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「おいそっちの方は終わったか〜?」
「…ああ」
ターゲットを始末し終えたであろう親友を横目に俺は最後の
敵にとどめを刺す。
「やった〜!今日の任務たっせい〜!!」
思っていたより早く任務が終わったせいか今日はやけに機嫌がいい……が。
「…アルファ」
「ん?」
振り返った瞬間、血まみれのターゲットがアルファに切りかかろうとする。急所が外れていたのだろう。俺はすかさず魔法で作った水の矢をターゲットの心臓に向け、2、3発放つ。
「敵は必ず息の根が止まっているか確認しろといつも言ってるだろ…」
「ごっめ〜ん!次から気をつけるね」
ヘラヘラと平謝りをする友人を俺は溜息をつきながら、こいつはこの先もやって行けるのだろうかと心配になる。
アルファと俺は暗殺者だ。俺もあいつも有名な暗殺一家で同年代というのもあり、幼い頃から共に過ごしてきた、いわゆる幼なじみというやつである。アルファは暗殺の腕はとてもいい。魔法も使える優秀なやつだが爪が甘いのが欠点だ。そこは俺がカバーしているからかあまり大々的には知られていない。
かくゆう俺は武器ならなんでも使える。魔法も使える。暗殺業界でもトップの業績を残すほどの実力を持っている。それに至るまで辛い思いもしたが、アルファと一緒にいる時は苦しかった記憶も忘れられたーーーー。
父は俺に対して厳しい人だった。母が俺を産んだせいで死んでしまったからだ。母は自分の意思で俺を産んでくれたのだろうが、父にはそれが理解できなかったのだろう。幼い頃は剣も魔法もろくに扱えなかったため酷い罵声や暴力も日常茶飯事だった。ご飯をまともに食べられない日もしょっちゅうあった。
「どうして生まれてきたんだろう」
「死んだ方がいいんじゃないか」
そう思うことが多くなった時アルファと出会った。いつも笑顔で明るいあいつを見てると辛い気持ちが忘れられた。一緒にいる間は父も何も言わない。それがとても救いだった。それからは魔法の特訓や剣術などをアルファと一緒にするようになった。父がいない場所で特訓をするとみるみると魔法や剣術が上達していった。もともと才能があったのだろう。今の俺があるのはアルファのおかげだろう。アルファと出会ってから今まで感謝しなかったことはない。
「じゃあリヒト、そろそろ帰ろっか」
「…ああ」
ふと我に返り、気のない返事をする。2人は他愛もない話をしながら自宅へと帰っていく。
これからもずっとこんな日々が続くとそう思っていた。
ーーーーーあの時までは。