(14)#押し倒されました
「ただいま〜」
真っ暗な部屋にダンの声が響く。
城で何かあったらしく、ダリアの店でかなりのお酒を飲んだダンは完全に酔っ払いと化していた。
「ダメだ。飲み過ぎた。うっ」
付き合った私も酔いが酷かったが、ダンが心配で部屋までついて来ていた。
「セーラ、こっち来いよ」
酔っ払っているダンはベッドをバンバンと叩きながら私を呼んだ。
「私はあんたがちゃんと部屋に入ったか確認しに来ただけだよ」
いつものダンではない大胆な物言いに、私はすっかり酔いが醒めてしまう。
「セーラ、こっちだって」
帰ろうとする私を無視して、ダンはしつこく呼び続ける。
「うるさいよ。他の客に怒られるだろ。ってオイ」
ダンはドアを閉めて近づいた私の腕を掴んで抱き寄せた。
「バカ、は、離せよ」
ダンにつかまれて私はベッドに倒れ、酔いとは関係なく顔が熱くなっているのを感じた。
「セーラってホント可愛いよな」
ダンの口から普段言わない恥ずかしい言葉がすらりと出てくる。
「酔っ払い過ぎだろ。帰るぞ」
慌てて離れようとしたが、グッと力を入れてきたダンに再び抱き寄せられる。
「一緒にいてくれ」
「私は獣人だぞ」
「俺は異世界人だよ」
「で、でも、ってオイ、ウッ」
突然の告白に戸惑う私にダンは無理矢理キスをしてきた。
「酔っ払い過ぎだろ」
「もう覚めてるよ」
「・・・・・・」
求愛された経験がない私は、何も言えずダンを見つめる。
「ホント、キレイだよ」
勢いに乗って服を脱がしたダンは、私の体を見つめたままで固まっていた。
「ジロジロ見んなバカ」
嬉しさを隠すように私はきつい言葉で返す。
「ホント、キレイだよ」
「他にないのかよ」
「じゃあ、よろしくお願いします」
「うるさい。黙ってしろ」
開き直った私は、求められるままダンを受け入れた。
「ホァ、頭がイテェ。お、おはよう」
「お、おはよう」
私もダンもすっかり酒が抜けてシラフに戻ったのもあり、お互いまともに顔を見れずにいた。
「仕事休みだよな。市場に朝飯でも食いに行くか」
「別にいいけど」
着替えて部屋を出ようとしたとき、ダンが落としたスマホの画面が光った。
「何やってんだよ」
呆れながらスマホを拾った私は、画面を見て思わず固まってしまう。
「これ何だよ」
画面にはポーズを決めたベロニカ姉さんの写真が写されていた。
「いや、それはいいねが押されてだな。投稿するのに写真撮らせてもらって、ええと」
「うるさい」
グダグダの説明をするダンにスマホを投げつけ、私は部屋を出た。




