愛夢 1
愛夢視点です。
いきなり急展開になった。
軽い気持ちで七夕の願い事に彼氏欲しいって書いたら、クラスで一番かっこいい和道が私に告白してきた。
これ、告白でいいんだよね?
私、オーケーしちゃったけど。
ど、どうしよう。断る理由はなかったけど、いきなりすぎて、まだドキドキしてる。
「ちょっと待ったー!」
その時、友達の美七が私と和道の間に割って入った。
どうしたんだろう、美七。
「別に愛夢が付き合うのはいいわ。百歩譲ったとして」
ゆ、譲ってくれて、ありがとう。
「でも、その相手があんたとは、まだ決めかねるわ!」
美七がそう言って和道を見る。
あれ、美七。私の彼氏を決めるのは私だよ?
「それはつまり、どういうことだ?」
「試練よ。3つの試練。それを乗り越えなければ、あんたを愛夢の彼氏として認めることはできない!」
そう言って、美七が和道を指さした。
「美七、人を指さしたらいけないよ!」
「愛夢、こういうのはケースバイケースよ。大体、和道は愛夢の彼氏の座を狙うキラーマン。絶対愛夢とキスしたかったり、おっぱいもみたかったりしてるのよ。そんなケダモノ、迂闊に近づけてもいいの? いいわけないでしょ!」
「美七、誤解だ。俺はそんなにエロくない」
「エロくなかったらどうして彼女なんて欲しいのよ!」
「俺が愛夢を好きだからだ」
え!
ドキドキドッキン!
こ、こんなこと言われたの、生まれて初めて!
「愛夢、いいよな。俺が彼氏で」
「う、うん。まあ」
「だからまだはやーい! ストップ&シャラップ、時よ止まれ!」
なんか今日の美七はえらくハイテンションだった。
「あ、あの、美七。私、和道なら文句ないよ?」
彼氏欲しいのは確かだし。
「愛夢、それは和道の化けの皮をはがしていないからよ。ここはこいつに試練を与えて、真の姿をさらしてもらうの。そうすれば百年の恋も冷めるわ!」
「美七、ひょっとして、ただ邪魔したいだけ?」
「違うわ。これはまっとうな流れよ。結婚する前に親御さんに挨拶しにいくぐらい当然よ!」
「両親に挨拶。愛夢、行かなきゃダメか?」
「え、や、やだ和道、そんなの早すぎるよ!」
「そ、そうか。そうだな」
「良い雰囲気してんじゃねー!」
美七が軽くキレた。
「和道、お前には知、力、財力の3つの試練を乗り越えてもらう!」
「美七、それまだ続くのか」
「続くわ。まずは知の試練。私が出す問題を見事答えられたらクリアよ!」
「なるほど。問題か。いいだろう、答えてやろうじゃないか」
「どうせ私が出す問題なんて楽勝だって思ってんでしょう」
「う、うん」
「そんな余裕も問題を聞いたらふっとぶわ。それじゃあ問題、デデン! しんかんせんには3つ、コンセントには2つ、テントには1つあります。それは何!」
これなぞなぞだー! しかも前に私が美七に出したやつ!
知に関係ある? と思ったけど、美七はドヤ顔中。そして和道はうろたえた。
「え、ええと、それはだなあ」
「言っとくけど、誰かに聞くの禁止。制限時間はあ、そうね、つけなくてもいいか。そのかわり、答えが出るまで愛夢に話しかけないこと。ふふふ。これで一生愛夢に話しかけられないわ!」
「そんなに絶対的な制約じゃないと思うな、それ」
「ぐぬぬ。新幹線に3つ、3つ?」
和道は悩んでいる。でも、ちょっと面白い。
「ふふふ。さあ、わかったら答えを言ってみなさい。まあ、言えるもんならねえ」
「ちょっと待ってくれ。ええと」
ああ、まあ、いきなりだとわかんないよね。
「和道、ヒントあげよっか?」
「ダメよ愛夢。試練にヒントなんて不要! そうじゃなければ意味がないわ!」
「でも美七もヒントなかったら解けなかったじゃん」
「それは今言ったらダメよ!」
「新幹線、コンセント。むむむ」
和道は悩んでいる。これはひょっとしたら、長くかかるかなあ。
「あ、和道。わかったら連絡して。私にでもいいから」
「本当か、ありがとう」
こうして私は、和道と連絡先を交換した。
ちょっとうれしかった。
その後も和道はずっと悩んでいて、そのままお昼休みに突入。
私は美七とお弁当を食べた。
「しっかし、まさか愛夢に言い寄る変な虫がいるとはねえ」
「美七。和道は変な虫じゃないよ。それとも逆に、私のことあなどってる?」
「まさか。こんな可愛い愛夢が他のやつにとられると思うと、腹立たしいだけよ」
「彼氏ができても、美七が追い払っちゃうじゃん。まあ、ちょっと楽しかったから、いいけど」
「さすがに口出すのは3つの試練までよ。でもあの様子じゃ、一生第一の試練を突破できないわね」
「そうかな?」
「そうよ。やっぱあいつバカなんじゃない?」
「バカではないと思うけど」
でも、ずっとわからないままでいられるのも嫌だなあ。
「美七は和道のこと嫌いなの?」
「嫌いっていうか、ほぼ知らないから。後から性格悪いってわかったら嫌じゃない」
「少なくとも今は美七の方が性格悪いよ」
「私は顔が良いからいいのよ。それに愛夢に彼氏できたら私のけものにされちゃうじゃない」
「のけものになんかしないよ。美七も一緒にいよ?」
「ありがとう愛夢ー。それじゃあご希望通りずっと和道との仲を邪魔してあげるわ」
「それは希望通りじゃない。三人で仲良くすればいいじゃない。あ、でも、ひょっとして、美七、和道のこと好きだった?」
私はふと、そんなことを考えた。
「私が? ないない。私はお金持ちでかっこよくて頭良いやつにしか興味ないわよ」
「でもかっこよくはあるんじゃない?」
「んー。評価は彼女様の前ではひかえるけどー、まあ別に、私は好きになる感じじゃないかなあー」
「そっか。ほんと?」
「こんなことで嘘ついてどうするのよ。大体本当に好きだったら3Pすればいいじゃない」
「3Pって?」
「パンピンペンよ」
「それって全部何か関係ある?」
「関係ないけど愛夢好きー」
「はいはい。友達としてね」
「うん!」
そのままお昼休みは終わった。結局和道はなぞなぞの答えを言いに来なかった。
正解は、ん。なんだけどなあ。
しんかんせん、で3つ。こんせんと、で2つ。てんと、で1つ。
ん。がある。だから正解は、ん。難易度は小学生クラスだと思うんだけど。
やっぱり難しいのかな?