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第三話:好きと嫌いの裏返し~ほんの些細なすれ違いでも一大事~3
「はぁ……」
朝の通学路で、紫乃は短くも重いため息を吐く。
「どした、会長殿」
いつものように隣を歩く咲玖は、紫乃の様子が変なことには気づいていた。
だからといって、ずけずけと私情に踏み入るほど図太い神経はしていない。ただそのまま放置しておくほどに薄情な性格どころか、積み重ねてきた年月に築き上げてきた関係性がある。
「……昨日、ちょっとね」
全てを語らずとも、紫乃の表情は翳りを増していく。
そんなどこか見慣れた姿に、咲玖は頬を緩めて笑いかける。
「私でよければ、その悩み聞くよ」
躊躇うように目もとを細めて考え込む紫乃だったが、一度瞼を閉じてから顔をあげる。
「聞いてもらえるかしら」
「もちろん」
応じるように、咲玖は頷いてみせた。