チームワーク・フィニッシュ
「|氷のジェットコースター《アイス・コースター》:自殺志願者バージョンよ!」 イシャが風の中で絶叫した 。
浮遊スタジアムの崩壊した縁から、固形の、半透明な氷のランプ(傾斜路)が螺旋を描いて伸びていた。 急勾配で、ギザギザで、正気とは思えない代物だ 。
「行け!」彼女は叫んだ 。
ヴィクラムは躊躇しなかった。彼はリアを抱え、氷の滑り台に飛び乗った 。 イシャが続く。彼女はサーファーのようにブーツで氷の上を滑り、脱臼した左腕を胸に抱えて痛みに耐えていた 。
俺たち――いや、彼らは、眼下の都市に向かって150メートルを一気に滑り落ちていった 。
底に広がる光景は、この世の終わりのようだった。 俺の巨神形態は、膝まで砕けた舗装道路に埋まっていた 。 巨大な黒曜石の両腕は頭上でロックされ、数十億トンのスタジアムの重量に耐えながら悲鳴を上げている。俺は下を見ることができない。動くこともできない。 俺は純粋な激痛の彫像と化していた 。
ピキッ。 岩の肩に亀裂が入る。 (耐えろ)俺は心の中で咆哮した。(壊れるな)
頭上からは、数百体の阿修羅の群れが、俺の頭と肩を狙ってミサイルのように降り注いでいた 。
ヒュンッ!
ヴィクラム、リア、イシャが氷の滑り台から飛び出し、俺の巨大な岩の足の間の道路に着地した 。
「防衛線展開!」 ヴィクラムが吠えた。ブーツの磁気ロックを作動させ、崩れた地面で踏ん張る 。 「奴らはアリアンの膝を狙ってくる! 足が折れたらスタジアムが落ちるぞ!」
「雑魚は私が引き受ける!」 イシャが歯を食いしばった。痛みで顔面蒼白だが、彼女の右手は青い魔力で輝いていた 。 「彼に指一本触れさせるな!」
阿修羅の第一波が地面に激突した。 羅刹(虎の悪魔)と食屍鬼たちがクレーターから這い出し、金切り声を上げる 。 彼らは人間たちを無視した。俺の巨神の足に向かって一直線に突進し、その爪で石の鎧を削り取ろうとする 。
「氷の爆星!」
イシャが舗装道路に手を叩きつけた。 俺の足の周囲の地面からギザギザの氷の棘が輪状に噴出し、最前列の怪物たちを串刺しにする 。
「ナイスショット!」リアが叫んだ。彼女はベルトから2枚の高・爆発ディスクを取り出した。「ヴィクラム、右翼を!」
ヴィクラムにはもう弾薬が残っていなかった。だが彼は気にしなかった。スーツに残った最後の運動エネルギーを起動する 。 彼は残像が見えるほどの速度でダッシュした。 ドガッ! 羅刹の顎に蹴りを入れ、ビルまで吹き飛ばす。回転し、食屍鬼の喉に肘鉄を叩き込む 。
「下がれ!」ヴィクラムは鬼神のごとく戦いながら咆哮した。「『壁』には触らせんぞ!」
【巨神の視点】
下から音が聞こえる。小さな声。小さな爆発音。 足首を何かが引っ掻く感触――黒曜石を削ろうとする爪。そして冷たい感触――イシャがそれを凍らせて剥がしてくれる感覚 。
視界が赤い。重さがさらに増していく。スタジアムが傾こうとしている。 神器の治癒因子のおかげで、巨体の筋繊維は断裂と再生を瞬時に繰り返していたが、痛みは無限だった 。
(彼らが俺のために戦っている)俺は悟った。ヴィクラムが。リアが。そしてイシャさえも。 (俺は耐えなければならない。この守りに値する存在にならなければ)
俺は呻いた。地殻プレートが移動するような重低音だ。 「グオオオオオオッ……」
俺は押し返した。足を2センチ(1インチ)だけ伸ばす。 スタジアムが、2センチ持ち上がった 。
【ボスの出現】
俺の足元に積み上がる怪物の死体の山は高くなっていた。 3人は消耗しきっていた。ヴィクラムのスーツは火花を散らしている。リアのガジェットは尽きた。イシャは立っているのがやっとで、マナも空だ 。
その時、彼女が降り立った。
マヤ。
変幻自在は空から舞い降り、潰れた車のボンネットの上にふわりと着地した 。 誰もが血と埃まみれの中で、彼女だけがビジネススーツ一つ汚さず、完璧な姿で立っていた 。
彼女は俺を見上げた――空を支える巨神を。 そして、俺の足を守るボロボロの3人のティーンエイジャーを見た 。
「なんて愛らしいのかしら」マヤは微笑んだ。その顔が波打つ。「アリたちが丘を守ろうとしているなんて」
彼女が歩き出した。ヴィクラムが拳を構える。「下がれ」
マヤは下がらなかった。彼女の腕が変形し、長く、鋸歯状の灰色の「骨の刃」になった 。 「子供に構っている時間はないの」彼女はため息をついた 。
彼女が動いた。目で追えない速度だ。 ヴィクラムを抜き去る。リアを抜き去る 。 彼女の狙いは俺の右膝――最大の負荷がかかっている一点だ。もしそこの腱を切断されれば、俺の足は折れ、スタジアムは崩落する 。
「ダメッ!」イシャが悲鳴を上げた 。
イシャには魔法を使うマナがなかった。ブロックする速度もなかった 。 だから彼女は、唯一できることをした。 彼女は自分の体を投げ出したのだ 。
ズブッ。
マヤの骨の刃が、イシャの無事な方の肩を貫いた。 イシャは息を呑んだが、自分の体を使って刃を縫い止めた 。
「捕まえた」イシャは血を滴らせながら囁いた。「今よ、ヴィクラム!」
マヤの動きが一瞬止まった。 そして、ヴィクラムが必要としていたのはその一瞬だった 。
「限界突破!!」
ヴィクラムが絶叫した。彼はリアから最後の衝撃手榴弾を奪い取ると、投げなかった。 自分の機械式ガントレットの関節部分に、手榴弾を直接ねじ込んだのだ。 そして、マヤの顔面をぶん殴った 。
ドガァァァァァン!!
爆発がヴィクラムのガントレットを吹き飛ばした。イシャも後ろに吹き飛ぶ。 だが、マヤは通りの反対側まで消し飛んだ 。 変幻自在はショーウィンドウを突き破り、その姿は灰色のヘドロとなって崩れ落ち、また再生しようともがいた 。
マヤが立ち上がった。顔の半分が欠損し、ゆっくりと再生している。激怒していた。 「この害虫どもが……」彼女は唸った。「なぶり殺しにしてくれる!」
彼女は再び突進しようとした。
だがその時、彼女の上に影が落ちた。重低音の機械音が空気を震わせる 。 サーチライトが上空から俺たちを照らした。巨大で流線型の空中戦艦が雲を割って降下してくる。反重力エンジンが咆哮を上げる 。
ADTF(対魔特務隊)。
数十人のエリート狩人たちがパワードスーツで降下し、通りを包囲した 。 戦艦から重力アンカーが射出され、落下していたスタジアムを捕縛する 。
『市民、伏せなさい!』スピーカーが轟いた。『スタジアムの確保完了。重力スタビライザー起動』
俺は重さが軽くなるのを感じた。戦艦が負荷を引き受けてくれたのだ 。 マヤは戦艦を見た。エリート部隊を見た。そして俺たちを見た。 彼女は地面に唾を吐いた 。
「ゲームは一時中断ね」 彼女は囁いた。彼女は破壊された店の影へと後ずさった 。 数秒後、ADTFの兵士たちが店に突入した時、彼女はもう消えていた 。
【終幕】
重さが完全に消えた。スタジアムは再び浮遊し、軍の戦艦に保持されていた 。 俺の役割は終わった。アドレナリンが切れ、大地神の形態を維持できなくなる 。
『エネルギー枯渇』 『強制解除』
黒曜石の鎧が崩れ落ち、塵になった。俺のサイズが急速に縮む。 12メートル……6メートル……1.8メートル。俺は前に倒れ込んだ 。
地面にはぶつからなかった。 ヴィクラムが受け止めた。スーツはボロボロで、腕から血を流していたが、彼は俺を支えた 。
「よせ、巨神」ヴィクラムはぜえぜえと言った。「重いぞ」
俺は彼を見上げた。視界がぼやける。 「俺……落としたか?」俺は囁いた 。
「いいや」ヴィクラムはニヤリと笑い、浮遊するアリーナを見上げた。「お前が支えたんだ」
俺は横を見た。リアが、イシャの肩に包帯を巻いていた。 氷の女王は顔面蒼白だったが、俺に向かって小さく、疲れたように頷いてみせた 。
「俺たちの……勝ちか?」俺は尋ねた 。
「ああ」ヴィクラムは俺をそっと、破壊された舗装道路の上に寝かせた。「俺たちの勝ちだ」
俺は目を閉じた。サイレンの音も、歓声も遠ざかっていく。 最後に感じたのは、背中にある硬い、動かない大地の感触だった 。 初めて、それが「家」のように感じられた 。




