必ず繋ぎ止めるよ。リアたちのためにもね」
「それよりも、お前こそ気をつけろよ。精霊たちが言っていたセイッチだが。名前は軽い感じだが、どう考えても、彼の方だろう」
「おそらくな」
「お前は時々、いらんことを言うからな。彼の方の不興を買うことのないようにな。それで、もし病気の治し方を聞けなくなったりしたら、リアたちがどんな思いをするか」
「そうだよね。アルバートは時々、言わなくて良いことまで言うから。本当に気をつけてね」
「私が、余計なことを言うだと? そんなことをあるわけないだろう。お前たちは、何を言っているんだ」
「その自覚のなさがダメなんだよ、まったく」
「何なんだ? 時間が惜しい、もう行くぞ」
「と、待て。もう1つ」
「まだ何かあるのか?」
「ここは俺たちに任せろと言ったが、俺と数人で、少しやりたい事がある」
「やりたい事?」
「ミッケが、ある人物からの悪意を感知した」
「ミッケが?」
「ああ。精霊は、人間だろうが誰だろうが、悪意を持っている者を見分ける事ができるだろう? それをミッケが、人間のフィンレイ・ストーンフォードから感じ取った」
「ヒルドレッドたちが注意していたのも、フィンレイ・ストーンフォードだったな。リアとピィが怖がると言っていた」
「それがな、どういうわけか、精霊が感じ取る悪意を、リアとピィも感じ取っているようなんだ」
「どういう事だ?」
「この前、まだ厨房が使えない頃、裏庭に昼食を食べに来ただろう? そして、その時にフィンレイ・ストーンフォードが、団長と共に来た」
「ああ」
「それで、リアたちは隠れただろう。それで俺たちは、リアたちがフィンレイ・ストーンフォードを怖がっているのを知っていたから、リアたちに奴が近づかないようにと、俺はリアたちの方へ行った」
「そうだったな」
「その時にな、ミッケが、奴について話しているのを聞いたんだよ。奴から、何か黒い物が出ているってな。その黒い物が、どうやら悪意らしい。そして、その黒い物を、リアたちも見ていて。ミッケに、奴に近づかないようにと注意されていた。俺には、そんな物は一切見えなかったがな」
「そんな物が? 僕にも、何も見えなかったよ」
「なぜ、精霊にしか見えない悪意が、リアとピィには見えるのかは分からん。だが、ミッケが注意しているんだ。一応、奴を見張っておいた方が良いだろう。こんな時だからこそ、余計な」
「……悪意か。分かった。そちらはお前に任せる。必要なら、他の者たちも呼び寄せろ」
「おう!」
「あるばーとしゃん!! じかんない!! はやくいく!!」
「ああ! 今行く!!」
「はは、あんなに気合が入っていて、途中で倒れなきゃ良いが。……リアとピィとミッケのこと、頼むぞ。ヒルドレッドたちにも言われているんだから」
「何かあれば、すぐに対応してあげてね」
「分かっている。では、行ってくる」
「あるばーとしゃん!!」
『ぴぴぴっ!!』
『早く出発するんだじょ!!』
「今行く!!」
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もう! 出発だっていうのに、アルバートさんたちの話がなかなか終わらなくて、思わず呼んじゃったじゃないの。
小走りじゃなく、数回ジャンプして私たちも所へ来たアルバートさんに、ピィ君とミッケ、あー君たちが文句を言うよ。
『ぴぴぴっ!!』
『遅いんだじょ!!』
『何してるのさ。時間がないのに』
『今日は特別な入口から行くから、それの準備をしなくちゃいけないんだからね』
『それには、森の中で、人のいない場所を、探さなくちゃいけないのに!』
「すまない、ここを任せるから、そのことについて話していた。そうだな、遅くなったぶん、ここからは私が一気に森まで走ろう」
そう言うと、アルバートさんはまず、あー君たちをシュバババと掴み、洋服のどこかに挟んだりり、ポケットに入れたりして。それが終わると、今度は私の洋服のポケットに、ピィ君とミッケを入れ、最後に私のことを抱き上げたよ。
「全力で走ると、お前たちを飛ばしてしまうからな。一応、結界は張るが、顔は出していても良いが、体は今の場所から外に出すな。もしも勝手をして飛ばされても、そのまま置いていくぞ」
『分かった!!』
『みんな、絶対に外に出ちゃダメよ!』
『『『は~い』』』
「リアたちもいいな」
「あい!!」
『ぴぃ!!』
『分かったんだじょ!!』
みんなの返事が終わった瞬間だった。顔や体を、思い切り風が吹き抜けて、周りの物が高速で私たちの周りを通り過ぎ始めたんだ。もうね、車や電車なんかよりも、ぜんぜん速いんじゃないかってくらい、本当に猛スピードでね。
そのアルバートさんの走りに、ピィ君、ミッケ、あー君たちは大興奮。ピィ君は、首を左右に振り、他のみんなは、体は外に出さないものの両手をあげて、
『『『ひょー!!』』』
って叫んでいたよ。
そうして30分もしないうちに、街から1番近くにある森へ着いたんだ。総団長さんたちからは前に、1時間くらい行ったところに、1番近い森があると聞いていたんだけど、まさか30分もしないで着くなんて。さすがエルフのアルバートさん。
いや、アルバートさんだからできたのかな? 他の人の全力走りを見たことないからね。……みんな、絶対元気になりはずだから、元気になったら見せてもらおうっと。
なんて考えているうちに、さらに走り続けて、森の奥まで進んだアルバートさん。そうして止まった場所は、森の中でも、少し開けた場所だった。
「よし、この辺りは、人の気配も獣人の気配も、他の者たちの気配もしない。ここで、お前たちの家へ行く準備をするといい」
『分かったぁ。みんな! やるよ!!』
『ええ!!』
『おー!!』
『ミッケも手伝って!』
『うんなんだじょ!!』
『リアたちは少し後ろに下がっててね』
「あい!!」
すぐに、アルバートさんの洋服から飛び出てきた、あー君たち。私たちは、そのまま少し後ろへ下がったよ。
そうしてミッケたちの様子を見ていると、7人で、人が3人くらい並んで入れるくらいの円を作り、それぞれ、ほぼ均等に間隔を空けて並んで、その後、全員が目を瞑ったんだ。
そして、それはすぐだった。ミッケたちの円に合わせて、地面が光り始めたの。
『よし、光り始めた!』
『みんな、いくわよ!!』
『『『おー!!』』』
次にミッケたちがとった行動は、それは……。盆踊りだった。
いや、本当に、動きが盆踊りだったんだよ。こう踊りながら、時々手を叩いてさ。ここで盆踊りの時に使われる音楽が流れたら完璧!! ッてくらいに盆踊りだったの。この非常事態に、盆踊りを見ることなるなんて、思わず、え? ってなっちゃったよね。
でも、その盆踊りは長くは続かず、踊っているうちに、地面の光がどんどん強くなっていって。10分もしないうちに眩しく輝き出し、最後は目を開けていられないほど強く光って、私は目を瞑ったんだ。
『よし、成功!!』
『リア、ピィ、目を開けて良いわよ』
その声に、そっと目を開ける。するとさっき光っていた地面が虹色に光り、そしてそこから虹色も光が溢れていたんだ。




