亡き人 9
「うーん、ゴリ押しなら得意だけど
よく言うじゃん、水商売のところには霊が集まりやすいって。
今いるのを追い払っても、また次のが来るんじゃない?
専門家にお祓いをしてもらった方が良いかもー。」
ゼロがのんきに答えると
ガッカリしたエリアマネージャーが、首を振った。
「もう、全店舗してもらったんだよ・・・。
だけどこうやって時々、怪奇が起きるんだ。
我々の業界では、仕方のない事だと受け止めてはいるんだが
たまに客足に影響を及ぼすので、良い対策が必要なんだ。」
店長が口を挟む。
「お話し中、申し訳ありませんが、誰と喋っておられるんですか?」
エリアマネージャーは店長に言った。
「きみには見えていないだろうけど
ここに彼の守護霊だと言う人がいるんだよ。」
「はあ・・・。」
店長は困った顔をした。
「この人、絶対にあなたの事をキ○ガイだと思ってるよー。
見えない人って、大抵そういう反応をするらしいし。」
「ゼロさん!」
太郎が慌てて止めると、エリアマネージャーが嘆いた。
「私だって、見えなければそう思うと思うよ。
こういう能力を持っているのは、本当に辛いんだ。」
「でも逆に、その能力があるからこそ
他の人には分からない解決法を示せて、出世できたんじゃないの?」
「ゼロさん!」
再び慌てて止める太郎に、エリアマネージャーが言う。
「いや、良いんだよ。 確かにそうなんだから。」
「ヘンな霊がいると、見えない人でも違和感をおぼえて
寄り付かなくなる事って、ありえるもんね。
人材やお客がそれで減ると、死活問題だよねえ。」
「そうなんだよーーー。」
エリアマネージャーとゼロは腕組みをしつつ、うなずき合った。
「ところで、きみにはここの状態はどう見えるんだね?」
「んーーーっと、コソコソしたヤツらが3体いる。」
「3体? 私には1つしか見えないんだが。」
「何か強いのが1つ居ついていて、他のを呼び寄せているみたいな感じ?
よく聞くパターンよね。
お祓いだけじゃなく
結界みたいなもんを張る必要があるんじゃないかと思う。」
ゼロの言葉に、エリアマネージャーは考え込んだ。
「どうも、その必要があるみたいだな・・・。」
「解決したんなら、私は帰るよー。」
帰ろうとしたゼロを、エリアマネージャーが慌てて呼び止める。
「ちょっと待ってくれ。」
「何?」
「実はあと数店舗、不審なところがあるんだ。
私にはそこまで見えないので、一緒に来て見てくれないか?」
「えええーーー?
霊の身分になってまで働きたくないーーー。」
渋るゼロに、エリアマネージャーが太郎の方に提案した。
「特別手当を出すから、そういう仕事の時には
きみ、助手として一緒に来てくれないか?」
「えっ、特別手当ですか?」
太郎はゼロの顔を仰ぎ見た。
「・・・さすがエリアマネージャー
その肩書きはダテじゃないヤリ手よねえ。」
イヤミを言いつつ、ゼロは渋々と承諾した。
「太郎には迷惑を掛けているし
宿代ぐらい工面しろ、って事かあ・・・。」




