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(27)#ダンが大使になるみたい

「セーラさん」

「トール。どうしたの?」


 珍しく宿屋にトールが訪ねてきたので、私は少し驚いた。


「ええと」

「じっれたいな」


 もじもじとするトールにイラッとしてしまう。


「ダンさんに大使をお願いすることになったんです」

「それで私に何の用なわけ?」

「行き先がビルダーランドなんです」

「そういこと」


 行き先を聞き、言いたいことを理解した。


「ロベルトに頼まれて来たってわけね」

「はい」

「わかったわ」

「よろしくお願いします」


 気まずい用事を済ませたトールは、さっさと帰って行った。

 

 

「おかえり」


 帰って来たダンを、いつもより可愛いらしい笑顔で出迎えた。


「ただいま」


 ダンは申し訳いからか、顔がひきつっている。


「大丈夫?だいぶ疲れているみたいだけど」


 私は何も知らないフリをして訊く。

 

「うん、大丈夫だよ。久しぶりに城に行ったからかな」

「もう少しで出来るから、先にお風呂浴びてきたら?」

「そうするよ」


 ダンを風呂へ行かせ、料理を続けた。


 そう言えば、この世界は魔法石で湯を沸かすが、ダンの世界ではガスというもので沸かすらしい。

 


「おーい。まだか?一緒に入っちゃうぞ」


 いつもより長めに風呂に入っていたので、私はおじさんみたいなノリで中を覗いた。

 

「バカ、閉めろよ」

「なーに恥ずかしがってるんだよ。ニヒヒ」


 恥ずかしがっているのがおかしくて、変にテンションが上がった私は扉を閉めて立ち去った。



「遅いよ。冷めちゃったから少し待って」

「セーラ、話があるから座ってくれ」

「何だよ改まって」


 話すことはわかっていたが、何も言わずダンの正面に座った。


「大使としてビルダーランドに行こうと思う」

「そうか。用心して行けよ」


 ダンが気にしないようさらっと返事をし、私は立ち上がり料理を再開した。


「ゴメン」


 ゆっくり後ろから抱きしめ、ダンは謝る。


「バーカ。謝んなよ」

「すぐ帰ってくるから」

「王様からの頼みなんだろ。気にせずやってこいよ」


 明るく振る舞ったつもりだが、ダンにはバレていると思う。


「ありがとう。それにしても美味しいそうな匂いだな」


 ダンも明るく振る舞って話題を変えてきた。


「今日はいい魚があったから。煮付けを作ってみたんだ」

「うん。ホント美味しそうだ」

「そうだ。ビルダーランドは鉱石が豊富らしいぞ」

「鉱石?」

「そう。加工したものの輝きは美しいらしいんだよね〜」

「かしこまりました。お姫様」


 ダンは私の静かな圧を感じたらしく、オーバーなアクションでお辞儀をした。

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