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異種たちの慰安旅行  作者: 貴神
14/22

(14)王様ゲーム

さて、王様ゲームの始まり始まりです☆


御笑い中心の御話ですが、楽しんで貰えたら嬉しいです☆

一体、何がどうなってこうなってしまったのか、異種一同は王様ゲームをする事になっていた。


話題は引き続き、慰安旅行一日目の夜である。


同族同士の親睦を深めようと高級宿に揃って宿泊し、皆、仲良く夕食を・・・・と云う訳には、


どうやらいかない様だ。


一族一の鬼女の命令、もとい、提案により、酒や食事を楽しみ乍ら、


王様ゲームをする事になってしまった異種一同。


始めは冗談じゃないと云う顔をしていた者たちも、


次第に真剣な眼差しでゲームに盛り上がっていた。


ゲームの流れとしては、


王と云う文字と一から十二まで数字の書かれた十三本の細い棒が黒い壺に入っており、


其の中から各自一本ずつ棒を引いて、王と書かれた棒を引いた者が指名した番号を持った相手に、


思い通りの命令が出来る・・・・と云う具合である。


当初、夏風の貴婦人に付き合って仕方なくゲームをするか・・・・と思っていた一同であったが、


皆、直ぐに激しい危機感を感じた。


「此れは・・・・」


「夏風の貴婦人が・・・・」


「王様にでもなったりしたら・・・・」


「何を要求されるか」


「判ったものじゃないわ・・・・」


「付け加えるなら、赤の貴婦人あたりも危険だぞ・・・・」


夏風の貴婦人と赤の貴婦人は八重歯を見せて楽しそうに棒を引いている。


快の貴婦人などは穏やかに微笑しており、翡翠の貴公子に至っては既に酒が回っており、


ぼーっとしている。


其の四名を除いた全員は明らかに「やばい・・・・」と感じていた。


ジャラジャラと壺に棒を戻し乍ら、又一斉に棒を取る。


「誰?? 誰が王様??」


まさか夏風の貴婦人じゃないだろうな・・・・?!


皆が緊張の眼差しで見回すと、


「ははははは!!」


笑い声が上がった。


「ふっふっふ。やっと私の番が来たか」


そう言い乍ら「王」の棒を掲げたのは、ナルシストな白の貴公子だった。


白の貴公子は真っ白なサラサラストレートヘアを靡かせると、


「どうしようかな~~」と鼻を鳴らした。


「ふっふっふ・・・・では、『世界で一番美しいのは、白の貴公子様、貴方です』と言い乍ら、


グラスにワインでも注いで貰おうか」


丁度、飲み干したワイングラスを手で揺らし、


「二番だ!! 二番の奴!!」


白の貴公子は番号を指名した。


すると、ガタリ、と椅子が動いた。


立ち上がったのは・・・・


「マッチョ!! 貴様かっ!!」


赤の貴公子であった。


ぬううう・・・・と白の貴公子は思いっきり呻くと、


目の前に跪く赤の貴公子に心底嫌な顔をする。


「世界で一番美しいのは、白の貴公子様、貴方です」


真面目な顔と低い声でワインを注ぐ赤の貴公子に、皆クスクスと笑い出す。


こんな筈では・・・・。


後悔先に立たず、白の貴公子はガクリと項垂れた。


そして又ジャラジャラと壺に棒を戻すと、各自新たに棒を取った。


「きゃああ!! わたくしが王様ですわ!!」


嬉しそうに声を上げたのは春風の貴婦人だった。


どうしましょうかしら??


どうしましょうかしら??


春風の貴婦人は指を絡めると、


「何か面白い芸をして欲しいですわ。そうですわね~~、六番の御方」


にこにこと指名する。


「六番、誰??」


「誰だ??」


皆が口々に言うと、


「俺だ」


ぼそりと声がした。


其の声の先を見て、皆が一斉に言葉を失った。


視線の集中点には一族一暗い男、漆黒の貴公子が居た。


どう見ても一発芸など出来る様には見えない。


が。


「グラスを六個と、水差しを持って来て欲しい」


漆黒の貴公子はベルガールに何やら頼んだ。


直ぐにグラスと水差しが持って来られる。


すると漆黒の貴公子はグラスを横一列に自分の前に並べると、中に水を注ぎ始めた。


そして徐ろにフォークを逆さに持つと、柄の方でチンチンと音を鳴らし始めたではないか。


チンチンチン・・・・チンチンチン・・・・(咲い○咲い○)。


「う・・・・此れは」


チンチンチンチンチンチンチン(チュ○○ップーのは~○~が~)。


「・・・・チュ○○ップ」


「・・・・チュ○○ップですわよね・・・・」


チンチンチンチンチン・・・・(綺麗○な)。


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


漆黒の貴公子の一発芸は地味に終了した。


先程までの盛り上がりは何処へいったのか、テーブルは静まり返っている。


「は、はははは。いや、実に素晴らしかったね。さぁ、皆、次を遣ろうじゃないか」


白銀の貴公子が場を繕う様に言うと、皆「ほほほほ」「はははは」と笑い乍ら壺に棒を戻す。


だが白の貴公子が隣の漆黒の貴公子に小声で話し掛けてくる。


「御前・・・・こんな事、いつも遣っているのか??」


並べられたグラスを指差すと、漆黒の貴公子は、はっきりと頷いた。


「よく一人で遣っている」


「それで御前・・・・本当に切手も集めているのか??」


「集めている」


「・・・・・」


やはり・・・・オタクなのか?!


もう、こいつとは話さないでおこう・・・・そう心に固く誓う白の貴公子であった。


王様ゲームは更に続いた。


こう云ったゲームでは、大体三つのタイプに分かれるものである。


別に王様になってもならくとも、どっちでも良い者。


まぁ、一度くらいは王様になってみてもいいかなと思う者。


何が何でも王様にならなくては気が済まない者。


大体、此の三つに分かれるものだ。


因みに蘭の貴婦人は「一度でいいから何としてもなりたい!!」と云う、


今一微妙なラインの心持ちの者であった。


彼女は、


「ゲーム上なら、ちょっと大胆な事も主に出来ちゃうかも・・・・」


と云う、実に不埒な事を考えていた。


蘭の貴婦人は翡翠の貴公子に片想い中であった。


普段なかなか逢う事の出来ない翡翠の貴公子。


其の彼が今日は私服姿で居る。


「特に髪のセットをしている訳でもなく、黒とタータンチェックのラフな姿が又、


素敵だわ・・・・」


ふう・・・・と密かに溜め息をつき乍ら、翡翠の貴公子を見詰める蘭の貴婦人。


翡翠の貴公子の隣には、移動した白の貴婦人が座っている。


白の貴婦人の御目当ては赤の貴公子なのであるが、


それでも翡翠の貴公子の隣を陣取っている白の貴婦人が、羨ましい蘭の貴婦人である。


「主って、こう云った席でも物静かな人なんだわ・・・・」


うっとりとし乍ら新たに棒を引く蘭の貴婦人には、


翡翠の貴公子が酒に酔って既に自我を失っているとは知る由もない。


「ああ・・・・十二番。ちっとも王様になれないわ」


手に取った棒を見ながら、蘭の貴婦人は残念そうに肩を落とす。


すると。


「うはははは!! やった~~!!」


何やら隣の赤の貴婦人が、はしゃぎ出した。


「王様!! 王様!! 王様、ゲット~~!!」


拳を握って大笑いする赤の貴婦人の手には、しっかりと王様の棒が握られていた。


一瞬、皆の血の気が引く。


「う~ん?? 何がいいかなぁ?? せっかく王様になれたんだから、何か凄い事・・・・」


「に、しなくていい」


「御願い、普通のにしてちょうだい」


「頼む・・・・変なのは辞めてくれ」


考え込む赤の貴婦人に、皆揃って懇願する様に見詰める。


「えーっ?? んー・・・・じゃあ、普通ので」


皆の視線に赤の貴婦人が仕方なく言うと、


「うんうん」


「良かったですわ」


皆、胸を撫で下ろす。


「んじゃね」


赤の貴婦人はナイフとフォークで、マカロニ一つとスパゲティ一本を取ると、


スパゲティをマカロニの輪に器用に通し始める。


「此れを二人が端から咥えて、真ん中のマカロニ目指して食う!!」


ええええっ?!


「するのは一番と十二番の人~~!! 王様の命令なり~~」


にぃ、と赤の貴婦人が笑うと、甲高い悲鳴が上がった。


「嫌~~~!! 嫌~~!! 絶対に嫌~~!!」


悲鳴と共に立ち上がったのは蘭の貴婦人だった。


其の蘭の貴婦人を見た或る者も勢い良く立ち上がる。


「嫌だ!! 嫌だ!! 絶対、嫌だあぁっ!!」


立ち上がったのは、白の貴婦人の席に座っていた金の貴公子だ。


其の姿を見た蘭の貴婦人は更に絶叫する。


「嫌ああ!! 金の貴公子なんかと・・・・絶対、嫌ああ!!!」


まるで化け物でも見たかの様に半泣き顔になる蘭の貴婦人に、金の貴公子も負けじと言う。


「俺だって御前みたいな女は嫌だっ!! 絶対、絶対、しないからなっ!!」


互いに歯を剥き出して言い合う二人に、赤の貴婦人はニカッ笑った。


「王様の命令だから」


ニカニカと白い歯を見せ乍ら、一本のスパゲッティが乗った皿を二人に差し出す。


う・・・・と呻いたところで、引く様な赤の女王様ではない。


其処へ、


「王様の命令は絶対だぞ~~!! ファーストキスをした仲じゃないか~~!!」


と、夏風の貴婦人が野次を飛ばしてくる。


「・・・・・」


「・・・・・」


金の貴公子と蘭の貴婦人は観念した様に項垂れると、涙を飲んで、


スパゲッティのマカロニ早食いを決行した。


其の後、唇が擦り切れそうな程、二人が己の唇をナフキンで拭ったのは言うまでもない・・・・。


ゲームの風向きが変わってきていた。


先程まで、とんと王様の棒を引く事のなかった夏風の貴婦人が遂に王の棒を引いたのだ。


「がはははは!! やっと風が私の方へ吹いて来たぞ!!」


高笑いし乍ら、夏風の貴婦人は、バン!! とテーブルを叩く。


そして。


「九番。脱げ」


意味不明な事を言う。


「ちょ、ちょ、ちょ、夏風の貴婦人!! それは、ちょっと、あんまりだわよ」


慌てて口を出す白の貴婦人に、夏風の貴婦人は、にぃ、と笑った。


「別に全部じゃないわよ。下だけ脱げ!!」


下あぁぁ?!


ひいぃぃ!!


と皆、恐怖の声を上げる。


九番・・・・九番、誰よ?!


一瞬、誰もが生唾を飲むテーブルで、又も此の男が絶叫した。


「嫌だーっ!! 絶対、絶対、嫌だーっ!!」


憤慨した様に金の貴公子が拳でテーブルを殴る。


しかし。


「脱がないなら、脱がせてあげるわよ??」


其のまま遣り兼ねない夏風の貴婦人が笑っている。


金の貴公子は後ずさった。


「嫌だ・・・・俺は絶対、脱がないぞ」


棒を握り締めたまま対峙する金の貴公子と夏風の貴婦人に、とうとう快の貴婦人が立ち上がった。


「まぁまぁ、二人とも、落ち着きましょう」


快の貴婦人はハンガーから自分のガウンを持って来ると、


「此れを着ておけば大丈夫ですからね」


金の貴公子に優しく手渡した。


「・・・・・」


こんな物を手渡されては、最早、脱がなければならないと云うものであろう。


快の貴婦人、意外におそるべし・・・・と思う一同である。


其の後の金の貴公子は可哀相に、


あられもないガウン姿で大人しく座り込んだまま料理を摘まんでいた。


それから、ゲームは恐ろしい確率で夏風の貴婦人と赤の貴婦人が王様となり、


彼女たちの出す命令は回を増す毎にエスカレートし、十秒間以上のディープキスはざらであり、


気が付けば皆、命懸けのゲームとなっていた。


此処まできて王様にも指名にも選ばれていないのは、翡翠の貴公子だけであった。


実に運の良い彼であったが、そんな彼にも、とうとう悪魔が笑い始めた。


又もや赤の貴婦人が王の棒を引き、ゲラゲラと笑っていた。


かなり酒が回っている様だが、赤の貴婦人はガブガブと麦酒を飲み乍ら言う。


「ん~~。人にキスさせるのもいいんだけどぉ~~、何か、あたしも、キスしたいんだよね~~」


赤の貴婦人は考える様に言うと、ぽんと手を叩いた。


「じゃ、王様と八番の人が、熱いキスでもしちゃおう~~!!」


楽しそうに赤の貴婦人が立ち上がる。


だが八番が誰か判らない。


「八番、誰だよ??」


「誰~~??」


「金鷺・・・・まさか又、御前か??」


「ざけんな!! 俺は四番だ!!」


「誰?? 誰??」


誰??


なかなか申し出ない八番に、白銀の貴公子が困った様に言った。


「八番は・・・・」


「白銀の貴公子、御前か!!」


「きゃあああ!! あなた!! それは、わたくし、耐えられませんわ!!」


絶叫する妻の春風の貴婦人に、白銀の貴公子は「違う」と首を振ると、


「八番は翡翠の貴公子だ」


隣の翡翠の貴公子を目で示した。


皆の視線が一斉に翡翠の貴公子に集まる。


ちびちびと麦酒を飲み乍ら、翡翠の貴公子は半分夢の中だった。


其れを見た赤の貴婦人は、


「わーい!! 翡翠の兄だあぁ~~!!」


楽し気に翡翠の貴公子の下まで移動すると、周りの目も気にせず、ガバリと接吻する。


「嫌あああ!!」


青ざめて叫ぶのは蘭の貴婦人であったが、最早、止める間など在りはしない。


赤の貴婦人は長々~っとキスを堪能すると、


「ああ、美味しかった~~!!」


御満悦で唇を離した。


翡翠の貴公子は相変わらず半寝惚け状態だが。


赤の貴婦人は其のまま自分の席に戻ろうと思ったが、ぐるりとテーブルを回り乍ら、


金の貴公子の後ろ姿に目を留めた。


金の貴公子は王様の命令を繰り返し受け、既に全裸の上に、女物のガウンを着ていた。


此れでは、もう、蒼花の貴婦人を口説くどころではない。


何だか、ちょっと可哀相である。


そう思った赤の貴婦人は、いきなり背後から金の貴公子の頭を掴むと、突然、口付けた。


挿絵(By みてみん)


吃驚する金の貴公子の口を吸って吸って吸いまくると、漸く赤の貴婦人は顔を離す。


「あ・・・あのなあ!! 何だよ、いきなり!!」


自分の恥晒しな姿に、好い加減、頭にきているのか、金の貴公子が怒鳴った。


「んー、何か可哀相だったから」


「ほっとけ!! 俺が今、キス欲しそうな顔に見えるかっ?!」


ギャンギャン牙を剥く金の貴公子に、だが赤の貴婦人は首を振った。


「そうじゃなくて~~、何か、あんまり可哀相だったから」


「だから何だよ?!」


「だから間接キスしてあげようかなと思って」


「・・・・!!」


きょとんと言う赤の貴婦人に、金の貴公子は開いた口が塞がらなかった。


何・・・・?!


何を言ってるんだ・・・・赤の貴婦人は・・・・?!


金の貴公子は暫し固まると、弾かれた様に席を立ち、自分の服を掴んで扉へと向かった。


「俺・・・・ちょっと酔い醒まして来る!!」


吐き捨てる様に言って去って行く金の貴公子は耳まで真っ赤だった。


そう云う訳で、メンバーが一人減ってしまった。


其の様子に意外にあっさりと、夏風の貴婦人がパンパンと手を叩いた。


「ああ~~、じゃあ、ゲームは此れで終わり!! 各自、好きな様にしていいわよ~~!!」


其れを合図に男性陣は立ち上がると、グラスを持って遊戯室に移動を始める。


白の貴公子などは、ちゃっかりと蒼花の貴婦人の手を取っている。


春風の貴婦人や夏風の貴婦人は快の貴婦人のグラスと手を取ると、ゆっくりと遊戯室へと向かう。


赤の貴婦人などは、


「よっし!! ビリヤードとボーリングするぞおぉ~~!!」


相変わらず元気良く一人拳を握っていたが、不意にガシリと肩を誰かに掴まれた。


振り向くと・・・・後ろには蘭の貴婦人が居た。


「御願い!! 私にもキスして!!」


「ええ??」


何を言い出すのやら、蘭の貴婦人は真剣な眼差しで迫ってくる。


「私も主の間接キスが欲しいの!! 御願いよ~~!!」


どうやら蘭の貴婦人は赤の貴婦人が金の貴公子にした様に、


翡翠の貴公子との間接キスが欲しい様だ。


しかし。


「ええ~~?? 別にキスはいいけど、今キスしたら、金の貴公子との間接キスになっちゃうよぉ??」


「え・・・ええええ!! 嫌ああっ!! 其れは嫌ああっ!!」


赤の貴婦人の尤もな意見に、蘭の貴婦人は防御をする様に手をクロスすると、


ひいぃぃ!! と身体を仰け反った。


こうして「同族の親睦を深めようの会」は、まだまだ続くのであった。

この御話は、まだ続きます。


何とか王様ゲームも終わり、次は遊戯室へ移動の異種たち☆


続きを、御楽しみに☆


少しでも楽しんで戴けましたら、コメント下さると励みになります☆

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