(7)#気になる?
「セーラ」
仕事へ向かっていたら後ろから名前を呼ばれたので、立ち止まり振り返った。
「ダリアか。おはよう」
「おはようさん。私で悪かったね」
「別に悪くはないよ」
ニヒヒと笑いながらダリアが言ってきたので、私は動揺を見せないように言葉を返す。
「そうかい?思いっきり残念な顔してたけど」
「誰もそんな顔してないだろ」
自分でもよくわからないが、ダリアにからかわれたことにムキになってしまった。
「まあそういうことにしておくよ」
ダリアは私の言葉を、ムキになる子供を見るような笑顔で受け流す。
「じゃあね。仕事頑張りな」
「ああ。また今度」
「そうだ。ちゃんとダンも連れて来るんだよ」
「うるさい」
去り際にもう1度からってきたダリアに、私は顔を赤くして怒鳴った。
「まったくダリアのバカ」
宿屋に着いても体が熱いままの私はぶつぶつ言いながら中に入った。
「あっ、セーラ。おはよう」
入り口の所で大浴場から戻って来たダンに、爽やかな笑顔で挨拶された。
「おっ、おは、おはよう」
噛み噛みの挨拶になってしまい、私は顔が赤くなってしまう。
「大丈夫か?顔赤いけど」
ダンは私の体調を心配して訊いてきた。
「別に平気だよ」
「そうか。ならいいけど」
つい語気が強くなってしまったが、ダンは気にしてない様子に見えた。
「そうだ。昨日はありがとう。セーラが良ければ今日の夜もダリアさんの店に行かないか?」
「私はかまわないよ」
「助かるよ。じゃあ、また夜に」
「ああ」
自分の部屋に戻って行くダンが階段を登りきったのを確認し、私は無意識に鼻歌を歌いながら仕事の準備を始めた。