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バッドエンドスタート 〜世界は魔界と化しました  作者: バッド
2章 地盤固め

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48/120

48話 居住区は住み心地が良いのじゃ

 玉藻は久し振りのお出かけにワクワクしていた。急におうちを出ることになって、寂しかったのだ。こわいひとたちがたくさんあらわれて、ゴンちゃんと一緒におうちを出て、お店で寝ることになったの。


 そんで、おふろに入りなさいといつも言っていたおかーさんが最近は全然言わなくなったの。


 おふくがくちゃくなっても、新しいおふくに着替えなさいって言わなくなったし、髪はぼわぼわになっても、きれいきれいにしてくれなくなった。ゴンちゃんと早くおうちに帰りたいねとお話していた。お友だちとも離れ離れになって、とっても寂しかった。


 おやつの時間もなくなって、なにか変なことが起きたんだと、玉藻はなんでお店で寝ているかわからなかったけど、いい子いい子にして黙っていたのだ。


 そしたら、おとーさんもおかーさんがお出かけだよって言ってくれて、ワクワクしてお出かけしたのだ。お出かけして、なにかおいしいものを買ってくれるかなぁって。


 乾パンっていうのは、パサパサでおいしくない。でも、おいしくないよって、おかーさんに言うと、かなしいおかおになるからがまんしてた。お出かけして、アイスクリームが食べたいって言っていいかなぁと思ってたら、新しいお友だちができちゃった。


 お友だちのおなまえはハクちゃん。見たことないきれーなあおいかみの女の子。ニコニコと笑顔でごあいさつをしてお友だちになった。えへへ。




 ニコニコとご機嫌で、ぽてぽてと玉藻はお城の中を歩いていた。お庭は玉藻が見たことのない奇麗なお庭だった。白い石畳が城まで伸びており、キラキラと輝く水晶の木々が生えて、精緻な作りの水晶の花々が咲き乱れている。


 ハクちゃんは疲れて眠いのか、スエルタちゃんのお胸にしがみつき、幸せそうな微笑みを浮かべて寝ている。きっとおねーちゃんに会えて安心したのだろう。


 ここまで玉藻は父親におんぶもしてもらったが、それでもかなり歩いていたので疲れていた。だが、疲れを忘れるほどに奇麗なお庭だと、てててと走って花をつついて、木の幹を触る。


 ホワァと口を開けて、ひんやりとした感触に驚き、水晶の花って綺麗だと玉藻は花びらが落ちていたら、宝物にしたいと思って探すが、落ちていないのでがっかりした。


「花びらが欲しいのかい?」


 出雲のおじさんがニコニコと笑みを浮かべて声をかけてくるので、


「うん! でもおちてないの」


 もう一度探してみるが、綺麗に掃除されており、何もないのでしょんぼりしちゃう。


「そうか……ほら、これで良いかな?」


 手品師みたいに手のひらを一度握り、開くと水晶の花びらがあった。玉藻に手渡すので、おぉ〜と喜ぶ。綺麗な花びらは水晶でできているのに本物の花びらのように柔らかい。つんつんとつついて、これは最近の中でも二番目の宝物だと目を輝かす。一番はゴンちゃんだ。


「いつもありがとうございましゅ、おじちゃん!」


 やったぁと、おじちゃんに抱きつくと、抱き上げて頭を優しく撫でてくれる。


「気にすることはない………いつも?」


「うん、おみじゅもありがとうございましゅ」


 出雲のおじちゃんはお店で暮らしている時に、喉がからからでお水が飲みたいときに、お父さんたちには内緒だよって、いつもくれたのだ。内緒だから、こっそりとお礼を言うの。おやつもくれることがあったの。なので大好きなおじちゃんだ。


「………ん? もしかして俺が出雲だってわかる?」


 小声で聞いてくるので、玉藻は内緒のお話だねと、楽しくなって小声で返す。


「うん! 出雲のおじちゃん。おとーさんとおかーさん初めましてって、変なの」


「忘れていることは恥ずかしいだろ? それは内緒にしておこう」


 おとーさんたちはお庭を眺めて少し離れていた。そのことに出雲のおじちゃんはホッと息を吐くと、シーッと言う。


「わかった! シーッだね?」


「あと、俺は冬衣とこれからは呼んでくれ。内緒、内緒の話だから。絶対にお願いな? そうだ、後でおやつもあげよう」


「わかりまちた! ナイショ!」


 これからは冬衣のおじちゃんと呼べば良いんだねと頷く。ナイショナイショのお話だ。秘密は誰にも言ったらいけないのだ。


「良かったよ。それじゃ新しいおうちに案内しよう」


 抱っこしながら出雲は安堵する。冷や汗をかいたぜと。


「情けは人の為ならずという諺の意味がわかったよ……あぶねぇ……」


 抱っこをしてくれたまま、お城へとおじちゃんは案内してくれる。


 奇麗なお城の中はガランとしており、寂しい感じを受ける。窓ガラスから日差しが入り込んでおり、純白の壁や天井を照らしている。壁や柱は精緻な彫刻が彫られて美しいが調度品が全くないので、違和感を覚える内装だ。


「これは美しい」

「海外の宮殿とか、こんな感じなのかしら」


 玉藻の両親は壮大な城の様子に感動している。


「………神聖力の塊。でも、予想よりもガランとしている」

「そうですね。しかし、ここなら悪魔たちも入り込むのは難しいでしょう」


 スエルタや天華も眺めて、それぞれ感想を口にしている。やはり違和感は拭えない。もっと絢爛な城内だと考えていたためだ。


「この先に居住区がありますので、案内致します」


 玉藻は出雲のおじちゃんに抱っこされながら、廊下を案内される。廊下も純白で、そして何もない。人気がないので、少し寂しいなぁと、玉藻は思うがハクちゃんと後で探検できるかなとワクワクしちゃう。こんなに大きなお城だ。いっぱい探検できる。


 しばらく廊下を進み、居住区と書かれているプレートの貼られた扉を潜り、また少し歩く。そうして、1つの扉に辿り着くと出雲はにこやかな笑みで中へと案内した。


「ここで一休みしてください。その姿を見るに避難してきたようなので、そのまま暮らして頂いても構いません。スエルタさんたちは他の部屋にご案内致します」


 出雲は優しげな笑みで寛容なことを口にしつつ、自分の正体を知った玉藻を抱え込むことにした。もう絶対に逃せないよねと。


 玉藻たち家族は中に入って驚いて目を見張る。


 玄関だったようで、靴を脱いで入ると、広々としたリビングルームにダイニングキッチン、横の扉はお風呂にトイレ。吹き抜けとなっており、部屋の隅に設置されている階段から2階に続いている。2階にはそれぞれの個室があり、数は5部屋。


 御国家族は出雲と同じく億ションに近いマンションに住んでいたが、だからこそこの部屋が豪華であることがわかった。


 …………調度品は何もないが。


「一部屋にベッドが置かれています。電気、水も使えますし、エアコンも完備、キッチンのコンロは使えますし、冷蔵庫、洗濯機もありますが、それ以外は何もありません。新たに人が来ることを予定していなかったので、申し訳ありません」


「いえ、助かります。あの………本当にここに住んでも構わないのでしょうか?」


 御国両親はもうここ以外には行く宛がない。だが、あの避難所にいても、玉藻が倒れると考えて、一か八か出てきた。なので、ここを追い出されたら困ると考えていたが、出雲はニコリと笑みを浮かべて頷く。


「もちろんですよ。部屋はたくさんありますからね。それでは一休みしたら、3時間後に食堂に集まってください。他の住人も紹介したいですし、ここに来た経緯もお聞きしたいので。あぁ、お風呂にも入れますので」


 では、とお辞儀をして出雲が去っていくと、御国両親は恐る恐る部屋を眺める。


「本当にお水が出るのかしら? あら、本当に出るわ、あなた!」


「すごい! 冷蔵庫も使えるよ!」


 御国母が蛇口を捻ると、サーッとあっさりと出てきて驚く。御国父は冷蔵庫を開き、ひんやりとした空気が流れてきて感動する。数週間前までは当たり前の光景であったが、今は貴重な光景だった。


「食堂に集合らしいよ。まずはお風呂に入ろうか。……かなり臭いからね、僕たち」


 苦笑いと共に御国父が自分たちの姿に苦笑して、反対する家族はいなかった。


「新しいおうち?」


 やはり広々とした湯船にお湯を張って、玉藻はおかーさんと一緒にお風呂に入っていた。


 最初は泡立たなかったが、何回かシャンプーを使い、玉藻の頭は泡でもこもこだ。


「そうね。新しいおうちよ。ほら、目をつむって?」


「うん! きゃー」


 シャワーで泡を落とされて、玉藻は楽しげに声を上げて目を瞑る。お風呂で体を温めて、久し振りに綺麗となった。


 お風呂から出ると、おとーさんがお菓子をたくさん持って笑顔だった。


「冬衣さんが玉藻にって。お菓子を持ってきてくれたんだ」


 出雲のおじちゃんは約束を守ってくれて、お菓子を持ってきてくれたらしい。久し振りのおやつにキラキラと目を輝かせちゃう。


「食べる?」


 優しげな笑みで御国母は玉藻の頭を撫でる。玉藻の答えは決まっている。


「うん! 食べる!」


 綿菓子のお菓子があったので、食べたいとトテトテとおとーさんに近づき、綿菓子のお菓子をもらう。


 袋を開けて、白い綿菓子を千切って食べるとふんわりとした甘みを感じて、すぐにその感触は溶けてなくなる。この感触が玉藻は大好きなのだ。


「おいしーね!」


「良かったわ。貴方、私は洗濯しちゃうわ。かなり臭うし、集合までになんとかしないと」


「あぁ、頼むよ」


 おかーさんは洗濯に。おとーさんは持ってきた荷物を調べ確認し、玉藻は綿菓子をパクパクと食べるのであった。





 そんで、新しいおうちにおひっこししたのだ。おんなじお店に住んでたおじさんが案内してくれたのだ。なんでかわからないけど、おとーさんもおかーさんも初めましてって、ごあいさつするから、お店でおとなりにいたおじさんだよって教えてあげようとしたら、おじさんが笑顔でシーッて。忘れていたのは恥ずかしいことだから、内緒にしておこうって。


 恥ずかしいのは私も嫌だ。なので、一緒にシーッて内緒にすることにした。それで新しいおうちに住むことになった。お部屋がたくさんあっておどろいちゃった。


 ひさしぶりに、おふろにも入った。おかーさんがごしごしって洗ってくれた。ゴンちゃんも一緒にごしごしって。きれいきれいになって、髪を乾かしたらおさげにもしてくれた。


 おやつに食べてって、おじさんが綿菓子をくれたので、甘い甘いってあっという間に食べちゃった。おかーさんがなみだを流していたので、いたいいたいのって聞いたら、うれしいのって答えてくれた。


 たくさん歩いたからおひるねしようねって、ベッドでおねんね。ここは安心だよっておとーさんが頭をなでてくれるので、えへへって嬉しくて笑いながらねちゃった。起きたらハクちゃんと遊んで良いか、おかーさんに聞こうっと。


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― 新着の感想 ―
[一言] 玉藻ちゃん視点ほんわかで良いですね〜
[良い点] ほっこりしました。 [一言] やはり幼女こそが物語の柱。 おっさんの正体もバレたし何かしらの縁があるのかな? おっさんの正体バレから物語が加速する……!?
[良い点] 純真な子供視点は涙がでてくるな
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