(32)#女子会④
「ヒュー、あんたも言うようになったねえ」
ダリアが私をからかったことで、重くなっていた空気が少し軽くなる。
「うるさいなぁ」
真剣になった反動で急に恥ずかしくなった私は、真っ赤になった顔を両手で覆った。
「まあ先のことはそのとき考えればいいだろうし、今はダンとの時間を楽しめばいいんじゃないのかい?」
ダリアはそう言い、優しく私の背中をさすってくれた。
「で、あいつとはどうなんだい?」
「あいつとは?」
ダリアに訊かれ、ベロニカ姉さんが訊き返す。
「ロベルトだよ、ロ、べ、ル、ト」
「何であいつが出てくるんですか?」
上品に食事をしていたベロニカ姉さんだったが、動揺してフォークを皿の上に落とした。
「だって惚れてるんだろ?」
「えっ?そうだったの?」
ダリアの言葉に私は驚いて席を立つ。
「誰があんなガサツな男」
ダリアのイタズラかと思ったが、ベロニカ姉さんの顔を見ると的外れというわけでもなさそうだった。
「いつから?いつからなの?」
興奮した私は、ベロニカ姉さんにグッと顔を近づけ訊く。
「だから違うと言っているだろう」
ベロニカ姉さんは私を両手で押し返しながら否定した。
「子供の頃からだよ」
自分のことのようにダリアが言い切った。
「子供の頃?」
ダリアが断定したことより、意外な時期だったことが気になり私はベロニカ姉さんを見る。
「この子とロベルトは幼馴染なんだよ」
「そうだったの?」
ベロニカ姉さんと何年もの付き合いなのに、まだ知らないことがあるんだと驚く。
「親同士が騎士団の同期だっただけだ」
「こんなこと言ったらなんだけどさ、あんなのがベロニカ姉さんの好みだったのが意外だよ」
自分でもひどいこと言っているとは思ったけど、美女と野獣という言葉しか浮かばなかった。
「この子は見た目じゃなくて中身に惚れたのさ」
「別にあたしだってダンの見た目だけを好きになったわけじゃないし」
ただの面食いみたいだと思われたくなくて、私は少しムキになって否定した。
「あれはあれで凛々しくてだな」
ロベルトの外見を私達がけなしているのを気にしていたらしく、恥ずかしそうにベロニカ姉さんが言った。
「え?なになに?何て言ったの?」
ベロニカ姉さんがポロッとこぼした言葉に、私はイタズラ心むき出しで訊きまくる。
「あーーー、わかった。そうだ、私はアイツに惚れている」
開き直ったベロニカ姉さんは、自分の気持ちを大声で白状した。




