第21話 かっこいい装備で準備万端! 初戦闘は不思議で楽しいスライム?
「けんとぼうち?」
「ああ。剣はリアに、帽子はピィにプレゼントだ」
それぞれプレゼントをもらう私とピィ君。
剣をもらった私の方は、剣を腰にセットしておくためのベルトと、木の剣を入れるための皮のホルダーも一緒にもらって、すぐにアンドリューさんに付けてくれたよ。
ピィ君の方は、レーノルド先生が帽子を被せてくれて、紐をリボン結びにして、可愛く留めてくれて、装着完了。
「これからここに来るお楽しみの相手をするには、一応これが必要だからね。子供たちはみんな、それぞれ自分で攻撃ができるけれど、リアの場合は人だから同じようにはいかないし、ピィはアリシアがあった方が良いだろうと言ってね。両方とも、急いで作ったんだ」
「そうだぞ。剣は俺が作って、ツノ帽子はレーノルドが作ったんだ。どっちもサイズがピッタリでよかったぜ」
アンドリューさんとレーノルド先生が? わざわざ? これを?
「なんで、けんとちゅのぼうちいるの? あれってなんでしゅか?」
「じゃあ、まずはあれの説明をしてしまおうか。これからここに、ある野生の魔獣たちがやってくる」
魔獣!? やっぱり魔獣がくるの!? じゃあこんなにゆっくりしてちゃまずいんじゃ? みんなも何の準備運動だか知らないけど、宿舎に避難するとか、どこか別の場所へ避難した方が良いんじゃない!?
私は慌てて、アンドリューさんとレーノルド先生に、そのことを言ったよ。だけど返ってきたのは、アンドリューさんのニヤリとした笑いと、
「今日来る魔獣は、楽しい魔獣だから問題ない」
という言葉で。
訳が分からず、さらに頭にハテナマークが浮かんだ私。そんな私に、レーノルド先生が教えてくれたのは、本当に楽しい魔獣の話だったんだ。
これからここに、というか街中に現れる野生の魔獣がいて、それは定期的に、どこからともなく街に現れるらしいんだけど。その魔獣を、心待ちにしているのが子供たち。
一体どんな魔獣が現れるのか。それは……種族名はスライム。そう、絵本を見せてもらったら、あの異世界ファンタジーによく出てくるスライムと全く同じスライムで。その中のキャンディースライムというスライムが、これからどんどん姿を現すらしいの。
このキャンディースライムの特徴は、倒すと体が固まり、そして弾ける。その後、みんな美味しく召し上がれるというもので。
あのね、この世界にも、キャンディーがあって、名前もそのまま使われているんだけど。キャンディースライムは、倒されると美味しいキャンディーになる、楽しいスライムだったんだ。
しかも、このキャンディースライム、かなり弱いスライムらしく。小さな子供、下手をしたら1歳の子でも倒せるくらい、弱い個体もいるみたいで。
弱くて子供でも倒せる、しかも倒した後は、キャンディーとして食べられるんだから、子供たちがスライム討伐をしないわけがないよね。
だから今、みんなはキャンディースライムを倒すために準備運動をしていたんだよ。
どうして定期的にキャンディースライムが現れるかは分かっていないんだけど、1ヶ月に2回か3回現れて、今月は2回目みたい。
そんなに弱いキャンディースライムの倒し方は簡単。他のスライムなら、うかつに手を入れれば溶かされることもあるけど、キャンディースライムはそれもないから、素手でバシバシ攻撃して。
スライムの中に必ずある、スライムの命と呼ばれている核と呼ばれる石を取り出し、それを石や剣で叩き割れば、討伐は完了。
ね、こんなに簡単だから、子供たちがおやつのためにこぞって倒すんだ。
ただ、素手でも良いけれど、木の剣があった方が、他のスライムでも、木の剣で対応できるスライムがいるからって、アンドリューさんが木の剣を作ってくれたんだ。
ピィ君は、ピィ君のいつもの突き攻撃や、引っ掻き攻撃で倒せるけど。突撃も好きだから、頭にツノを付けたら新しい攻撃ができるんじゃないかって、アリシアさんが考えてくれたみたい。ついでにアンドリューさんも攻撃できるって。
そうしてアリシアさんが考えたものを、レーノルド先生が作ってくれたの。
考えてくれたアリシアさんが作るんじゃないんだと、思った私。そんな私の考えに気づいたレーノルド先生が、教えてくれたんだけど。
アリシアさん、細かい作業が苦手らしい。そしてレーノルド先生は得意だから、よくアリシアさんが考えた物を、レーノルド先生が作っているんだって。言いたいだけ言って、後はお任せだから困るって、レーノルド先生は溜め息をついていたよ。
まぁ、うん。得意不得意はそれぞれだからね……。
と、それは良いとして、まさかこんなカッコいい物を作ってもらえるなんて。ピィ君なんてさっきから、板なんだけど、姿が綺麗に映る鏡のようなピカピカな板があって。それに自分の姿を移し、いろいろとポーズをとって何度も頷いているよ。よっぽど気に入ったんだろうね。
「ぴぃくん!!」
そんなピィ君を呼び戻す。まずはちゃんと、言うことを言わないと。
「あんどりゅーしゃん、れーのるどしぇんしぇ、かっこいいけんとぼうち、ありがちょごじゃいましゅ!!」
『ぴぴぴっ、ぴぴっぴぴぃ!!』
私に続いて、ぺこっと頭を下げるピィ君。ただ……。
「気に入ってもらえてよかった」
「おう! どういたしまして!! って、いててててっ! 何で攻撃してくんだよ!!」
『ぴぴぴぴぴぃっ!!』
お礼の気持ちはどこへやら、試し突きだと言わんばかりに、ピィ君がアンドリューさんに攻撃を始めたよ。
「しゃっきの、ごみのちゅじゅきだって。しょだよね、ぴぃくん」
『ぴぃっ!!』
「だからゴミを散らかしたのは謝っただろう! っいててててて!!」
「ハハハッ、しっかりと攻撃できれいるな。ピッタリフィットしたようでよかった。リアも剣を持ってみろ」
「あい!」
スッと皮のホルダーから木の剣を取り、私の知っている感じで剣を構えてみる。
「そうだな……その持ち方でも良いが、それに足は……」
こうして、ああしてと、騎士のアンドリューさんじゃなくて、お医者さんのレーノルド先生が、私に剣の持ち方と構え方を教えてくれる。とっても分かりやすい説明で、すぐに私は最初よりも、しっかりと剣を持てるようになったよ。
「よし、ここまでは良いな。それじゃあ次に……と言いたいところだが、キャンディースライムが来たようだ。さっきも言ったが、弱い魔獣だからな、本当に倒しながら、続きを教えよう。実践というやつだ」
「あい!! ぴぃくん! しゅらいむきちゃ!!」
『ぴっ!? ぴぴぴっ!!』
すぐに私の頭の上に戻ってきたピィ君。アンドリューさんとレーノルド先生が、みんなを呼んだよ。
「全員集まれ! スライムが来るぞ!!」
「いいか、いつも通り、気をつけて倒すんだぞ!」
それから、みんなが集まってくるうちに、他の獣騎士さんたちも集まってきたんだ。弱いスライムだけど、もしかしたらってこともあるから、みんな獣人の子たちを守るために来てくれたの。
そうして全員が集まって数分後。
「あっ! きたよ!!」
ルーファスという、フクの獣人、分かりやすく言うとフクロウの獣人の子が叫びながら指を指して、私はそっちを見る。
そこには綺麗な花が咲いている花壇が。そそして数秒は変化のなかったんだけど、急にゆらゆら揺れ始めて、そして……。
「きれいないろ、いろいろ」
『ぴぃ!』
透明だけど、いろいろな色をしているスライムが、草花を掻き分け、どんどんこっちに向かって進んできたんだ。




