(34)#ロベルト攻略作戦②
「おい、ダリアの店に行くんじゃないのか?」
普段来ない通りを歩く私にロベルトが声を掛ける。
「たまには違う所で食べたいじゃない」
作戦の為に私はテキトーに答えた。
「まあ美味ければどこでもいいが」
こちらの企みに気づく様子もなく、緊張感のない顔をしたロベルトはあくびしながら後ろを歩いている。
「着いたよ」
「おいおい。こんな高い店とは聞いてないぞ」
私の視線の先を見たロベルトは、嫌面全開でボヤいた。
「可愛い妹にたまにはご馳走様しなさいよ」
「コラ、こういうときだけ妹になるな」
私は有無を言わさず、ロベルトの背中を押して店に入った。
「いらっしゃいませ」
「あっ、予約しておいたロベルトです」
出迎えてくれた給仕の女の子に、私はロベルトの背中から顔を出して名乗った。
「少々お待ちくださいませ。ご案内お願いしまーす」
女の子は近くのカウンターで作業していた男性に声を掛けた。
「いらっしゃいませロベルト様」
女の子から引き継いだ男性がこちらに来て挨拶した。
「お連れ様は先にいらっしゃってます」
「連れ?何のことだセーラ?おい、どこ行った?」
キョロキョロするロベルトを、私は少し離れた廊下の曲がり角に姿を隠し観察する。
「お客様どうぞ」
「お、おう」
男性に促されたロベルトは、私を探すのを諦めて歩き出した。
「頼んだよ」
私はダンが買ってくれた自撮り君に後をつけさせた。
「失礼します。お連れ様がいらっしゃいました。どうぞ」
部屋の前に来た男性は立ち止まり、ノックして扉を開けた。
「お待たせして申し訳」
誰がいるかわからないロベルトは、丁寧な姿勢で挨拶しようとしたが、中にいる人物を見て硬直した。
「プッ。驚いてる驚いてる」
近くの酒場で様子を観察していた私は、自撮り君用の観察モニターに映るロベルトの間抜けな姿に笑ってしまう。
「何をボーッとしている。座ったらどうだ」
真っ白のドレスを着たベロニカ姉さんが、いつもの凛々しい顔でロベルトに言った。
「おお、おう」
ロベルトは見たことのないベロニカ姉さんに、明らかにドキドキした様子で席についた。




