亡き人 23
「きみが長野くんかね。
拓也から話は聞いているよ。
今までの拓也の友達とは、ちょっと違うタイプだね。」
和室の座椅子に、どっしりと腰を下ろした和服の男が
山口の父親である。
「やだなあ、おやじぃ
俺もいつまでもチャラチャラしてねえよぉ?」
とても軽そうに、山口が言う。
「初めまして、長野と申します。
今日はぶしつけなお願いで、恐縮なのですが
どうかよろしくお願いいたします。」
太郎が丁寧に頭を下げる。
「ふむ・・・。
わしに異存はないよ。
ただ友人間とは言え、お金の問題はきちんと話し合いなさい。」
山口父が、茶碗に手を伸ばしたその時、和室に声が響いた。
「アルゼンチーーーン!」
ゼロが唐突に出現したのである。
「あっ・・・、目まいが・・・。」
ヨロけるゼロ。
「ちゃんとご挨拶できてるか心配で、様子を見に来たのよ。
へえー、とうちゃん、和服ダンディー!
海原雄山風味じゃーん
チャラ男の親にしては意外ー。」
山口父を四方からジロジロ眺め回すゼロ。
「あ、太郎、手土産は何を持ってきた?」
無言で固まる太郎。
「返事できないよね、こういう状況じゃ。
・・・って、あれ?」
ゼロが左右にフラフラする。
「何か、雄山とバッチシ目が合ってるんだけど・・・。」
山口が言った。
「俺のオヤジだぜー?
霊感あるに決まってるじゃーん。」
「えっ・・・」
ゼロも固まる。
「あっ、そ、その、ご挨拶が遅れて失礼いたしました。
わたくし、息子さんたちと親しくさせていただいてる霊で
ゼロと申します。
多分、霊障とかないので、ご安心いただければ幸いだす。」
動揺のあまり、カミながらも土下座するゼロ。
太郎は真っ青だが、山口は能天気にゲラゲラ笑い転げている。
「ごめんーーー、太郎ーーー
私、最近、太郎の邪魔ばっかりしてる気がするーーー!」
ゼロは部屋の隅っこに向かい、シクシク泣き始めた。
「だから、そういう仕草も
霊だとほんと恐いんで、やめてくださいって!」
太郎がゼロに怒る。
山口パパは、ただ呆然と目を丸くしているだけだった。




