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亡き人  作者: あしゅ
37/40

亡き人 37

「・・・というわけで、獅子の親が誕生してるんだけど・・・。」

居酒屋に仲間たちを集めて、CDを出す山口。

 

「長野くんが来てないけど、どうしたの?」

訊く石川に、山口が口ごもる。

「だって、あいつにとっては一生を左右する事だろ。

 ・・・ウカツに話せないよ。」

 

 

「私たちの一生だって、左右されてるけどね。」

岡山が冷たく言い放つ。


石川が後に続く。

「はっきり言うけど、私はその映像は観たくない。

 私にとってのゼロさんは、あのゼロさんだから。」

 

「それは、ちょっとひどくないか?」

福島が非難めいた口調でたしなめると、石川がいきり立った。

 

「それ、ゼロさんの最期の場面なんじゃないの?

 ゼロさん、私たちに見せたくなかったんじゃないの?

 だから山口くんのお父様は隠したんでしょ。」

 

ザワザワしている居酒屋で、自分たちの周りだけが

時が止まったように静まり返ったような気がした。

 

 

「・・・ゼロさん、成仏しないで、また戻って・・・」

福島の言葉を、岡山がさえぎった。

「ゼロさんは成仏したわ!」

 

「・・・うん、ごめん・・・。」

福島がうつむく。

石川もうつむく。

岡山など、涙目になっている。

 

 

「じゃあ、これは封印、って事だな。」

山口がバッグにCDを入れた。

 

皆しばらく、無言で飲んだり食べたりしていたが

口を開いたのは福島だった。

「いや、全員で観るべきだと思う。」

 

「私は見たくない、ってんでしょ。

 何で無理やり見せられなきゃいけないのよ?

 “逃げちゃいけない” なんて、キレイ事を言わないでよ?」

石川のとげとげしい口調に

福島はオドオドしながらも、言い切った。

 

「それは、ぼくたちが “ゼロさんを見たがった” からだ。」

 

 

他の3人が、痛いところを突かれたような表情になった。

そうだ・・・、あの時、興味本位で長野のアパートに行き

ゼロさんに会えて、ただ純粋に喜んだんだ・・・。

 

「ぼくたちは、自分の好奇心の責任を取らなきゃいけない

 と思うんだ。」

 

 

「待てよ、俺たちはそれで良いかも知れないけどよ

 長野はどうなんだよ?

 ゼロさんから、あいつのとこに来たんじゃないか。」

 

「・・・呼んだんだと思う・・・、長野くんがゼロさんを・・・。」

岡山の言葉に、石川が避けるように身構える。

「やだ、恐い事を言わないでよ。」

 

「ごめん、でも、そうじゃなくって

 長野くんは、それが宿命だったんだと思う。

 そう考えると確かに、ゼロさんが何であれ

 私たちは見届けなくちゃいけないし

 長野くんは、終わらせなくちゃいけないのよね。

 じゃないと、進むどころか留まる事も出来ない・・・。」

 

 

「ちょ、あんた何者よ?」

ビビって体を離す恐がりの石川に、岡山がサラッと答える。

「私は神社の跡継ぎ娘よ。」

 

「「「 へえええええええええ? 」」」

 

何年も付き合ってきて、今更ながらに知った

驚愕の事実であった。

 

「通りで鉄の処女なのねえ。」

思わず余計な言葉を洩らした石川を、岡山が睨む。

「そうよ、あんたとは違うのよ

 このスイーツ・ビッチ!」

 

「え? そういう風に思ってたわけ?」

「あんたこそ!」

 

 

「ちょ、止めろよ。」

慌てて止める山口と福島を、逆に石川と岡山が怒る。

 

「ゼロさんがいなけりゃ、口を利く事もなかったのよ

 そんぐらい別世界の人種なのよ、私たちは。」

「それがケンカできるぐらいになれたのは

 ゼロさんがいたからなんだからね。」

 

「えっと・・・?」

意味がわからない山口に、福島がささやく。

「要するに、“ケンカするほど仲が良い”

 と、言いたいんじゃないだろうか?」

 

「ああ・・・???」

女心は複雑怪奇。

 

 


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