(15)#キレちゃいました
「セーラ、待てって」
階段を走るように降りる私を慌ててダンが追いかけてくる。
「うるさい。この女たらし」
頭に血が上った私は、ダンの言葉を無視して小走りで進み続けた。
「セーラどうした?そんなおっかない顔して」
カウンターの席に座って帳簿をつけていたマスターが、驚いた様子で訊いてきた。
「おはよう」
腰の調子とかいろいろ訊きたかったが、怒りと気恥ずかしさで頭がいっぱいだった私は、挨拶だけしてマスターの前を通り過ぎた。
「おい、セーラ。イタタタ」
後ろからマスターの心配する声が聞こえたが、私は無視して宿屋を出た。
勢いで外に出たものの、私はあてもなく歩き続けた。
ふと気づくと、両親の墓がある墓地に来ていた。
と言っても、母親については私を産んですぐ死んだらしいので、どんな人だったかは親父から聞かされたことしか知らない。
「親父、久しぶり」
私はあぐらをかいて座り、墓に向かって話し掛ける。
「実はさ、好きな奴が出来たんだ」
意地を張ってダンには好きな素振りは見せないようにしていたが、最初から私は惹かれていたんだろう。
「そいつも私のこと好きだって言ったくせにさ、ベロニカ姉さんの写真を隠してたんだよ」
ちょっと半泣きになりながら、ぶつぶつと物言わぬ親父に話し続けた。
「わかってるよ。ガキみたいなこと言ってるって。でもさ、ムカつくもんはムカつくし」
アーーーと叫び私は草むらに寝転んび、しばらく私は眠りについた。
「セーラ」
寝て落ち着きを取り戻し体育座りに姿勢を変えて座っていた私に、誰に聞いたかわからないがたどり着いたダンが声を掛けてきた。
「何だよ。女たらし」




