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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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たもれ

作者: 曲尾 仁庵

 たれか わたしを ころして たもれ

 するどい やいばで きざんで たもれ

 あいで ないなら みすてて たもれ

 なさけを かけぬが なさけ とよ




 すがる わたしを はらって たもれ

 いしで くくって しずめて たもれ

 みにくい みれんを ねじきて たもれ

 なさけを こうこそ なさけ なや




 たれか わたしを ころして たもれ

 くたれた しょうねを もやして たもれ

 うきよの うつつを しらせて たもれ

 ゆめを ゆめみる おろかしさ




 のぞむ わたしを みかぎて たもれ

 おもい あがりを くだいて たもれ

 みのほど しらずと わらって たもれ

 なさけを かわせど みも うつろ




 たれか わたしを ころして たもれ

 むねに やいばを つきたて たもれ

 あいが ないから みすてて たもれ

 ひとりに おびえる この つきよ


 ぼうばくたる こどくを わすれじ

 みをこがす かつぼうを わすれじ

 はるかな そうしつを わすれじ

 しれた ゆめを わすれじ




 誰か私を殺してたもれ

 鋭い刃で刻んでたもれ

 愛でないなら見捨ててたもれ

 情けを掛けぬが情けとよ


 縋る私を払ってたもれ

 石で括って沈めてたもれ

 醜い未練を捩じ切てたもれ

 情けを乞うこそ情けなや


 誰か私を殺してたもれ

 腐れた性根を燃やしてたもれ

 憂き世の現を知らせてたもれ

 夢を夢見る愚かしさ


 望む私を見限てたもれ

 思い上がりを砕いてたもれ

 身の程知らずと笑ってたもれ

 情けを交わせど身も虚ろ


 誰か私を殺してたもれ

 胸に刃を突き立てたもれ

 愛がないから見捨ててたもれ

 独りに怯えるこの月夜


 茫漠たる孤独を忘れじ

 身を焦がす渇望を忘れじ

 遥かな喪失を忘れじ

 痴れた夢を忘れじ

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[良い点] かなしくせつなくうつくしいうた 辛嘆(つらたん)
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