(37)#ロベルトの初恋①
「おい、どういうつもりだ」
ベロニカ姉さんの衝撃的なキスの翌日、仕事を終えて家に帰ると、ロベルトが仁王立ちで待っていた。
「えーと、何のことでしょうか?」
私はとぼけて家に入ろうとロベルトの横を通り過ぎる。
「そんなので誤魔化せるか」
家の鍵を開けドアノブに手を掛けた瞬間、ロベルトのむさ苦しい大きな手がドアに張り手をかましてきた。
「はいはい降参。中で聞くわよ」
私は観念し、ロベルトの手をどけて家に入った。
「それで何が聞きたいの?」
私はお茶の用意をしながら、悪びれもせず強気な態度でロベルトに質問する。
「何がって、俺も何が聞きたいのかわかってないんだよ」
いつものガサツさはなく、ロベルトはうぶな少年のように顔を赤くしながら言った。
「これでも飲んで落ち着きなよ」
私はカップをロベルトに差し出し、自分も椅子に座りながらお茶を口にする。
「いつからだ?」
「何が?」
「あいつは、いつから、その、俺のことを、だな」
いつものうるさい声量ではなく、人見知りした子供のような小さい声でボソボソとロベルトは話す。
「子供の頃からって言ってたわよ」
「そんな前から?いや、そんな素ぶりは」
予想していなかった答えに、ロベルトは驚きを隠せないでいた。
「はぁぁぁ」
私はあまりの鈍感ぶりに盛大な溜息をついた。
「わかるわけないだろ。会えば小言ばかりで、俺のことなんか眼中にあるわけないと思ってだな」
「えっ?もしかして、あんたも昔からベロニカ姉さんのこと好きだったの?」
もじもじと赤面しながら話す態度に、私はピンときてロベルトに訊いた。
「ああそうだよ」
似たもの同士というか、白状する言い方もベロニカ姉さんとそっくりだ。
「なら決まりだね」
「は?」
ニヤニヤする私を、キョトンとした顔でロベルトは見ていた。
「両思いなんだから、付き合えばいいじゃないってことよ」
「・・・・・・」
「何よ。付き合いたくないの?」
押し黙るロベルトにじれったくなり、私は睨みながら訊いた。
「嫌なわけあるか。むしろ結婚したいぐらいだ」
「マジで?」
いきなりの告白に、私は素っ頓狂な声を出してしまった。




