(5)#異世界人との初ディナー③
「かなり冷えているな。こっちの世界はどうやって冷やしているんだ?」
ゲールを飲んだダンは美味そうな顔をした後、不思議そうに訊いてきた。
「グラスに冷却魔法がかけてあるんだよ」
「魔法か」
ダンはマジマジとグラスを見つめていたと思ったら、魔法についてあれこれ質問をしてきた。
「ほい。お待たせ」
ダンの質問攻めに面倒くさくなってきた頃、ダリアがガーウルフのステーキを運んできた。
「待ってました」
腹が減っていたのと、ダンのせいで疲れたのもあり、思わずヨダレを垂らしそうなぐらいテンションが上がってしまった。
「これは美味そうだ」
「だろう?」
ダンの顔が明るくなったのを見て、私は自分でもわからないがさらにテンションが上がった。
「いただきます」
「いただきます?」
ダンが聞き慣れない言葉を口にしながら、見慣れない動作をしたので思わず繰り返して訊いた。
「ああ。これは俺の世界の挨拶だよ」
「へえ。わざわざ口に出すんだね」
どうやらダンの世界では食事する前に決まった文句と動作があるようだ。
こっちの世界では種族で違うが、基本的には心の中で祈るだけである。
「よし、食べようぜ」
空腹を早く満たしたい私は、ダンに声を掛け食事を始めた。
「これ、よく食べるのか?」
ステーキを指差してダンが私に訊く。
「ああ。この街の周りでよく出るからね」
「もしかして、こいつか?」
はっきりとは映ってなかったが、ダンがスマホで見せてきた画像にはガーウルフらしきものが映っていた。
「ああ。こいつだよ」
「マジか。コイツ、こんなに美味かったのか」
ダンは驚きつつ、ガーウルフのステーキをガツガツと口にしていった。