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和道 2

 今日の授業が始まって、すぐ最初の休み時間がきたので、俺は早速愛夢の元に行った。

 俺は愛夢の彼氏だからな。愛夢の隣に行くのが普通だ。

「ん、和道、どうしたの?」

「いや、俺は愛夢の彼氏だから、来ただけだ」

「うん、そっか」

「け、いい気になってんじゃねえぞスケベ野郎が!」

 美七は、まあ、くるとは思っていた。

「スケベじゃない。なんだ、何か用か、美七。俺はお前には用はないぞ」

「愛夢に用があるっていうのがうざいんですー。愛夢もこうずっと和道なんかにひっつかれても迷惑なだけでしょ。はっきり迷惑だって言ってやんな!」

「別に迷惑じゃないよ。でも、なんも話ないなら、今は一緒にいなくてもいいかな」

「そ、そっか。そうだな」

 ちょっとショックを受ける俺。確かに、彼氏なら彼女に楽しいトークをして笑わせてあげたいところだが、俺にそんなスキルはない。

 こ、これはもしや、カップル生命先はそう長くない、か?

「お昼休みになったら、時間も結構あるし、いっぱい話そ。お弁当も食べるし!」

「ああ、そうだな」

 なんだ、そういうことか。やっぱり愛夢は天使だ。そして俺の彼女だ。あって良かったお昼休み。

 そしてお弁当を愛夢と仲良く食べるのだ。ふふ、食べさせ合ったりして。なにそれ最高。もうお昼休みが待ち遠しい。

「何そのカップル空間。私はどうなるの、まさか1人でご飯食べろって?」

「美七も一緒にご飯食べようね!」

「うん、愛夢好き!」

 そう言って愛夢にだきつく美七。くそ、こいつうざい。

「へっへー。これでカップル空間は作らせないぜー」

「それはどうも」

 どうやら美七はこれからも俺と愛夢の仲に割って入るつもりらしい。なんてやつだ。

 人の恋路を邪魔するやつは、馬に蹴られて欲しい。今凄く切実に。

「でも美七、私にはもう和道っていう彼氏がいるんだから、ちょっとは遠慮してよね!」

「うぐっ」

「うぐっ」

 俺と美七は同時にうめいた。

「どうしたの、和道も」

「い、いや。ちょっと心に響いただけだ」

 愛夢に彼氏って言われるの、凄く良い。

「やばい。カップル発言されるの、予想以上にくる。ムカつく的な意味で」

 どうやら美七もダメージを受けているらしい。俺とは別な意味で。

「そ、それじゃあ、お昼休みに、またな」

「うん。またね、和道!」

「け、思い通りになると思うなよ!」

「もう、美七、何言ってるの」

「愛夢。私は、カップルのいちゃつきを見せられて苛つく気持ちを覚えてしまったわ。もうこれは妨害しまくるしかない!」

「ダメじゃん」

 美七は愛夢からの額チョップを受けていた。

 ざまあ。


 待ちに待った昼休みがやってきた。

「愛夢、お昼食べよう」

「うん!」

「私もいるぜー。愛夢ー、愛夢の隣は私ねー」

「うん。わかった」

 俺、愛夢、美七は弁当を持って、教室の机を動かして集まり、座る。

「じゃあ俺も愛夢の隣な」

「あ、うん。そうだね!」

「はあー? 和道お前、調子のってね?」

「俺は愛夢の彼氏だから隣に座ってもいいんだ」

「ふふふ。そんなに隣がいいの? もうっ」

 もうっ。なんだろう。

 もうっ。なんだろう!

 なんだろう。すっげえ楽しいしうれしい。

 お昼ごはんってこんなに幸せになれるんだな。

「和道もお弁当なんだね」

「ああ。母さんが作ってくれるんだ。毎日」

「良いお母さんだねえ」

「ああ。毎日感謝だ。愛夢も、弁当母さんが作ってるのか?」

「ううん。私のは手作り」

「なんだって。凄いな!」

「えへへー。それほどでもないよー。でも、ありがとっ」

「なんだ和道。そんなことも知らなかったのか。じゃあ愛夢が料理研究部なのも知らないんだな」

「え、そうなのか?」

 料理研究部なんて、凄いな。

「うん。そうだよー。意外?」

「いや、意外っていうか。ぴったり。愛夢らしい」

「えへへ、ありがとうっ」

 ううっ、愛夢が可愛すぎる!

 隣に座って良かった。

「そりゃあ愛夢らしいに決まってるわ。愛夢が選んだんだから」

「美七はモデル部だもんねー」

「そうよ。私の美貌は日々磨かれてるわ。部活中もね」

「へえ」

 それは興味ない。

「なんかムカつく」

「そんなことないよ。和道はサッカー部なんだよね?」

「ああ。まだレギュラー入りできてないけどな」

「和道ごときがレギュラー入りできるわけないじゃない」

「美七、そんなこと言わないの。頑張ってね!」

「ありがとう、愛夢」

 そろそろ俺達は、お弁当を開けた。

 俺のは肉弁当。醤油味で焼かれた豚こま肉がごはんの上に乗っているだけだ。

 それに対して愛夢のお弁当は彩り豊かだった。ベーコン、にんじん、ごぼうの炒めものに、ブロッコリー。そして卵焼きが2切れ。

「愛夢の、美味そうだな」

「ありがとう。一口食べる?」

「いいのか、ありがとう」

「私のはあげないわよ」

「わかってるよ」

 ちなみに美七の弁当は、白飯が無く、ブロッコリーと鶏胸肉だけだった。

「美七のは、なんだそれ、ダイエット食か?」

「炭水化物は取れないからね。これが私の基本よ」

「ふーん」

 無駄な努力、とは言い難いが、よくわからん基本だ。

 何食べても、よく動いてよく寝たら大して変わらんだろう。

「はい、和道どうぞ」

 愛夢がそう言って、ベーコン、にんじん、ごぼうの炒めものを半分と、卵焼きを1つくれた。

「こんなに、いいのか?」

「うん。だって、私の手作りだし」

 そう言ってにへらっと笑う。

 可愛い、可愛すぎる!

「ありがとう。俺のも少し分けるよ」

「ありがとう。じゃあ一口だけ」

 愛夢が俺の肉とごはんを一口だけ食べた。

「もぐもぐ」

「どうだ?」

「ちょっと、しょっぱいね。でも、男の子にはこれくらいがいいのかな?」

「ああ。まあ、これで慣れてる。でも、愛夢の弁当の方が美味しそうだな。それじゃあ、いただきます」

 俺は卵焼きを食べた。

 超美味しかった。

「美味い。美味いよ愛夢!」

「ありがとう。けど、ちょっとほめすぎだよお」

「ほめすぎなもんか。愛夢超凄い。愛夢の夫は幸せ者だな」

「おい、ここでセクハラすんな」

「セクハラはしてない」

 美七の存在は目の上のたんこぶだけど、それでも十分幸せだ。

 まさか幸せを感じている間に、更なる幸せが押し寄せてくるとは。

 彼女がいるって最高。人生で一番最高の昼ごはんだ。


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