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バッドエンドスタート 〜世界は魔界と化しました  作者: バッド
2章 地盤固め

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61話 ウルゴス軍なのじゃ

 高熱による攻撃に橋は半ばから破壊されて、川から突如として現れた巨人が悪魔兵たちの前に降り立つ。その背丈は6メートル程の巨人であった。


 青色の装甲を持ち、各所が尖った形の鋭角なフォルムのロボットであった。背中にはランドセル型のバーニア、手足にはスラスターが取り付けられており、脚部にはミサイルポッドが装備されている。腰には組み立て型の近接用武器もある。バイザー型のカメラアイが顔に取り付けられており、悪魔兵たちに手に持つ長方形型の銃の銃口を向けてくる。


「ま、まさかグ」


 ロボットがトリガーを引くと、銃口から白き光弾が発射されて、その姿を見て叫ぼうとする悪魔兵へと命中させる。爆発して高熱の爆風を巻き起こし、悪魔兵は灰すら残さずに消えて、周りの兵士たちも吹き飛ばされた。


 バイザーを光らせて、光弾を連射するロボット。兵士たちは慌てふためきながら、下がっていく。装甲車は機銃を連射しながら橋を降りていく。その中で対抗するために橋にいた戦車が戦車砲を向ける。


「二足歩行ロボットが優位なのは、アニメの中だけだ! これでも喰らえ!」


 戦車砲が轟音を響かせて、高速で飛んでいき、ロボットに命中する。爆煙をたててロボットの姿が見えなくなる。


「やったか?」


 戦車長が身を乗り出して、確認をしようとして、ギョッと目を剥く。風が吹き煙が消えていき、ロボットの姿が見えるが、多少装甲が焦げているだけでビクともしていない。


 現代の戦車砲の砲弾はこれだけ接近していれば、いかなる装甲をも貫ける威力を持つはずであった。それなのに、装甲にへこみもできていない事に驚愕する。


「隊長! 敵の新型の装甲は戦車砲を相手にしません!」


「ば、馬鹿っ! そのセリフを言う奴は」


 尋常ではない装甲の硬さに砲手が振り返って悲鳴をあげて、そのセリフに戦車長は慌てるが、次の行動を命じることはできなかった。


 ロボットが再びビームマシンガンを撃ってきて、戦車の装甲はまるで抵抗なく白い光弾に貫かれて、何発も命中し車体を穴だらけにすると、爆発させる。


 混乱の中、何機ものロボットが川から飛び出してきて、同じようにビームマシンガンを撃ちまくり、悪魔軍は大混乱へと陥るのであった。




「なんだありゃ?」


 市谷は部下と共に後退していたが立ち止まって唖然としてしまう。目の前の。光景が信じられなかった。


「陸自は……、ロボットを密かに作っていたのか?」


「しかも量産されていますよ、あれ」


 部下たちも立ち止まって、戦闘の様子を見て呟く。橋向こうでは30機以上のロボットが戦闘をしている。しかも戦車砲も機銃もロケットランチャーも効いている様子はない。圧倒的な性能だった。


「そうか。宇宙用は必要ないから、最初から陸戦用に製造されたんですよ。あのグ、あいだっ」


 部下の一人がアホなことをいうので、軽く殴ってやり、すぐに現状を把握する。


「どこの援軍かわからねぇが、悪魔軍を潰すチャンスだ! 俺たちも加勢するぞ!」


 人々を苦しめる悪魔軍なぞ、放置してはおけないと市谷はアサルトライフルを構えて指示を出そうとするが


「申し訳ありませんが、それは止めてください」


 スラスターを吹かせながら、市谷の目の前に緑色の装甲を持つロボットが降り立つと忠告してくる。アスファルトをへこませて、スラスターによる風を吹かすロボットに、風を防ごうと腕で防ぎつつ、市村は怒鳴る。


「どういうこった? いくらロボットでも悪魔には苦戦するだろ! 俺たちも援護する!」


「貴方たちはイーストワンに戻ってください。あちらは破壊されて大変なことになっており、人手が必要です。それに」


 崩れた橋を超えて、グールたちの群れが飛び込んでくる。ロボットは腰にかけてある組み立て式の武器を繋ぎ合わせて構える。近接武器はグレイブであり、刃が白く光っていた。


「はっ!」


 ロボットから声が聞こえて、グレイブを横薙ぎに一閃する。魔力皮膚マナスキンを持つはずのグールたちは、その一閃で身体を分断されて灰へと変わっていった。


「邪魔なのです。現在、この機体は歩兵との連携を考えられていません。運用方法は機体同士の連携のみ。申し訳ありませんが、足手まといです」


「くっ! ………仕方ねぇ。拠点も心配だ、お前ら退却するぞ」


 ロボットから聞こえてくる冷徹な女の声は反論を許さない威圧感を感じさせる。


 陸自の陸将補である市谷はその言葉に納得するしかなかった。歩兵との運用方法を考慮されていないということは開発されたばかりなのだろう。そして、運用方法を考慮されていないのに、歩兵がうろちょろすれば邪魔にしかならない。悔しいが退却するしかない。


「落ち着いたら、そのテガブツとの運用方法を検討するからな!」


 ジープに飛び乗って、手を振り上げて叫ぶと市谷たちは去っていくのであった。



 モニター越しに、レンダは去って行く人間を見て、ふぅと息を吐く。コックピットに座るレンダはシステム周りを確認する。


 コックピット内は150度モニターで作られており、椅子の肘掛けにはレバーが取り付けられている。キーボード付きのコンソールが目の前に展開されており、機体の現状が空中に映し出されていた。


 レンダは椅子に座り、現状を確認する。うなじの端子にはケーブルが取り付けられており、機体と連結されている。


 機体との連結により思考を伝えて操作することができる人形、それがレンダだ。レバーやコンソールは補正にすぎない。なので、機体の現状を視界にて確認するのは気分にすぎないが、人間の心を持つレンダは視界での確認を好んでいた。


こんな感じの機体だ。


SA1式 ポーン

マナ:40

攻撃力:40

防御力:40

機動力:40

稼働時間15分:マナ:40

神聖合金製:物理耐性大

ホーリービームライフル:攻撃力80 消費マナ10

80ミリホーリービームマシンガン:攻撃力18 消費マナ2

ホーリーグレイブ:攻撃力40

煙幕ミサイル

マナタンク(マナ40)3基


 茜が作り上げた1分の1サンダルフォンアーマーである。全ては神聖力で賄われており、万能神聖力エネルギーで稼働する。


 なんでもホーリーにすれば、茜は純粋な神聖エネルギーによる武器を作れちゃったりするのだ。人形の付属品と考えれば茜は製作可能だ。プラモでビームライフルがついているのと同じ論理である。なので、理論武装は完璧だ。裁判でも勝てる感じがします。


 神聖エネルギー兵器であるビームマシンガンは、耐性を持たない装甲車の装甲をやすやすと貫き、戦車の砲弾は反対に神聖耐性により弾き返す防御力を持っている。稼働時間が短いのが難点だが、マナタンクを増設することにより、実際の稼働時間は最大4倍に増えていた。ただし、武器にもエネルギーを使うので、実際は2倍といったところであろう。


 マナの補充は自前だと、エネルギーとガソリン合わせて8日。マナタンクを含めると20日かかる計算だ。今回は出雲やリムたちもマナを補充したが、これから先のことを考えると、コアであるサンダルフォンの最大マナ容量を増やす予定である。


 実際6時間寝るとマナは全回復するので、レンダは寝てばっかで、おっさんたちももう眠れないと言いながら回復をしながら補充をしてました。レンダたちはおやつの時間以外は寝ていたので、妖怪食っちゃ寝になる可能性大。どこかのセイバーさんより酷いかもしれない。


 茜の渾身の作ったプラ、いや、サンダルフォンアーマー内で、レンダはモニターに映し出されている機体の現状に不満そうに唇を尖らせる。


「ビームライフルの銃身が溶けました。高熱に耐えられなかったようであります」


 モニターに映るのは、茜だ。白衣を着た少女は困ったように頭をかく。


「マジっすか。ホーリー系統の法術は持ち手には影響を与えないはずなんすけど」


 1億度の高熱を手のひらから放っても、通常は本人にダメージは入らない。高熱に手を突っ込んでもだ。だが、ポーン1式のビームライフルの銃身は高熱で融解してしまった。魔道具を使用しても起きない現象に戸惑っていた。


「恐らくはコアの自分と、法術を発動させた銃との距離が離れすぎていると愚考します」


「あ〜、それはあるかもっすね。……とすると、ライフルの銃身は厚めにしないとっす」


「ですね。荒野の雷神もビームライフルが使えなくなって負けましたし。このままでは、自分も死んでしまいます。お見舞い品は甘い物を望みます」


「真面目な顔で後半のセリフを言える性格は羨ましいっす。それじゃ、ライフルは封印で」


 きりりと真面目な表情で、よだれを口元から垂らすレンダ。呆れながらも手を振り、あっさりとライフルを封印することに茜は決めた。


「そんじゃあたしたちはマシンガンを使おうぜ。こっちもガタがきそうだけどな」

 

 茜の隣に新たなる人物が映し出されて、ニヒヒと楽しそうに笑う。八重歯をちらりと見せて好戦的な性格の少女だ。その姿はレンダとそっくりで双子と言われても納得する姿だ。副官のリーラである。


 リーラは副官として作られたために名前が与えられている。他は番号である。出雲は全員に名前をつける予定だが、皆の性格を見てから決める予定だった。


「リーラの進言を許可します。全機にメインウェポンをマシンガンに通達」


 人形同士の同調スキルを使い、レイダは全機へと伝える。了解との思念が返ってくるので、コクリと頷き、レンダはポーンを移動させる。


 アスファルト舗装を金属の足で踏みしめて、駆動音をたてて足跡を付けながら、ポーンは駆け抜ける。


 揺れも酷いでありますと思いながら、これは後で茜博士に伝えておく一つだと記憶にメモをしながら川を渡る。


「スラスター起動」


 思念にてポーンのランドセル型バーニアを点火させる。バーニアからマナが噴き出して、機体を空高く持ち上げる。


 白き粒子を噴き出して、空中にてレンダはモニターに映る敵を確認していく。モニターに戦車や装甲車、歩兵用トラックに歩兵たちが映りロックされていった。その中にチラチラとグールの姿も見える。


「敵の戦力はこちらよりも低い。ですが、なかなかの練度のようですね」


「だなぁ、悪魔側についたって言うから、チンピラたちだと思ったのによ〜。うざっいたらありゃしないぜ」


「練度の高い奴らだからこそ、悪魔は部下にしたんすよ。漫画だとチンピラとかを雇うんすけどねぇ。アホは隙を見せちゃうから、現実では無能な奴らを雇うと役に立たないっす」


 ケッとリーラが忌々しそうに口を尖らせて、茜が冷静に推測する。レンダはなるほどと頷きながら、地上へと視線を向ける。


 モニターが真っ赤になりにWARNINGと表示されて、戦車がこちらへと砲身を向けていた。


「戦意を失わないことは、称賛に値しますが、この機体の性能を知らないようですね」


 ドンと砲音をたてて、戦車砲から砲弾が飛んでくる。空中にいる今なら落下ダメージも含めると傷を与えられると考えたのだろう。だが、レンダはその瞳に神聖力を光らせて、ポーンを操作する。


 空中を飛行していたポーンの脚部スラスターから粒子が噴き出して、鋭角に移動する。連続で各所からスラスターを噴かせて、鋭い空中機動を見せながらポーンは降下する。横を砲弾が通り過ぎていき、装甲車からの機銃は躱さずに受けて無視をしておく。


 チュインと音をたてて、機銃の銃弾が機体に命中するが耐久力は一切減らない。


「魔法を使う悪魔はいないようですね」


 レンダはモニターを確認しながら脅威となるものを確認していくが、一番厄介な魔法を使う悪魔がいないことに少し安堵する。


 トリガーを引き、ホーリービームマシンガンを撃つ。戦車は爆発し、装甲車は粉々になり、スクラップとなっていく。対抗して撃ち返してくる戦車砲をスラスターを噴かせて横にスライドして躱し、ビームマシンガンで追撃する。


 戦場は炎に包まれて、ポーンがその中を突き進む。


「グラァ!」


 グールたちが燃え盛る戦車を飛び越えて襲いかかってくる。すぐさまレンダは片手で半分のグレイブを腰から外し横薙ぎに振り、グールたちを切り裂く。


「では、殲滅といきましょう」


 灰へと変わるグールたちを睥睨し、機械のような無感情な抑揚で呟くと、レンダはさらなる攻撃をするのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 現実では有能な奴らを雇うと役に立たないっす 無能? [一言] ホーリー煙幕ミサイルにしないと裁判に負けちゃう!?
[良い点] グフゥ!笑っちゃいました。 見た目はジークな軍のアレに似てる感じなんですな。 [一言] 主人公より圧倒的に強いけど再出撃に数十日は結構大変な仕様ですな。
[気になる点] 二足ロボが優位なのはアニメだけとか言ってるがそれは青葉区で脚がない奴が開発されるフラグでは? [一言] まあグフならムチプレイがあるはずだから違うでしょw(目逸らし)
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