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亡き人  作者: あしゅ
34/40

亡き人 34

太郎は法科大学院へと進んだ。。

山口も一緒になって勉強に励んだお陰で

留年する事もなく、大学を卒業できていた。

 

他の心霊研究会のメンバーも、それぞれの道を進む。

しかし、友情は続いた。

 

太郎は司法試験に合格するまで、山口のマンションに居候し

時々他の仲間が、そこに立ち寄っていた。

 

血まみれちゃんは、年々動かなくなっていった。

頭から流れる血のせいか、目を閉じると

まるで血を流すマリア像のようにも見える。

 

 

忙しいのに、時はゆっくりと流れているような気がするのは

“待っている” という気持ちが

いつも心のどこかにあるからで

ゼロがいない日々を、いくら積み重ねても

その記憶の鮮明さは、少しも褪せなかった。

 

 

太郎が夜遅くに帰宅をすると

山口がソファーに寝転んで、酒を飲んでいた。

 

「きみがひとりで飲酒なんて珍しいね。

 何を飲んでるの?」

 

覗き込むと、料理酒であった。

「それ、どうしたの?」

「うん、実家から持ってきた。」

 

意外な事に、山口は付き合いでしか酒を飲まないのである。

酒の種類なども知らない。

 

「それ、美味いか?」

「よくわかんね。

 おまえも一緒に飲めよ。」

 

「いや、ぼくは今からシャワーを浴びて

 この課題をしないと・・・」

“料理酒” というところにも、内心ちゅうちょする太郎だったが

山口はニッコリ笑って、グラスを差し出した。

「まあ、飲め!」

 

 

太郎は山口の顔を見た。

山口は優しそうに微笑んでいる。

 

受け取ったグラスを一気にあおると

少しムセながら、太郎はうつむいた。

「ごめんね、山口くん。」

「何がだよ?」

山口は、ドクンと動悸がした。

 

 

「ぼく、気付いてたんだ。

 なのに、きみに全部押し付けた。

 知ってしまうと、もう無理な気がしたんだ。

 ごめん・・・、ぼくは卑怯者だ・・・。」

 

山口は太郎を抱き締めた。

「おまえが俺でも、同じ事をしてるよ。

 俺たちはそう教わっただろ、ゼロさんに。」

 

 

 ゼロさん

 

 

ここ数年、誰も口にしなかった名前である。

呼ぶと、いない事を自覚してしまうので

誰もがその名を心の奥底に沈めていた。

 

 

「見つかったの?」

「・・・うん・・・

 皆を集めて、墓参りに行こう。」

 

 

太郎の足から、力が抜けるのがわかった。

 

ぜってー倒さねーから!!!

山口は、長野の体を抱きかかえた。

 

 


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