(9)#久しぶりにやりたくなって
「ふあぁぁ」
朝日で目が覚めた私は大きくあくびをしながら、ベッドの上で体をほぐした。
「うーん。やっぱりなまっているな」
しばらく宿屋の仕事以外で体を動かしていないので、ちょっと運動不足な気がしていたのだ。
あとはダンとの食事が楽しく食べ過ぎているせいで、最近スタイルが気にもなっている。
「いきなりダンジョンは危ないかな」
親父が生きていた頃は冒険者として世界を周り、あらゆるモンスターや強者達をなぎ倒したものだが、しばらく実戦からは遠ざかっていた。
「そうだ。ベロニカ姉さんに相手してもらうか」
ベロニカ姉さんには、フリーダムに来てから妹のように可愛いがってもらっている。
「でもいきなり行っても会えないか」
ベロニカは王宮に常駐する騎士団の団長だから、おいそれと会える人間ではない。
「仕方ない。トールに相手してもらうか」
私はトールに相手をしてもらう為、騎士団の駐在地へと向かった。
「あっ、セーラさん。ここに来るなんて珍しいですね」
門番をしていた顔見知りの騎士がセーラに声を掛けてきた。
「久しぶりに体を動かしたくてさ。トールはいる?」
「今日はダンジョンに行ってます」
「わざわざトールが?」
普通はダンジョンの見回りは、一般騎士が行くものなのでセーラは少し驚いた。
「実は採掘職人から気になる報告がありまして」
「おっ珍しい奴がいるな」
「げっ」
門番の説明を遮り、ガサツな感じで話し掛けてきた男を見て、思わず私は声を上げた。