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異種たちの慰安旅行  作者: 貴神
13/22

(13)同族の親睦を深めようの会

ここからは、皆で楽しく御酒や料理を楽しみます☆


と思いきや・・・・の展開を御楽しみに☆

食堂の広間には皆ぞろぞろと集まり出していた。


席は特に決まっていなかったが、皆、暗黙の了解で端の席を空けると両側に男女に分かれ、


男子は白銀の貴公子、翡翠の貴公子・・・・と並んで座り、女子は春風の貴婦人、


夏風の貴婦人・・・・と云う順に座り出す。


普段は夏風の貴婦人と翡翠の貴公子が最初に座るのだが、快の貴婦人が出席する時は、


其の息子夫婦が先に並ぶ事になっていた。


テーブルにはナフキンや食器、キャンドルが並んでいるものの、食事は、


まだ出て来る気配はない。


なので早く来た者同士がぺちゃくちゃと話していた。


金の貴公子はちらちらと斜め向かいの蒼花の貴婦人を見ると、夏風の貴婦人に話し掛ける。


「別に、ずっと、此の席に座ってなくてもいいんだろう??」


明らかに蒼花の貴婦人狙いの金の貴公子に、夏風の貴婦人は笑った。


「乾杯したら、いいわよ。奥には遊戯室も在るし、好きな様に過ごすといいわ」


「おお!!」


やったぜ・・・・!! と金の貴公子が拳を握っていると、蘭の貴婦人が話に入り込んできた。


「遊戯室、さっき覗いたんだけど凄いのよ!! ボーリングにビリヤード、


ルーレットゲームも在ったわ!! あとあと、カウンターバーも在るのよっ!!」


初めて、こんな豪華な部屋に泊まった!! と感動で指を絡める蘭の貴婦人。


「あ。あたし、ビリヤード強いよ」


にぃ、と笑うのは、赤の貴婦人だ。


「ふふふふ。私は、どれも強いよ。ま、美しい私なら当然だけどな」


言い乍ら髪を掻き揚げるのは、ナルシストな白の貴公子だ。


「なら、後で皆で遣ろうぜ。な、主!!」


金の貴公子が隣の翡翠の貴公子を振り向くと、だが彼は予想外の返事をした。


「俺は、そう云うゲームはした事がない」


思わず一同が目を丸くする。


「翡翠の貴公子・・・・君、私の屋敷に居る時、しなかったのかい??」


吃驚して訊ねてくる白銀の貴公子に、翡翠の貴公子は頷いた。


「シェパード家に居た頃は今より忙しかったし、そう云う事をする暇はなかった」


淡々と答える翡翠の貴公子に、夏風の貴婦人も「ああ」と頷く。


「そう云えば、そうだったわ~~。こいつ、チェスとカードゲーム以外した事ないのよ」


「そうだったのか・・・・意外だ」


「意外だわ・・・・」


「意外ね・・・・」


皆が驚愕の眼差しで翡翠の貴公子を凝視する。


「ま、所詮、軍人上がりは、そんなものさ」


ふふ、と優越感に鼻を鳴らすのは、由緒正しき貴族出の白の貴公子である。


すると漸く快の貴婦人が広間に姿を現した。


其の姿を見た一同は途端に御喋りを辞めると、一気に席を立つ。


そして白銀の貴公子と春風の貴婦人が歩み寄り、快の貴婦人の手を取る。


「皆さん、こんばんは」


快の貴婦人が微笑むと、皆が挨拶と共に敬礼をする。


快の貴婦人が席に着くと、少し遅れて一同も席に着く。


其れが合図だったかの様に、


ベルガール達がシャンパンの瓶と料理の乗った大皿を持って入って来た。


全てのグラスにシャンパンが注がれると、「どうぞ」と快の貴婦人が夏風の貴婦人に目配せする。


夏風の貴婦人はグラスを持って立ち上がると、白いテーブルに着いた同族たちを見渡した。


「今日、此処に、皆が揃った事を、本当に嬉しく思う。


そして何より母様が御出席して下すった事に、歓びの念が堪えない。


私たち異種が政界に入って、およそ百年。其の間も母様の存在が、


どれだけ御力になったか言葉にならない程だ。そして私たちは百年掛けて此処まで来た。


私たちは今、幸福で在ると信じている。そして、これから先も、


此の道を築き上げて行くのだ。其の同志として、此の三日間を共に楽しく過ごそうじゃないか。


いつも見守っていて下さる母様に、出逢えた皆に・・・・


そして我々の幸多き未来を祈って・・・・乾杯!!」


「乾杯!!」


皆が一斉にグラスを掲げ、口へと運んだ。


そして一気に笑い声が弾け飛ぶ。


白銀の貴公子は快の貴婦人の皿に料理を盛ると、優しく手渡してやる。


赤の貴婦人はガバガバと肉料理を取ると、早速ばくばくと食べ始める。


其の兄で在る赤の貴公子は、あらゆる料理を盛り沢山に皿に乗せると、黙々と食べ始める。


其処へ、赤の貴公子に気の有る白の貴婦人がウィンクをしてくる。


翡翠の貴公子と漆黒の貴公子は、手の届く範囲の料理をしょぼしょぼと皿に盛ると、


無言で食べている。


大皿に盛られた料理は次々と空になり、新たな料理をベルガール達が途切れる事なく運んで来る。


シャンパンやワインも同様に、ベルガール達が絶え間なくグラスに注ぎに回っている。


部屋の一角では弦楽器を持った演奏家たちが優雅な音色を奏でている。


其のメロディーに乗る様にして、金の貴公子は或る貴婦人の傍へと移動する。


「美しい髪だ・・・・」


シャンパンを片手にした金の貴公子に話し掛けられて、蒼花の貴婦人はにこりと笑った。


其処へ。


「蒼花の貴婦人・・・・貴女は其の美しい髪だけに留まらず、其の声も取り巻く雰囲気も、


なんと美しいのだろう」


甘く囁く様に白の貴公子が現れる。


金の貴公子と白の貴公子は蒼花の貴婦人を挟んで互いに睨み合うと、


彼女を口説くべく甘いマスクを浮かべる。


一方、白の貴婦人は赤の貴公子の隣の席へ移動すると、艶かしく話し掛けている。


夏風の貴婦人はグラスのワインを飲み干すと、


「もう、シャンパンはいいから、麦酒持って来て。皆には、それぞれ飲みたい物を」


メイドに指示を出す。


「かしこまりました」


皆、実に好き放題をして盛り上がっていた。


更に其の盛り上がりを一層上げようとすべく、赤の貴婦人がテーブルの下から鞄を取り出した。


「じゃじゃじゃ~ん!! 皆、ちゅ~もぉ~く~~!!」


何だ?? 何だ?? と皆が赤の貴婦人を見ると、赤の貴婦人は黒のシルクハットを被り、


黒い付け髭を付けていた。


「赤の貴婦人のマジックショーで~~す!!」


赤の貴婦人は椅子の上に立ち上がると、小さな黒のマントを取り出した。


「はいはい、皆、見て見て~~!! 何にも無い、何にも無いね??」


素手の右手を皆に見せる。


「何にも無い・・・・何にも無いのだけど!!」


赤の貴婦人が黒のマントを右手に掛けると、


「お?! 花が!!」


其のマントを取った瞬間、先程まで素手で在った赤の貴婦人の手に花束が握られていた。


「おお!!」


「凄いわ!!」


皆が驚愕の眼差しを向けると、赤の貴婦人は更に右手にマントを被せる。


「そ~~し~~て~~、さっきまで在った花は・・・・!!」


勢い良くマントを取る。


「あらあら、不思議?? 鳩になっちゃった!!」


そう赤の貴婦人が言うや否や、真っ白な鳩が三羽、彼女の右手から飛び立った。


「きゃあああ!! ちょっと、ちょっとーー!!」


「此処、食堂よーっ!!」


芸に驚く前に、食堂に動物を持ち込んだ事に慌てふためく一同に、赤の貴婦人が笑顔で言う。


「へ~い!! 縫い包みで~~す!!」


「・・・え・・・??」


よく見ると、赤の貴婦人の手から飛び立ったかと思われた鳩は床に落ちていた。


「きゃあああ!! 凄い!! 凄いわ!!」


今し方の青ざめた表情は何処へいったのやら、一斉に皆が歓声を上げる。


「凄い!! 凄いわーー!!」


「どうして?? どうしてなの?? 赤の貴婦人??」


「神力じゃねえのか・・・・??」


「物を出す神力なんて聞いた事ないぞ・・・・」


皆の反応の良さに赤の貴婦人は上機嫌になると、更に次々とマジックを披露して見せた。


其の様子を眺め乍ら、白銀の貴公子が隣の翡翠の貴公子に話し掛ける。


「赤の貴婦人は本当に手先が器用だね。彼女が来てから、実に面白いよ」


話題を振られて、翡翠の貴公子は麦酒を飲み乍ら、コクンと笑顔で頷いた。


「ああ。面白いな」


満面の笑みで、にこにこと返事をする翡翠の貴公子。


其の普段なら有り得ない翡翠の貴公子の表情に、白銀の貴公子は呆然と隣の同族を見ると、


「・・・・翡翠の貴公子・・・・もう酔ったのかい・・・・」


内心、合掌した。


挿絵(By みてみん)


酒に弱い事は知っていたが、此処まで弱かったとは・・・・。


まだ誰も翡翠の貴公子の様子に気付いていない様なので、そうっとしておこう思う白銀の貴公子。


皆が豪快に酒も食事も進めていくと、食堂の空気は段々と酔っ払いの空気に変わっていった。


其の異種たちの勢いに、ベルガール達も異種様と騒ぐどころではなかった。


空の食器を下げては新しい酒と料理を運び続ける中、もしかしたら此のまま皆、


食堂で酔い潰れてしまうのでは・・・・とベルガール達が思っていると、突然、


バン!! とテーブルを叩く音が響いた。


叩いたのは・・・・一族一の鬼女、夏風の貴婦人だった。


「てめぇら!! 座れ!!」


麦酒グラスを片手に夏風の貴婦人が一喝すると、先程まで、わいわい盛り上がっていた雰囲気が、


一気に、ひや~・・・・とし、皆、酔いの冷める眼差しで夏風の貴婦人を見る。


夏風の貴婦人の橙の目が据わっている。


酔っている・・・・此れは、かなり酔っている。


とにかく皆それぞれ空いた席に座ると、行儀良く膝に手を着いて夏風の貴婦人を見る。


すると夏風の貴婦人が声を張り上げた。


「今から、ゲームをする!!」


「ゲームですか・・・・」


「ほほほほ・・・・どんなゲームかしらね??」


皆が当たり障りのない様に返事をすると、


夏風の貴婦人はテーブルの下から細い竹の様な棒の束を取り出した。


「此れだ!! 此れをする!! 勿論、母様にも参加して戴きます」


「・・・・・」


何だ・・・・??


何なのだ・・・・??


皆がすっかり酔いの冷めた眼差しで、ごくりと咽喉を鳴らせていると、


夏風の貴婦人は歯茎を見せて笑った。


「名付けて・・・・王様ゲーム!!」


うはははは!! と一人で笑う鬼女に、皆が絶叫した。


「何が名付けてよーっ?!」


「そのまんまじゃねーかっ!!」


「きゃー!! 辞めて~~!!」


「各自、好きな様にしていいんじゃなかったのかーっ?!」


夏風の貴婦人の言葉と共に、慰安旅行の初日の夜は、まだまだ続くのであった。

この御話は、まだ続きます。


酒に酔った夏風の貴婦人が始める「王様ゲーム」は・・・・?


続きを、御楽しみに☆


少しでも楽しんで戴けましたら、コメント下さると励みになります☆

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