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(20)#同棲が始まりました

「マスター、お世話になりました」


 宿屋に置いていた荷物の箱を抱えながら、ダンがマスターに挨拶をする。


「おう、寂しくなるな。まあ、楽しくやれや」

「ありがとう」

「セーラ、旦那と帰らなくていいのか?」

「旦那じゃねえし、仕事まだあるし」


 マスターからいじられつつ、照れ隠しのツッコミを返して私は仕事へ戻って行った。


「あれが可愛いんだから、お前さんも物好きだよな」


 ニヒヒと笑いながらマスターがダンに言っている声が聞こえる。


「相当な物好きですね」


 ダンも同じように笑いながら返す。


「悪かったな。変わり者で」

「痛っ」


 私は気配を消して近づき、ダンに思いっきりゲンコツをくらわせた。


「こりゃ先が思いやられるな」


 そう言ったマスターは、腹を抱えて笑っている。


「ハハハ。じゃあ、マスターまた」


 ダンは苦笑いを浮かべつつ店を出て行った。


 

「おい、ダン」


 私はダンを追いかけ呼び止めた。


「どうかした?」


 ダンは足を止め、用件を訊いてきた。

 

「鍵、渡してなかったから」


 私は少し重い銀色の鍵を渡した。


「ああ、完全に忘れてた」


 私も人のことは言えないが、こういう抜けている所が可愛いく感じてしまう。


「今度、合鍵作ってもらうから。しばらく我慢して」

「合鍵なら、荷物置いた後に俺が鍵屋に行くよ」

「いいのか?」

「急ぎの用事ないから」

「それじゃあ、頼むよ」

「了解」



「見送りはお済みですか奥様。ニヒヒ」


 中に戻ると、カウンターに肘をつきながらマスターがこちらをイジる気満々で話し掛けてきた。


「うるさい。仕事しろよ」

「おーこわ。客はいないし、今日ぐらい一緒に帰ればよかったのによ」

「馬鹿。いないから掃除とか買い出しとか、やることはあるだろ」

「それぐらい俺だけで良かったのによ」

「また腰の調子悪いだろ」

「ったく、こんなキツいのダンはどこがいいのかね」

「キツくて悪かったね」

「イテテテテ」


 気恥ずかしさと苛立ちで、私はマスターのほっぺを思いっきり捻ってやった。

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