(9)女湯(前編)
男湯に替わり、次は女湯です☆
めくるめく女子トークを、御楽しみあれ~~☆
慰安旅行、初日。
各自割り当てられた部屋へ荷物を置いてくると、異種の女たちは揃って温泉へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ乍ら、皆でべらべらと喋っている。
赤の貴婦人は小猿の様にポンポンと服を脱ぐと、さして身体を隠す事もなく、
紐でグルグルと髪を束ねる。
そんな赤の貴婦人を皆、思わず見てしまう。
「貴女ねぇ・・・・恥じらいってものがないの?!」
顔をしかめて言う白の貴婦人に、赤の貴婦人は目を丸くする。
「恥じらい?? んー?? 考えた事ないな~~」
曝け出した局部を隠す事もなく、赤の貴婦人は腕を組む。
そして事もあろうか、こんな事まで言い出すではないか。
「だって、あたし、御兄ちゃんとも御風呂入るもん」
「えええっ?!」
「其れは、ちょっと問題有りなんじゃ・・・・」
「大問題ですわ!!」
「父親ならともかく、兄ってところが凄いわね・・・・」
赤の貴婦人の爆弾発言に、皆が顔を引き攣らせる。
「年頃の女の子が、そんな事しちゃいけないわ!!」
「え~~?? 年頃たって~~」
こう見えても赤の貴婦人は同族の中でも年長者なのだが、其の少女の様な外見上、
年下の同族から、どうしても子供扱いされてしまうのだ。
そんな若い娘たちの遣り取りを見ながら、快の貴婦人がクスクスと笑う。
「皆、裸になるのですもの。何も気にする必要はありませんよね」
「そうですよね~~!! 母様~~!!」
快の貴婦人に優しい言葉を掛けて貰い、赤の貴婦人は、にぃと笑う。
そして、
「温泉!! 温泉!! いっちばん乗り~~!!」
さっさと走って行こうとする赤の貴婦人の腕を、誰かが掴んだ。
「待てぃ」
赤の貴婦人が振り向くと、一族一の鬼女、夏風の貴婦人が睨んでいた。
「母様が先だっつーの!!」
夏風の貴婦人に叱られて、赤の貴婦人は「ぶー!!」と頬を膨らませる。
「良いのですよ。誰が先でも」
快の貴婦人が微笑したが、此処は、やはり一族一の鬼女。
「そう云う訳にはいきません」
首を縦に振ろうとはしない。
すると、
「では、一緒に行きましょうね」
快の貴婦人は赤の貴婦人の手を取ると、にこりと笑う。
「ラジャー!!」
赤の貴婦人は白い歯を見せると、ぴょんぴょん跳ね乍ら快の貴婦人と共に浴場へと出て行った。
其の後ろ姿を見る夏風の貴婦人は、
「ううむ・・・・母様、甘い」
仕方なさそうに上着を脱ぎ始める。
其の隣で髪を結い上げていた白の貴婦人が、ぼそりと言った。
「でも赤の貴婦人て・・・・意外に・・・・身体、凄くない??」
「実は、わたくしも・・・・言おうと思っておりましたの」
「私も!! あんなにグラマーだとは思わなかった!!」
蘭の貴婦人や春風の貴婦人も、うんうんと頷く。
ただ細くて小さいだけだと思っていたら、どっこいである。
身体の隅々まで鍛え上げられている上に、胸の大きな事と云ったら・・・・。
「嫌だわ。赤の貴婦人に負けるだなんて」
一族一のプレイガールで在る白の貴婦人は悔しそうに歯軋りする。
其れを横目で見る蒼花の貴婦人が、
「ふふ。貴女も十分、巨乳ですわよ。それじゃ、御先に」
そう言って浴場へと出て行く。
春風の貴婦人と白の貴婦人も服を脱いで髪を結い上げると、「御先に失礼」と脱衣所を出て行く。
残った夏風の貴婦人と蘭の貴婦人も長い髪をグルグルと頭上で巻き乍ら、浴場へと向かう。
すると隣の小柄な夏風の貴婦人を見ながら、蘭の貴婦人は羨ましそうに唇を尖らせる。
「夏風の貴婦人は、いいわよね~~」
羨望の眼差しで見下ろされて、夏風の貴婦人は首を傾げる。
「ん??」
「赤の貴婦人もそうだけど、どうやったら其処まで身体を鍛えられるの??」
「ああー」
ファイティング精神を目指す蘭の貴婦人には、
夏風の貴婦人の筋肉のよく付いた身体が羨ましいらしい。
「まぁ、地道な努力だわよ。赤の貴婦人も一見ふざけてるけど、あれで努力家なのよ」
「うん・・・・判る。努力あるのみか~~」
「そうそう」
二人が浴場に出ると、既に皆、温泉に浸かっていた。
一人泳いでいる者が居たが、其れが誰であるかは、最早、言うまでもないであろう。
「きゃあああ!! 素敵!! 素敵だわ!! 此れが世で言う温泉なのね!!」
どうやら温泉が初めてらしい蘭の貴婦人は、形良く岩に囲まれた浴場に目を輝かせる。
二人は早速、足から浸かると、じゃぶじゃぶと湯に入る。
が。
夏風の貴婦人の背中に有るものに今頃気付いた蘭の貴婦人は、
「ああーっ!!」
と大声を上げた。
蘭の貴婦人の声に皆の視線が一斉に集まる。
「夏風の貴婦人!! どうしたの?! 其の傷!!」
蘭の貴婦人の指差す先には、夏風の貴婦人の小柄な背中が在った。
其の形良く筋肉のついた背中には、縦に大きく傷が入っていた。
随分と昔の傷の様だが、はっきりと痕が残っている。
「まぁ・・・・痛そう!!」
春風の貴婦人が口に手を当てると、夏風の貴婦人はポリポリと背中を掻く。
「ああー、此れ、昔のよ。軍人だった時」
「でも、わたくしたち異種は、傷痕が残らないって聞いていたわ」
辛辣に白の貴婦人が言うと、夏風の貴婦人も首を傾げる。
「私も、そう聞いたわね。他の傷は全部治ったんだけどねぇ、此れだけは痕が残ったのよ。
傷の度合いにもよるのかも知れないわね」
女にしては目立ち過ぎる傷痕である。
此れ以上触れては何であろうと、もう誰も彼女の傷の話題には触れなかった。
すると。
じゃぶ~ん・・・・じゃぶ~んと、温泉が波打ち始める。
「ちょっとぉ!! こんな所で泳がないでよ!!」
白の貴婦人が眉を跳ね上げる。
泳いでいるのは・・・・何を隠そう、御騒がせ赤の貴婦人である。
「え~~?? 気持ちいいよ~~。皆も泳いだら~~??」
「泳がないわよっ!!」
しかも、貴女ね、
「平泳ぎするんじゃないわよ!! みっともないったりゃ、ありゃしないわ!!」
きぃっと白の貴婦人が牙を向く。
だが赤の貴婦人は依然、蛙の如く温泉をゆらりゆらりと泳ぎ続ける。
「だって此の広さじゃ、クロール出来ないんだも~ん。気持ちいいよ~~」
すぃー、すぃーっと泳いでいく。
其の姿を見ていた蘭の貴婦人までもが、
「そんなに気持ちいいなら、私も泳いじゃおうかしら?!」
わくわくと拳を握り締める。
其れを挑発する様に夏風の貴婦人が、
「泳げ泳げ」
がははは!! と笑う。
「辞めなさいってば!!」
白の貴婦人が慌てて蘭の貴婦人を止めに入ろうと立ち上がった。
すると今度は、皆の視線が白の貴婦人に釘付けになった。
「白の貴婦人・・・・貴女って本当・・・・グラマーですのね」
「此の身体で男を口説いてるのね」
「ああ~ん!! 羨ましい!!」
止める筈であった蘭の貴婦人にまでまじまじと見られ、白の貴婦人は胸を隠す様に湯にしゃがんだ。
「ちょ、ちょっと!! 皆して、じろじろ見ないでよ!!」
「何で今更、隠すのよ?? いつも散々、自分の美貌と肉体美を自慢してるじゃない??」
きょとんとして言う夏風の貴婦人に、白の貴婦人は頬を膨らませるだけで答えようとしなかった。
そんな白の貴婦人に、春風の貴婦人が更に追い討ちを掛ける。
「まぁ!! 白の貴婦人、真っ赤ですわよ!!」
「おおー!! 今日の白の貴婦人、妙に可愛いぞ~~!!」
赤の貴婦人まで、げらげら笑う。
皆が大笑いする中、
「やっぱり男は巨乳が好きなのかしら??」
未だ立った儘の蘭の貴婦人が自分の胸を握り乍ら、ぼそりと言った。
「私、背ばっかり、ひょろりと高くて、ちっとも身体グラマラスじゃないし、胸だって、
こんなに小さいのよぉ」
うう・・・・と己の胸を握る蘭の貴婦人に、
「いいから、立ってないで座りなさいよ・・・・」
呆れた様に白の貴婦人が言う。
「でもさぁ」
「いいから座りなさいって」
いつまで皆の前で裸体を晒す気よ?!
歯軋りする白の貴婦人に蘭の貴婦人が漸く座ると、
「胸の大きさなんて関係ないよ~~」
赤の貴婦人がゆらゆらと泳いで来る。
そして。
「私だったら・・・・うん!! 此のくらいが好きだなぁ!!」
突然、春風の貴婦人の胸を、両手でガシリと掴んだ。
「きゃああああ!!」
当然のこと乍ら春風の貴婦人は悲鳴を上げると、胸を隠して赤の貴婦人を見る。
「な、何するんですの!?」
蒼花の貴婦人の後ろに隠れる春風の貴婦人に、赤の貴婦人は平然と言う。
「だからぁ。蘭の貴婦人も春風の貴婦人も、同じくらいじゃん。其のくらい小振りもいいな~って」
「こ・・・小振りって・・・・貴女ね、其処まで言うんじゃないわよ」
取り付く島もないと言う様に白の貴婦人が顔をしかめる。
が。
更に赤の貴婦人は言った。
「ええ?? だって、どう見たって小振りじゃん」
「だから、貴女ね、そう、はっきり言うものじゃないわよ」
「ええええ?? だって白銀の貴公子は白の貴婦人みたいな巨乳より、
春風の貴婦人みたいな小振りが好きだから結婚したんでしょ??」
「何よ!! それじゃ、まるで巨乳のわたくしが負けたみたいじゃないのよ!!」
「だから負けたんだよ。白銀の貴公子は巨乳より小振りが好きなんだよ」
何やら話題がずれてきている気がしないでもないが、
言い合いをする白の貴婦人と赤の貴婦人の間に、更に蘭の貴婦人が入ってきた。
この御話は、まだ続きます。
女湯は少し長めでして、これは「前編」となっています。
まだまだ続く女子トークを、どうぞ御楽しみに☆
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