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アストラ・リンク:天界と接続できる唯一の学生  作者: Aditya Kushwaha
Volume 3

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酸素欠乏《オキシジェン・クリティカル》

俺たちは中央通路で合流した。ヴィクラムは不機嫌で、リアは動揺し、イシャは今にも何かを殴りたそうだった。


「俺の鏡像はタイムシェア(別荘の共同所有権)を売りつけようとしてきた」ヴィクラムは残弾数を確認しながら呟いた。「俺の不安要素は『友情を金で買おうとすること』だそうだ。だから撃ってやった」


「私のは『感情を恐れて論理に頼っている』だって」リアはため息をつき、バイザーを拭った。「本当に失礼な試練ね」


「精神を破壊するように設計されてるのよ」イシャは硬い声で言った。「でも合格したわ。聖域サンクタムはこの先よ」


彼女は巨大な、生体発光する廊下の先を指差した。 突き当たりには、黄金とラピスラズリで作られた巨大な円形の扉が閉ざされていた 。


「さっさと終わらせよう」俺は前に出た。「水を汲んで、帰って、このことは二度と話さない。いいね?」


ピピッ。


神殿の石の音ではない。デジタルな電子音が水中に響いた。 スーツのHUDヘッドアップディスプレイが明滅する。


『警告:外部からのハッキングを検知』 『生命維持システム:掌握されました』


「なんだ?」俺はヘルメットを叩いた。


突然、通信機から声が響いた。俺たちの誰でもない。歪んだ、楽しげな囁き声だ。


『試練が一番難しいパートだと思った?』


「マヤ」ヴィクラムが唸った。「ネットワークに入り込んだか!」


『正解よ、天才くん』マヤの声が喉を鳴らす。『私は今、聖域の制御コンソールにいるの。あなたたち、遅いのよ。だから少し急かしてあげることにしたわ』


プシュゥゥゥ……!


背中のスーツから激しい排気音がした。 泡が――貴重な、生命を維持する泡が、タンクから海中へ漏れ出していく 。


「俺の空気!」俺は叫んだ。「漏れてるぞ!」


「私のもよ!」リアが悲鳴を上げた。「パージバルブをハッキングされたわ! 閉じられない!」


ヴィクラムが手首のコンピューターを必死に操作する。「安全プロトコルが上書きされてる! 酸素予備を強制排出してるんだ!」


『あと……そうね、8分ってところかしら』マヤが笑った。『走った方がいいわよ。蛇の王(ナーガ・ロード)もお腹を空かせてるしね』


通信が切れた。 HUDを見る。


『酸素残量:12%』 『推定時間:08:00』


「走れ!」イシャが叫んだ。


【疾走】


水中を走るのは悪夢の中を走るようなものだ。遅く、重く、もどかしい。 黄金の扉までの廊下が永遠に続くように思えた 。


「ヴィクラム! 扉だ!」俺は叫んだ。「開けられるか?」


ヴィクラムが巨大なゲートに到達した。鍵穴など探さない。 ベルトからデータスパイク(電子杭)を抜き、壁の光るルーン文字のスロットに突き刺した 。


魔法錠アーケイン・ロックだ!」ヘルメットの中で汗を流しながらヴィクラムが叫ぶ。「ルーン配列をバイナリに変換して総当たり(ブルートフォース)する! 3分くれ!」


「3分もないわよ!」リアがゲージを確認した。「私のスーツ、漏れるのが早いわ! 残り8%!」


ゴゴゴゴ……


床が揺れた。廊下の壁がスライドして開き始める。 暗い窪みから、剃刀ウナギ(レイザー・イール)の大群が溢れ出してきた。鋸歯状の顎を持つ、肉を引き裂くために作られた金属製の機械魚だ 。


「防衛システムだ!」イシャが叫び、氷の短剣を抜いた。「ヴィクラムはハッキングを続けて! 私たちが食い止める!」


ウナギが殺到する。何百匹もだ。イシャはダンサーのように動いた。 周囲の水を凍らせて氷の盾を作り、衝突してくるウナギを粉砕する。リアは音響放射器ソニック・エミッターを使い、音波でウナギを吹き飛ばす 。


俺は自分の手を見た。炎神(アグニ)は役立たず。風神(ヴァーユ)も役立たず。大地神(プリトヴィ)は遅すぎる 。


「俺はただのカモだぞ!」俺は叫び、近づいてきたウナギを殴りつけた。


「環境を使いなさい!」イシャが叫び、ウナギを両断した。「アリアン! あの柱を掴んで!」


彼女は天井近くの脆そうな石柱を指差した。議論している暇はない。ダイヤルを叩く。 『化身(アバター)大地神(プリトヴィ)


俺は重くなった。そのまま上方へ跳躍し、柱にしがみつく。俺の自重がそれを引きずり下ろした。 ズドォォン! 柱が崩落し、ウナギが湧き出していた左側の通気口を塞いだ 。


「ナイス・スマッシュ!」イシャが叫んだ。


その時、悲劇が起きた。 はぐれた一匹のウナギがイシャのガードをすり抜けた。それは彼女の背中にあるエアホースに噛みついた 。


プシュッ!


彼女のスーツから泡が爆発的に噴き出した。イシャが息を呑み、吸気口に海水が流れ込んでむせ返る 。 彼女の目がパニックで見開かれた。喉を押さえて、もがいている。


「イシャ!」俺は咆哮した。


大地神(プリトヴィ)を解除し、壁を蹴って彼女の方へ泳いだ。腕を掴む。バイザー越しに見える彼女の顔――溺れている 。


「ヴィクラム! あとどれくらいだ!?」俺は絶叫した。


「もうすぐだ! 98%!」


HUDを見る。 『酸素残量:5%』 自分用にもギリギリだ。イシャを見る。目が白目を剥きかけている 。


考えるな。 俺は胸部プレートから緊急補助ホースを引き抜いた。「じっとしてろ!」


コネクターを彼女のスーツの緊急ポートにねじ込む。 カチリ。 俺の空気が彼女のスーツへと流れ始めた 。


『警告:空気供給共有中』 『減少率:200%』 『残り時間:01:30』


新鮮な空気が肺に入り、イシャが大きく息を吸い込み、咳き込んだ。 彼女は呆然と俺を見た。俺たちを繋ぐホースを見る 。


「アリアン……あんた……」彼女はプライベート回線で喘いだ。「あんたの分がなくなるわ」


「なら、息を止めるさ」俺は歯を食いしばった。「俺から離れるな」


彼女は俺の腕を強く掴んだ。 機械ウナギと赤い警告灯の混沌の中で、一瞬、世界には俺たち二人しかいなかった。 プラスチックのチューブ一本で繋がれた、怯えた二人の子供 。


「開いた!」ヴィクラムが叫んだ。


ガコン、ゴゴゴ…… 巨大な黄金の歯車が唸りを上げ、重い石の扉がスライドして開いた 。


「中へ! 急げ!」リアが叫び、最後の一発を放ってウナギを散らす 。


俺たちは開口部へと転がり込んだ。ヴィクラムが閉鎖ボタンを叩く。 ズンッ! 扉が激しく閉まり、ウナギの群れを遮断した 。


【聖域の内部】


俺たちは床に倒れ込んだ。 その部屋は空気で満たされていた――魔法で維持された呼吸可能な空間だ 。 俺はヘルメットを引き剥がし、空気を貪った。古く、金属の味がしたが、甘美だった 。 イシャもヘルメットを脱ぎ捨て、海水を吐き出した 。




「このバカ」彼女はゼーゼー言いながら俺を睨んだが、その目は潤んでいた。「自分の空気を渡すなんて」


「言っただろ」俺は壁にもたれ、力なく笑った。「俺はタンクだ。ダメージを引き受けるのが仕事さ」


俺たちは周囲を見渡した。ここが聖域サンクタムだ。 巨大な球形の部屋だった。壁は流動する水でできており、不可視の力場フォースフィールドでせき止められている。水の壁の中では、巨大なサメが飢えたように旋回していた 。


部屋の中央、白い珊瑚の台座の上に、青く光る液体で満たされた簡素な石の聖杯チャリスが置かれていた 。


そしてその隣に立ち、退屈そうに聖杯を眺めていたのは、マヤだった。


「着いたのね」彼女は振り返り、微笑んだ。「半分しか溺れてないなんて、感心したわ」


彼女の背後で、水の壁が波打った。巨大な影がバリアを押し破って入ってくる。 タクシャカ。 蛇の王(ナーガ・ロード)が部屋へと滑り込んできた。四本の腕の筋肉を誇示し、蛇の尾が古代の彫像をなぎ倒す 。


「チビどもが来たか」蛇神(ナーガ)は舌なめずりをした。「いいぞ。生きた獲物は好みだ」


俺たちは立ち上がった。ヘルメットなし。武器を構える。 疲労困憊で、ボロボロだ。だが、俺たちはここにいる 。


「カップを渡せ、マヤ」ヴィクラムがライフルを向けた。


「取りに来い!」タクシャカが咆哮し、四本の巨大な曲刀シミターを抜いた。


俺は聖杯を見た。距離は6メートル(20フィート)。 俺と水の神の間に立ちはだかるのは、変幻自在(シェイプシフター)と、15メートル(50フィート)の海蛇(シー・サーペント)だけだ 。


「楽勝だな」俺は呟き、指の関節を鳴らした。

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