(10)女湯(中編)
引き続き、女子トークです☆
どんどん加速する女たちの語らいを、御楽しみあれ☆
「と云う事は、私みたいな、のっぽで胸が無くても、有りなのかな??」
「貴女ね・・・・自分で無いとか言ったら終わりよ・・・・」
「だから小振りだって言ってるじゃん。あ、でも、蘭の貴婦人は無いに近いかな??
とにかく春風の貴婦人は小振りなんだよ」
「やっぱり私って、女として駄目なの?! 小振りでもないの?!」
「小振り小振りってね・・・・」
「だから白銀の貴公子は小振りが好きで、巨乳の白の貴婦人は問題外なんだよ」
「だから!! 何で、そうなるのよっ?!」
「だって、だから、白銀の貴公子と春風の貴婦人は結婚したんだよ。
白銀の貴公子は毎日揉むなら、小振りの方が良かったんだよ」
「きゃあああ!! 辞めて~~!!」
とうとう春風の貴婦人が声を上げた。
最早、耳まで真っ赤である。
「ええ?? だって毎日、揉まれてるんでしょう??」
話題がずれている事に気付いていないのか、更に突っ込んでくる赤の貴婦人に、春風の貴婦人は、
ひぃぃ!! と、ひたすら顔を隠した。
白の貴婦人も流石のおとぼけ蘭の貴婦人も言葉が見付からない。
「ねぇ?? ねぇ?? 揉み揉みされてるんでしょ??」
ねぇ??
ねぇ??
「知らない!! 知らない!! 知らないですわ!!」
「ええ?? だって夫婦でしょう?? 何でもござれなんでしょう??」
しつこく訊いてくる赤の貴婦人に、既に沸点を超過している春風の貴婦人に助け舟を出したのは、
夏風の貴婦人であった。
「赤の貴婦人・・・・もう許してやれ」
げっそりと言う。
「ええー??」
夏風の貴婦人に止められて赤の貴婦人は納得のいかない顔をしたが、また蛙の様に泳ぎ始める。
ふう・・・・と一同、溜め息。
「一体、何処から白銀の貴公子の話題になったのかしら??」
「ううむ・・・・」
「そう云えば」
ぽん、と白の貴婦人が手を打った。
「白銀の貴公子って本当に今の儘がベストなのかしら??」
「な・・・何ですの??」
まだ何か言う気?? と春風の貴婦人がびくついた顔をする。
白の貴婦人は顎に手を当てると、
「んー。浮気の一つくらい、しないのかしら?? って思って」
クスっと笑う。
だが其れを聞いた春風の貴婦人は、今度は烈火の如く怒り出した。
と云っても、其の怒る姿も可愛らしいのだが。
「そんなこと在る訳ありませんわ!! あの人は誠実な御人なのよ!!
失礼なこと言わないでちょうだい!!」
「えー?? 男だったら浮気くらいするよぉ~~」
蛙の様に泳ぎ乍ら赤の貴婦人が言うと、
「貴女は黙ってて下さいな!!」
さっきの怯えは何処へいったのか、頬を膨らませて言い返す春風の貴婦人。
だが。
「んー。してんじゃないの??」
わははは!! と笑うのは夏風の貴婦人だ。
「してる!! してる!!」
ほほほほ!! と此れ見よがしに白の貴婦人も笑う。
「ええー!! そんな事ないわよーっ!! 結婚は、もっと、こう、神聖なものなのよ!!」
一人反対するのは、ロマンチックな恋愛を夢見る蘭の貴婦人である。
「ほほほほ・・・・わたくしの息子なら、何でも卒なくこなすのでしょうね」
にこやかに笑うのは・・・・事もあろうか快の貴婦人だ。
「母様、上手い!!」
快の貴婦人の言葉に夏風の貴婦人は歯茎を見せて笑うと、
「白銀の貴公子は浮気をしても、最後の最後まで嘘を突き通すタイプだわね!!」
はっきりと言い切る。
「そう!! 其れよ!!」
「ふふ・・・・確かに」
普段、余り感情を表に出さない蒼花の貴婦人も笑っている。
「何?? どう云う事ですの??」
一人、目を白黒させている春風の貴婦人に、蒼花の貴婦人が優しく言う。
「大丈夫よ。貴女は生涯、白銀の貴公子に愛されて幸せに暮らしていけるの」
「そうですの??」
「ええ」
蒼花の貴婦人ににこりと頷かれて、春風の貴婦人は胸を撫で下ろした。
「はぁ・・・・安心しましたわ。
彼が浮気でもするんじゃないかって、少し吃驚してしまいましたの」
「・・・・・」
漸く笑顔を取り戻した春風の貴婦人に、一同は改めて彼女の天然ぶりを見た気分であった。
白銀の貴公子の話が終わると、女たちは更に他の同族男子の話題に移り始めた。
「それにしても貴女の御兄様って、大きいわよね~~」
うっとりと言う白の貴婦人に、赤の貴婦人は手で水鉄砲を遣り乍ら答える。
「ああ~、御兄ちゃん、デカ過ぎてさ~~、旅をするにも目立っちゃって目立っちゃって、
もうトラブルばっかで、妹の私は苦労ばっかだよ~~」
そう言い乍ら、ピューッと湯を飛ばす。
「でも赤の貴公子って素敵だわ。
男らしくて・・・・復活祭の時の軍服姿なんて、もう素敵・・・・!!」
目を細める白の貴婦人は、どうやら赤の貴公子を狙っている様である。
そんな彼女に赤の貴婦人は、きょとんとする。
「何?? 白の貴婦人、あたしの御兄ちゃんが好きなの??」
「ふふ・・・・まぁ、ちょっと遊びたい相手では在るわね」
「ふーん。そうかぁ。あたしの御兄ちゃん、背も大きいけど、あっちも大きいよ」
うははは!! と笑い乍ら、とんでもない事を赤の貴婦人は口にする。
「何?? やっぱ、そーゆーもんなの??」
ぐははは!! と便乗して笑うのは夏風の貴婦人だ。
「な、何で、そう云う、下品な話題になるのよ?!」
きぃっと怒る白の貴婦人だが、最早、後の祭りである。
「ええ~?? だって言っておいた方が、後で吃驚しなくていいかなって」
「余計な御世話よっ!!」
「それに、あたしの御兄ちゃん、ああ見えて、むっつりスケベだよぉ」
「五月蠅~い!!」
「むっつりスケベと云えば」
夏風の貴婦人が口を挟む。
「漆黒の貴公子も、案外そうかも」
「・・・・確かに」
皆、揃って頷き出す。
「漆黒の貴公子って、物静かと云うより暗いのよね」
「そうそう」
「うはははは!! 実は切手を集めるのが趣味な切手オタクだったりして!!」
「うわっ!! 其れ在りそうで恐いわ!!」
「何かちまちました事、好きそうだよね!!」
「そう云えば漆黒の貴公子、字も小さいのよー!!」
うはははは!!
皆の笑いが最高潮に達していると、不意に蒼花の貴婦人が立ち上がった。
「あら・・・・?? 蒼花の貴婦人、大丈夫?? 顔が赤いわ」
「ええ・・・・ちょっと湯中りしたみたい」
春風の貴婦人に見上げられて、蒼花の貴婦人は微笑すると枠組みに座り、足だけを湯に浸ける。
「暗いと云えば翡翠の兄も暗いよねー。・・・・いや、暗いのとは違うかな??」
話題が翡翠の貴公子に移ると、蘭の貴婦人が俄然、声を張り上げた。
「辞めてよねー!! 主こそが物静かな人なのよ!! 主は思慮深い人なの!!」
「確かに翡翠の貴公子は、或る意味、白銀の貴公子より非の打ち所が無いわね」
「勿論、わたくしの夫もパーフェクトですけど、翡翠の貴公子様もそうですわよね。
夜会の休憩で会場の中庭で時々翡翠の貴公子様を御見掛するのですけれど、
何か酷く考え事をしていらっしゃるみたいで、声を掛けられませんの」
「そうなのよねー」
皆がうんうんと頷く中、だが唯一人が首を振った。
「いや・・・・そうじゃないのよ」
低く声を出したのは、翡翠の貴公子の幼馴染みで在る夏風の貴婦人だった。
「あいつはねぇ・・・・ああ見えて・・・・何も考えていないのよ」
「・・・・え??」
「・・・・ええ??」
「普段もそうだけど、夜会での時間なんて、正に何も考えてないわね」
「でも、ちっとも、そんな風に見えませんわ。
いつも、こう・・・・何か真剣に考えていらっしゃるみたいで・・・・」
「そうよ!! そうよなのよ!! 主は考える人なのよ!!」
だが夏風の貴婦人は橙の猫目を据わらせると、
「あんた等は騙されてる」
翡翠の貴公子のイメージをぶち壊すかの様に言った。
「あいつはねぇ!! 何も考えてないのよ!! 考えるのは稀なのよ!!
いつも目につく仕事を無心にこなしているだけなのよ!!」
「う・・・・言われてみれば確かに・・・・」
「そう・・・・見えなくもないわね・・・・」
「何もしてない時のあいつは、せいぜい『風が気持ちいいな』とか、『今日は天気がいいな』とか、
『ぽかぽかして眠いな』とか、其の程度の事しか考えてないの!!
あいつは寝てるか無心かのほほんかの、いつも此の三つなのよ!!」
「・・・・・」
何やら・・・・かなり説得力が在る。
「そ・・・そうだったのね・・・・」
「確かに~。翡翠の兄って天然ボケっぽいもんね~~」
「言われてみれば、そうですわね」
「そうそう。あの外見に騙されちゃ駄目なのよ。
あいつ真面目な顔して昼寝しようかな・・・・とか、いつも思ってるのよ」
思わぬ夏風の貴婦人の告白に、女たちは翡翠の貴公子の意外な一面を知ってしまったと、
目を丸くした。
だが。
「皆して何よー!! 主の悪口言うの辞めてよね!!」
蘭の貴婦人だけは納得がいかないと云う様に怒る。
「のほほん、いいじゃない?! 穏やかな証拠だわ!!
私だって、主と一緒に日向ぼっこしたいもん!! 御昼寝したいもん!!
悪口言うなら、金の貴公子にしてよねー!!」
「金の貴公子ねぇ」
そして女たちの暴露話は、まだまだ続いたりするのだ。
この御話は、まだ続きます。
さて、女湯の御話は、次で終わります。
女たちのトークは、どこへ行き着くのか・・・・御楽しみに☆
少しでも楽しんで戴けましたら、コメント下さると励みになります☆




