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悪女による、華麗なる悪役一家プロデュース計画

作者: 特になし

「セレスティア! 貴様との婚約を破棄する!」


 婚約者である王子殿下の隣には、勝ち誇った表情の伯爵令嬢。まあ、想定の範囲内ね。


「貴様には代わりに辺境伯ユースティス・ロットバルトとの結婚を命じる。さっさとこの王都を出て、田舎に引っ込み、そして二度と私の前に姿を現すな」


 だけど、これは思いもよらなかったわ。遠い土地に追いやろうなんて、余程私が目障りなのかしら。


「新しい結婚の世話をしてくださるなんて、慈悲深くいらっしゃるのですわね」


「ふん、慈悲だと? あいにく、悪女たる貴様にやる慈悲など持ち合わせていない」


 そう。私、公爵令嬢セレスティアは、王都では悪女として有名だった。王子殿下とも、その寵愛を受ける伯爵令嬢とも敵対した、完全なる鼻つまみ者。だけど、私は悪女と呼ばれるのが好きだった。悪女には悪女の流儀がある。人々に嫌われながらも、その華麗で鮮烈な輝きで誰よりも存在感を放つ。それが私の目指す悪女像よ。


「相手はあのロットバルト伯爵だ。内心焦っているのだろう?」


 そして、ロットバルト伯爵もまた、王都までその汚名が届いている完全なる悪役。悪役同士の結婚。面白いじゃない。


「いいえ、私、喜んでそのお話をお受けいたしますわ」


 私は悪女らしく微笑んで、会場を後にした。



 さて、王都を離れること十数日。私はようやく辺境伯邸へとたどり着いた……のだけれど。あら、出迎えもないのかしら。あちらからも随分と嫌われているようで。


 私は屋敷の入口の扉を開ける。途端、頭から水がばしゃりと降り注ぐ。


「あなたが婚約破棄された負け犬女ね!」


 目の前には、にやにやと笑っているおちびさんが一人。


「下品な女にはその格好がお似合いよ。お父様に取り込もうたって、好きにはさせないんだから。分かったら、出直してくることね」


 ユースティス様には娘がいる。名前はティファナ。前妻との間の子供。まあ、その前妻は夫に嫌気がさして逃げ出したらしいけれど。


 ティファナもまた、父親と並んで評判が悪い。他の令息令嬢と関わる度、トラブルを起こし続けた結果、巷では悪女だとか言われているのだとか。


「取り込もう、ではなくて、取り入ろう、よ。お馬鹿さん」


 だけど、こんなおちびさんが悪女だなんて、とんだお笑い種だわ。この程度、子供のくだらないいたずらじゃない。


「別に間違ってないもん。わざとだもん!」


「あら、そうなの? どちらにしろ、お出迎えしてくださるなんて嬉しいわ。こんな仕掛けまでして。もしかして、私が来るまでずっとここに待機していたのかしら。ご苦労様ね」


 扇子を広げ、くすっと笑みを浮かべる。それだけで、ティファナは顔を赤くして逃げて行った。まあ、随分とあっけないのね。


「ようこそお越しくださいました」


 代わりに現れた家令が、私のことを案内する。


「旦那様はほとんどお屋敷にはお戻りになりませんので、そのおつもりで」


 家令の話を聞きながら、私は家の中を見回す。随分と趣味の悪い家だこと。変にぎらついた装飾品が、ごたごたと飾られているわ。きっと全部偽物ね。試しに手すりをこすって見ると、真っ白な埃が指につくし、掃除もきちんとされていないみたい。


 これは、想定外のめちゃくちゃさだわ。もしかすると、ロットバルト家の内情は、私が聞いていた通りじゃないのかも。



 その日の夜、私は旦那様抜きの夕食の席に着く。テーブルの遥か彼方、ふくれっ面のティファナは、私と目が合うと、ぷいと顔をそむけた。


「美味しくない。ティファナ、こんなのいらない」


 ティファナは食器を床に落とす。家令やメイドが、ため息をこぼす。


「まったく、困った子ね。私が正しい文句の言い方を教えてあげるわ」


 私は家令を見る。


「先ほど、帳簿を見させてもらったの。随分と食事に費用がかかっているようだけど、それに見合う食材が使われているのか疑問だわ」


「そ、それは……」


 家令の額には、冷や汗が浮かんでいる。


「家具や調度品も、値段と見合っているとは思えないの。私が新しく選びなおすから、そのつもりで。これからこの家で何か購入する時は、必ず女主人の私に確認を取ってちょうだい」


 使用人たちは、素早く視線を交わす。この反応、やっぱり黒ね。この家で使われているのは、それも粗悪品ばかり。主人に放置されているのをいいことに、帳簿に付けた金額より安価な代替品を使って、浮いた費用を横領している。さしずめそんなところでしょう。


 さて、それから、私は順調に家の中を作り直していった。ロットバルト邸は、堂々たる悪役にふさわしい、品のある内装になった。


 使用人たちは一掃しようかとも思ったけれど、あえて取り込むことにした。この屋敷の使用人は、そろいもそろってお金にがめつい。だけど、私、がめついのは嫌いじゃないの。利にさとい方が、頭が悪いよりよっぽど上手く動いてくれる。


 あちらも誰に従うのが得策か判断したのね。数日もたつころには、みんな忠実な使用人になってくれた。


 そんな中、ティファナはまだ私に反抗してくる。私だけじゃなくて、使用人たちに対しても、いつもぎゃあぎゃあわめいていて。この娘をどうしましょう。自分をしかる存在もなく、望みも全部かなえてもらえる、自己中心的なわがまま娘。話で聞くティファナは、そういう子供だった。だけど……。


「まったくお嬢様は……。なんであんなのに付き合わないといけないんだか」

「下賤な血が入っているせいよ」

「そうそう。噂じゃ、本当は旦那様の娘じゃ……」

「こら、それはだめだろ。とにかく」


 ティファナの後始末をしながら、使用人たちが毒づいている。


「あら、盛り上がっているようね」


 現れた私に、使用人たちの顔がほころぶ。この笑顔、いかにも小悪党ね。


「お嬢様の、奥様に対するひどい言動の数々。私たち使用人一同、奥様のご心労のほど、よく分かります。何かありましたら、ぜひ私共にお伝えくださいませ」


 一般的な継母なら、使用人たちをけしかけて、一緒にティファナをいじめでもするのかしら。だけど、私はそういう安っぽい悪役じゃないの。


「あいにく、私は自分の手で娘を教育することくらいできるわ。こそこそと陰口をたたいている暇があったら、調度品の運搬に回ってちょうだい」


 期待外れの反応に、使用人たちは逃げるように去っていった。


「あなたも、泣いている暇があったら、もっとするべきことがあるはずよ」


 私は柱の陰でべそをかいていたティファナに言った。実は、さっきから気付いていたのよ。


「みんなの気を引くために、問題ばかり起こしていた。そうなのでしょう?」


この子は悪女でも、意地の悪い子供でもない。ただの寂しい女の子だ。


「だって、お父様、ティファナのこと見てくれないんだもん。お母様だってティファナのこと置いて出て行っちゃった。屋敷のみんなも、ティファナのこといっつも放っておいて。悪女になれば、みんな、ティファナに構ってくれると思ったんだもん」


「構ってもらおうだなんて、とんだ甘い考えね」


 だけど、私は悪女。優しく言葉なんてかけてあげないわ。


「いい? 本物の悪役っていうのは、その華麗で鮮烈な輝きで、人々の視線を引き付けるものなのよ。目障りと思われ、憎まれたとして、人々は気になって仕方ない。そんな悪女になりなさい」


「なりなさいって言われても……」


「安心なさい。私があなたを立派な悪女に育てるわ」


「……娘を悪女にしようだなんて、とんだ悪いお母様ね」


 ティファナは、ふっと笑った。


 そして、悪女教育が始まった。


「悪役こそ、知識と教養が求められるものよ。決め台詞を間違えるのはもう卒業よ」

「マナーや礼儀作法は完璧に。不作法は品のない小悪党に見えてしまう原因よ」

「その笑い方じゃ、ただのいじめっ子だわ。扇子を取り出すタイミングはこう……。顔の角度は……。口元は……」


 ティファナもまた、変わり始めた。


 さて、後は旦那様ね。妻は家出。商人とは癒着。領地は荒れ果て、中央への税も滞っている。それが王都で耳にした話。けれど、私はここで情報を集め、一つの結論にたどり着いた。



 その日、ついにユースティス様が屋敷に戻ってきた。


「お初にお目にかかります。セレスティアですわ」


 年齢は私より十も上。顔立ちは、噂にたがわぬ悪人面ね。


「そうか。婚約破棄の件、ご心労のことだろう」


「いいえ、ご心配には及びません。私、ここに来るのが楽しみでしたの。ロットバルト伯爵といえば、私と同じく、悪名高い方ですもの。いったいどんな方かと期待しておりましたが……。正直、期待外れです」


 ぴくりとユースティス様の眉毛が動く。


「妻には托卵の上、逃亡される。使用人たちには侮られ、屋敷の中はめちゃくちゃ。もはや領地の支配権はなく、大商人、豪農らが我が物顔で牛耳っている。悪役が聞いてあきれます。あなたはただいいように利用されているだけの人間です」


 これは、使用人から聞き出したことだ。離婚の原因は、ユースティス様じゃない。前妻は、結婚した時点で既に別の男の子を身ごもっていた。ユースティス様はそれに目をつぶった。しかし、前妻はあろうことか、生まれたばかりの娘を置いて、男のもとへ走ってしまったのだ。彼が口をつぐんでいるのをいいことに、散々に彼に問題があったかのようにでっち上げて。


 この話を聞いて、普通なら、あら、悪人じゃなくて、いい人なのね。良かったわ——とでも言うのかもしれない。けれど、私はそうは思わなかった。


「いいように利用され、陰で嘲笑われる。そのような悪役、私はごめんです。悪役というより、ただ頭が悪いとしか思えません。あなたにはまるで悪役たる輝きがないのです」


 目の前にいるのは、もはや全てを諦め、ただ周囲に流されるまま生きている人だった。


「それはあなたも同じではないか。婚約を破棄され、都を追われ、私を押し付けられた。もはや、あなたに何の輝かしさがあるというのだ? そもそも、悪役というものは輝かしいものではない。結局、我々は人生の敗者。人々から見放され、見下げられる存在でしかない。あがくだけ無駄なことだ」


 人生の敗者……。王子殿下が心変わりをされ、私は瞬く間に悪女になってしまった。最初は受け入れられなかった。私は負けたのだと、そう思った。


「それでも、私には悪女としての矜持があります。たとえ人々に嫌われようが、憎まれようが、私は自分の誇れる、輝かしい悪役像を貫きます。そうする限り、私は負けないのです」


「あなたは……諦めていないのだな」


「ええ。そして私は、ユースティス様のことも諦めておりません。妻として、私があなたをプロデュースします。必ずや、あなたを立派な悪役に……ロットバルト家を、華麗なる悪役一家にしてみせますわ」


「……そうか。ならば、あなたの好きなようにやってみるといい」



 さて、言ってしまったらもうやるしかない。ロットバルト家を、華麗なる悪役一家にするため、まず、財政を立て直さなくちゃ。


 ロットバルト領では、商人たちがかなり力を持っている。私はその商人たちを抱き込むことに成功した。ユースティス様が今まで何もしていなかったのが、逆に幸いだったわ。ロットバルト領は、自由に動ける場所として、多くのやり手商人——要するに悪人の一種ね——らが集まっていた。悪人同士は、利害関係の一致ですぐに仲良くなれるものなのよ。


 さあ、これから彼らと協力して、この領地を発展させましょう。


 ユースティス様は、言葉通り、私に好きなようにやらせてくれた。まさかここまでやらせてくれるとは思わなかった。王子殿下には、少し進言しただけで、目障りだと嫌な顔をされてしまったのに。それどころか、ユースティス様は、積極的にサポートしてくれるまでになっている。


「あなたが目障りかだって? まさか、とんでもない」


 私の質問に、ユースティス様は言った。


「あなたのことは尊敬している。逆境の中でも、誇り高く生きているところにな。私も見てみたくなってしまった。あなたの言う、華麗で鮮烈な輝きを放つ悪役というものをな。正直に言うと、あなたが来てくれてから、私はとてもわくわくしているのだ」


 怒られるどころか、褒められてしまったわ。変なの……。何かしら、この感情は。想定外よ。


「それに、あなたのおかげで、ティファナも幸福そうだ。感謝している」


 そうだった。その問題が解決していないのだったわ。


「ティファナは、私が本物の父でないことを知っている。私はあの子から、母親だけでなく、本物の父親すらも奪ってしまったのだ。その私が父親面をすることは、決して許されることではない。だから、あなたがあの子の側にいてくれて、とても助かる」


 こればかりは、私にはどうしようもないのかしら……。



 そんなある日、一人の女が屋敷にやってきた。前妻が今更になって戻ってきたのだ。どうやら、例の不倫相手ともうまくいかなくなって、元の鞘に収まろうという算段だとか。


 前妻を前に、私、ユースティス様、ティファナが座る。


「私には既に新しい妻がいる。あなたの戻る場所はない」


 ユースティス様が重い口を開いた。


「妻? 王子殿下の怒りを買って、婚約破棄をされた負け犬の? そんな女を置いておく利点なんて何もないわ。私はティファナの母親よ。ここにいる権利があるの。そうでしょう、ティファナ? こんな下品な女が側にいるより、本物のお母様がいた方がいいわよね?」


 けれど、

「何を言っているのかしら。あなたが私のお母様ですって? 私のお母様は、セレスティア・ロットバルト、ただ一人よ。勘違いしないでくださる?」

と、ティファナは私が教えた通り、扇子を取り出し、華麗に悪女らしく笑った。


 それに、母親の顔が赤黒く染まっていく。 


「そう。それが母親に対する物言いなのね。ティファナ、言っておくけど、あんたはこの家の子供じゃないから。子供も偽物。母親も偽物。ほんと、滑稽だわ。かわいそうなくらいにね。こんな最悪な家族、今までお目にかかったことがない」


 ひどい言い草ね。ここは悪女たる私がびしっと——


「私の前で、妻と娘を愚弄するとは、随分といい度胸をしているな」


 その時、ユースティス様が、骨の髄まで凍てつくような、冷たい声を出した。


「さっさと目の前から消えろ。三秒以内だ。さもなくば、貴様を豚の飼料箱の中に入れて、そのまま船に乗せ、外国に送るぞ」


 人って、こんなに恐ろしい顔ができるものなのね……。


「あんたたちのこと、全部言いふらしてやるから!」


 前妻はわめいていたけれど、使用人たちに連れ去られていった。


「少しは悪役らしく振舞えただろうか」


 しばらくたって、ユースティス様はそう言った。


「……ええ。なかなか様になってきましたわ。ユースティス様も、そしてティファナもね」


「お母様の特訓のおかげよ。ありがとう」


 そう言った後、

「お父様もありがとう。ティファナのこと、娘って言ってくれて」

と、ティファナは小さな声で言った。


「……たとえ何と言われようが、あなたは私の大切な娘だと思っている。これからはあなたと、父親として向き合っていきたい。もし、あなたがいいと言ってくれるのならだが」


 震えるその声に、ティファナは静かに頷いた。きっとこの二人はもう大丈夫ね。


「二人とも、私をかばってくれてありがとう」


 結局、私は何も言わないまま、気付けばこの二人に守られる形になっていた。


「当たり前だ。我々はもう家族なのだから」

「そうよ。セレスティアは、私のお母様だもん」


 守ってもらうなんて、悪女失格かしら。それとも、今の表情の方が失格かしら。なんだか顔が熱い。家族になるのが、この二人で良かった。心からそう思う。きっと私は、もうこの二人のことが大好きなのね。



 それからも私の改革は進み、ロットバルト領は、目覚ましい発展を見せていった。


 既に繋がりのあった商人へ多額の融資を行い、彼らの事業は拡大。商売の独占を認める代わり、売上の一部をおさめさせる。陸路や海路の整備を進め、どんどん関税が入ってくる。特に港の整備は、国外との取引も活発にし、収入はかつての数十倍にも膨らんだ。


 貴族の面々は、ここを汚い金で作られた虚栄の町だと罵っているとか。私たち夫婦は、悪徳領主夫妻といったところね。まあ、中央にいるのは、勃興する商人の力を知らない、旧態依然とした方々だもの。そういえば、私が王子殿下の反感を買ったのは、それを批判したためだったのよね。懐かしいわ。


 私は悪徳領主の妻として、忙しく日々を送っていた。気が付けば、婚約破棄から七年の月日がたっている。あの時、おちびさんだったティファナも、今では十七歳。下に生まれた六歳の息子、そして四歳と二歳の娘も加わって、我がロットバルト家は随分と賑やかになっていた。


「訪れる若者たちは、皆ティファナに執心と聞く。男をたぶらかす悪女として、その悪名は国外にまで轟いているらしいぞ」


 ユースティス様が笑いながら言う。


「さすがティファナだわ」


「ほんと、変なお父様とお母様ね。娘が悪女なんて呼ばれて、こんなに嬉しがる両親なんて、ここ以外にいないわよ」


 ティファナは呆れたように、けれども楽しそうに笑った。


「そういえば、国王陛下から手紙が届いていた。セレスティアと私に、一度王都に赴くように、とな」


 国王陛下——あの時、私を厄介払いした王子殿下。


「あらあら、ついに私たちのことを無視できなくなってきたのかしら」


 面白いこと。私のことが邪魔で、辺境に追い払った当本人が呼び出してくるなんて。



 私はユースティス様と、ティファナと、三人で王都へ赴いた。


「ロットバルト伯爵、ぜひお見知りおきを」

「ティファナ嬢、あなたの美しさは常々伺っておりました」


 パーティー会場に足を踏み入れると、ロットバルト家のおこぼれにあずかりたい人々が群がってくる。


 一方、壁際から不満そうににらみつける人々も多い。けれど、彼らの目には、決して侮りの色はなかった。嫌うことはできても、侮ることなんて、きっとできないはずよ。だって、私の夫も娘も、あんなに素敵で輝かしい悪役なんだもの。


 さて、私は私で用事を済ませなきゃ。


「久しぶりだな、セレスティア」


 振り向くと、かつての王子殿下と伯爵令嬢がそこにいた。のだけれど……この二人、こんなに存在感のない方達だったかしら。そう思ったけれど、そういえば、私たちを皮切りに、貴族たちが各々経済力を付けた結果、国王の力はあっという間に弱まったんだったわ。


「お久しぶりですわ。殿下……ではなく陛下。随分とおやつれのようにお見受けしますが」


「誰のせいだと思っている。全ては貴様のせいだ」


「おっしゃる意味が分かりません。私はあなたの命令に従って、ロットバルト家に嫁ぎましたのに」


「……貴様は何も変わらないな。とんだ悪人、いや、さらに汚れ切った極悪人だ。貴様も、貴様の家族もな」


「まあ、それは最高の誉め言葉です」


 七年前と同じ、悪女の笑みを浮かべ、私は国王陛下の前を去った。前と違うのは、同じ笑みを浮かべながら、向こうで家族が私を待っていることね。

最後までお読みくださりありがとうございます。

追記を失礼します。1月27日に、「聖女の私を追放したせいでこの国は滅ぶ——かと思いきや、まさか敵国最高戦力も追放されていたとは……。」を投稿しました。追放ものです。まだあまり読んでいただけていないので、よろしければ、こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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尻切れトンボな印象。そもそも口が悪い以外に悪役要素も無いし、ラストの王からの呼び出しも何がしたかったのか意味分からん
お話面白かったです! 最後、これからどうなるのかなと思わせたところで終わったのがもったいないかなと思います 出てくる登場人物が魅力的なのが良かったです!
タグに「ざまぁ」とありますが、正直「微ざまぁ」といったところかと。 折角理想の悪女として輝いてるのに、再会エンドは勿体無いです。
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