(30)#女子会②
「仕方ないだろ」
「たーべーたーいー」
ベロニカ姉さんに嗜められたが、私は駄々っ子みたいな態度で答えた。
「大したもんは作れないけど、食っていくかい?」
やり取りを見ていたダリアが少し考えてから言ってきた。
「いいの?やったね」
私はガッツポーズをして喜んだ。
「大変なときにいいんですか?こいつのわがままは無視していいですよ」
ベロニカ姉さんは申し訳なさそうにダリアに訊いた。
「別にかまわないよ。どうせ家で食べるつもりだったし」
「それならご主人の分がなくなりませんか?」
「バカ亭主はここぞとばかりに飲みに行ったから、全然気にしなくていいよ」
「だってさ」
私はニヒヒと笑いながらベロニカ姉さんを強引に席に座らせた。
「ダリア、私も手伝うよ」
「じゃあそこの野菜を切っとくれ」
「わかった」
「私も何か」
「あんたは座ってな」
「ベロニカ姉さんは休んでて」
席を立ったベロニカ姉さんを、私とダリアはほぼ同時に止めた。
「何よ2人して」
ちょっといじけながらベロニカ姉さんはゆっくりと座り直した。
「フフフ」
いじけるベロニカ姉さんを見てダリアは微笑んだ。
「あんな子供みたいな顔するの久しぶりに見た」
私も微笑みダリアに言った。
「普段は団長様だからね」
男社会の騎士団で団長を務めるのは、相当な気苦労があるはずだ。
「ダリアさん、テーブル拭きはこれでいいですか?」
「いいよ」
黙って座っているのに耐えかねてベロニカ姉さんは、テーブルを拭いたり、食器を用意したりし始めた。
「はいよー。お待たせ」
手早く調理を終えたダリアは、ベロニカ姉さんが用意した皿に盛り付けていく。
「美味そう」
有り合わせで作ったと思えない品に、思わず私はヨダレを垂らしそうになる。
「お前って奴は、みっともないぞ」
呆れた様子のベロニカ姉さんに注意されてしまった。
「2人ともゲールでいいかい?」
ジョッキをこちらに見せながらダリアが訊いてきた。
「いいよ」
「私もそれでお願いします」
「あいよ」
ダリアは軽快な返事をし、手早くゲールをジョッキに注いでいく。
「はい、お待たせ」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
ダリアの手からゲールを受け取り、私とベロニカ姉さんは礼を言った。
「さあ食べるよ。ほい、乾杯」
自分のゲールを手に持ち席に座ったダリアは、私達を急かしつつジョッキをぶつけ乾杯する。
「かんぱーい」
「乾杯」
うるさい私に続いて静かにベロニカ姉さんも乾杯した。




