表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アストラ・リンク:天界と接続できる唯一の学生  作者: Aditya Kushwaha
Volume 2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/24

不動の物体《アンムーバブル・オブジェクト》

歯がガチガチと鳴りすぎて、砕けそうだった。


「ほ、ほ、本気で言ってるのか……?」 俺はロッカールームで3枚の保温ブランケットにくるまりながら、震える声で尋ねた。リアがヒートガンで俺の体温を戻そうとしている 。


「大真面目だ」 ヴィクラムは檻の中の虎のように部屋を行ったり来たりしていた。 「第2ラウンドは3分後に始まる。いいか、炎神(アグニ)を使えば、彼女は蒸気で対抗して凍らせてくる。風神(ヴァーユ)を使えば、足場を滑らせて凍らせてくる」


「つ、つまり……お前の作戦は……『何もしない』ってことか?」


ヴィクラムは足を止めた。俺の両肩を掴む。その力は強かった。


「何もしないんじゃない」彼は囁いた。「『耐えろ(タンク)』と言っているんだ」


「耐えろだ? 彼女は氷の大砲を持ってるんだぞ、ヴィクラム! 俺は柔らかいんだよ!」


「スタンドにいた偽物インポスターを見ただろう?」ヴィクラムの声のトーンが下がった 。


俺は固まった。「お前も見たのか?」


「リアがセンサーで確認した。Dセクションに擬態者(ミミック)がいた。だが、もういない」 ヴィクラムは顔を近づけた。 「変幻自在(シェイプシフター)の狙いは、お前をパニックにさせることだ。幽霊を探して走り回らせたいんだよ。奴に勝つ唯一の方法は、『気にしていない』と証明することだ。足を止めろ。観客を無視しろ。幽霊も無視しろ。お前を雪だるまにしようとしている少女だけに集中しろ」


彼は俺を立たせた。ブランケットが滑り落ちる。


「お前は炎じゃない。風でもない。今日のアリアン・シャルマは――『壁』だ」


【第2ラウンド】


凍てついたアリーナへの道は孤独だった。観客からはブーイングが飛んでくる。彼らは派手な炎の少年が見たいのであって、凍えた敗者は見たくないのだ 。


イシャは待っていた。退屈そうに見える。 「まだやる気?」彼女は声を張り上げた。「今度はどんなポーズの氷像にして欲しい? 土下座とかどう?」


俺は答えなかった。スタンドも見なかった。カメラも見なかった。 ただ氷原の中央まで歩いていった。 足を肩幅に開く。腕を組む。 目を閉じる。


(重力)俺は考えた。(あの重力を思い出せ。根を張れ。骨を花崗岩に変えろ)


『第2ラウンド、ファイト!』


「もう諦めたの?」イシャが嘲笑った。


彼女が手を上げた。周囲の空気が揺らめく。頭上に、槍のように鋭い巨大な氷柱つららが無数に形成される。


氷柱の雨(アイシクル・レイン)


彼女が指を鳴らした。 ヒュン、ヒュン、ヒュン!


氷の槍が俺に向かって飛んでくる。 本能が叫ぶ。『避けろ! 風神(ヴァーユ)を使え!』


(ダメだ)俺は自分の足に命じた。(動くな)


俺は深呼吸をした。 最初の一本が肩に当たった。 ザシュッ。 高価なサーマルスーツが裂け、皮膚が切れる。血が飛び散った。死ぬほど痛い 。


観客が息を呑んだ。 「動かないわ!」リアが通信機越しに叫んだ。「アリアン、シールドを!」


二本目が太ももに当たる。三本目が頬をかすめた。


(痛みはただの情報だ)俺は自分に言い聞かせた。(大地は侵食に耐える。大地は嵐に耐える)


神器(チャクラ)の中で、茶色の光が明滅をやめた。安定した。重くなる。 血管の中で地滑りが起きているような感覚だ 。


イシャが眉をひそめた。「自殺願望でもあるの? いいわ。動かないなら、埋めてあげる」


彼女が両手を打ち合わせた。アリーナの魔力(マナ)が急上昇する。 地面の氷が割れ、舞い上がり、雪と鋭利な氷の破片が渦巻く巨大な竜巻を形成した。 それは一点に集中した、文字通りのブリザードだった 。


吹雪砲(ブリザード・キャノン)絶対零度(ゼロ・ケルビン)!」


彼女が発射した。 戦車さえ飲み込むほどの、純白の冷気のビームが俺に向かって咆哮を上げる 。


俺は目を開けた。瞳はもう茶色ではなかった。 黄金に輝いていた 。


「システム」俺は囁いた。その声は、二つの岩が擦れ合うような音がした。「大地神(プリトヴィ)


俺はダイヤルを叩かなかった。ダイヤルが、自ら回転した。


化身(アバター)大地神(プリトヴィ)』 『シンクロ率:100%』


ズゴオオオオオッ!!


ブリザード・キャノンが直撃した。 衝撃がスタジアム全体を揺るがす。雪と氷の破片による巨大な雲が爆発的に上がり、すべてを覆い隠した。俺の足元の地面が粉砕される 。


観客が静まり返った。「直撃だ……」アナウンサーが囁いた。「あんなの……助かるわけが……」


イシャは手を下ろし、荒い息を吐いた。「バカな男」


粉塵が晴れ始めた。 だが、その中心に影が立っていた。 巨大な影が。


「な……?」イシャが後ずさった 。


風が雪を吹き飛ばした。 クレーターの中に立っていたのは、少年ではなかった。 それは「要塞」だった。


俺の身長は30センチほど伸びていた。皮膚は消え、黒曜石のプレートが鎧のように体を覆っている。 岩の裂け目からは、溶けた黄金の鉱脈が脈動していた。髪の毛はギザギザした結晶の棘へと硬化している 。


俺は自分の手を見下ろした。巨大で、重厚な石の籠手ガントレット。 寒さを感じない。痛みも感じない。 感じるのは……「硬度」だけだ 。


俺はイシャを見た。 「それだけか?」


俺の声が轟いた。マイクで増幅されたわけではない。ただ純粋に、物理的にデカい音だった 。


イシャの目が見開かれた。彼女はパニックになった。「アイス・ランス!」


彼女は巨大な氷の槍を俺の胸に撃ち込んだ。 カィィィン! それは俺の黒曜石の胸板に当たり、百万の破片となって砕け散った。感じもしなかった 。


俺は一歩も下がらなかった。 歩き出した。


ズシン。 ズシン。


一歩ごとに足下の氷がひび割れる。俺は氷の上を歩いているのではない。氷を粉砕しているのだ 。


イシャは後退した。「来ないで! 氷河の壁グレイシャル・ウォール!」


彼女は俺たちの間に高さ10メートルの氷壁を出現させた。 俺は止まらなかった。飛び越えもしなかった。 肩を低くし、そのまま壁を「通り抜け」た。


ガシャァァァン!


氷壁がガラスのように爆散した。俺は反対側へと歩き抜け、岩の肩についた氷の埃を払った 。


イシャは躓き、雪の上に尻餅をついた。彼女は俺を見上げた。恐怖に震え、傲慢さは消え失せていた。 俺は彼女の上に立ち、巨大な影を落とした 。


俺はゆっくりと、巨大な岩の手を上げた。 イシャは身を縮め、目をきつく閉じた。押し潰されることを覚悟して。


俺は手を伸ばし……そして、彼女の額をデコピンした。


パチン。


強くはなかった。だが、俺の筋力ではそれで十分だった。 イシャは後ろに吹き飛び、氷の上を20メートル滑ってアリーナの壁にぶつかった。彼女はぐったりと倒れ込み、気絶した 。


『勝者……チーム・アストラ!!』


一瞬の静寂の後、観客が爆発した。 「なんだあれ!? ゴーレムになったぞ!」「壁を歩いて通り抜けやがった!」


俺はそこに立ち、胸の黄金の鉱脈を脈動させていた。 俺は変幻自在(シェイプシフター)がいたVIP席を見上げた。


(もう逃げないぞ)俺は思った。(かかってこい)


『警告:魔力消費量甚大』 『大地神(プリトヴィ)、解除しますか?』


「ああ」俺は唸った。「解除だ。重すぎる」


岩が崩れ落ち、塵になった。俺は通常形態に戻り、わずかにふらついた。 ヴィクラムがフィールドに駆け込んできて、狂ったようにニヤついていた。


「『壁』だ!」ヴィクラムは俺の背中を叩いて叫んだ。「とんでもないイカレ野郎だ! 本当に絶対零度(ゼロ・ケルビン)を耐えやがった!」


「どうやら……」俺は呟いた。足が震えている。「座った方がよさそうだ」


そして俺は気絶した。だが今度は、笑顔で気絶した 。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ